《リベルテ(東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース)から》
★ 教員の多忙化と教員不足 -給特法もからめて-
~予防訴訟をひきつぐ会総会・学習討論会報告
予防訴訟をひきつぐ会 片山むぎほ
6月17日、予防訴訟をひきつぐ会では、定期総会と学習討論会を開催しました。
教員が、過労死するほどの長時間勤務が常態化し、学校がブラック職場化していると指摘されるようになってからすでに久しい。その当然の結果として現れている教員不足。この問題を教員になろうする学生たちはどう捉えているのでしょうか。
学生時代に、埼玉超勤裁判(田中まさお訴訟)の学生支援組織を立ち上げた石原悠太さんに、学生支援組織の発足の経緯と背景現在の若者らしい活動内容を、以下のように報告していただきました。
1.教員の労働環境に危機意識を持った
①大学の授業の中では、現役教員が経験談として以下のように語った。
「私は、朝7時から夜21時までは学校で仕事をしている。ブラック職場だとは思っていない。なぜなら『子どものため』だから。ブラックだと言っているのは外の人たち。どうか中に入って確かめてみてください」(唖然としたー筆者感想)
②教員になった高校時代の友人は月120時間を超える残業を行っているが、「子どものため」「自分の要領が悪いから」と言う。大学時代の友人は「度重なる長時間労働と、ほんとうに子どものためにしたいことができず苦しい」と言って心身を壊し倒れた。
③教育学部の学生や教職課程を取っている学生は、教職に魅力を感じているが、それを上回る「マイナス」があるから教職を敬遠する。~2019年10月頃教職課程を履修している学生にアンケート調査【328人回答】
2.田中まさお訴訟における支援活動(発足の経緯)
①2020年10月発足、4名の学生で活動開始。
②第2回弁論から傍聴し、『すごい裁判だ』と思ったが、世の中の関心が低すぎると思い、自分にできることはないかと考えた。
③田中まさおさんが「おかしい」と訴える教員の働き方は他人事ではない。自分や仲間に強いられる労働環境。
3.田中まさお訴訟の主な支援内容
①イベントの企画運営(報告会の企画運営配信、原告の思い・主張の広報等)
②渉外活動(一部取材対応、ZOOM会見イベント企画運営等)
③発信活動(パンフレット作成)
4.CALL4の支援を得る
①CALL4(コールフォー)とは、日本で初めての【社会課題の解決を目指す訴訟(公共訴訟)】の支援に特化したウェブプラットフォーム
②公共訴訟とは
公共訴訟は、身の回りに起きている「おかしなこと」をなくすために行われる裁判。おかしいと思う社会課題に対して私たちができるアクションは、選挙を通じた意思表明、署名やSNS等を通じて働きかけるなど、さまざま。でも、国や自治体が必ずしも動くとは限らない面もある。公共訴訟の場合は、たとえ少数者の声だとしても、それが憲法や法律に反していたら、司法の力をもって、国や自治体に変えることを命じられるのが大きな特徴。(CALL4のHPより)
③CALL4による支援内容
・クラウドファンデイング(300万円目標に実施中)
・共催イベントを実施(700名のサポーターと533のコメントが寄せられた)
※石原悠太さんの報告の後に、高橋哲さん(教育法学・大阪大学准教授)から、給特法にかかわってコメントしていただきました。
『定額働かせ放題』という命名が功を奏して、給特法の問題が大きく取り上げられるようになったが、現状では給特法を廃止しても状況は良くならない。政府文科省は、教員の超過勤務を自主的な行為として、労働と認めていないので、表面的な労働時間を減らす方向が強まるかたちで解決しようとすることが予想される。
教員の自主的な教育活動・研修等を教育労働(勤務)として認めさせることが重要だ。
第2次超勤裁判が立ち上がっている。今後もぜひご支援をいただきたい
※(上記関連事項の補足)7月5日、富山地裁は、中学教諭の過労死(くも膜下出血発症)に賠償命令(約8300万円)の判決。部活指導などは、自由裁量の範囲とは認めず、過重業務を認定。(発症1か月前の時間外勤務は約109時間、2カ月前130時間、3カ月前95時間、この間の休日は1日のみ)
『リベルテ 71号』(2023年7月27日)
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