パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

労働契約法20条は正規・非正規の格差是正の武器

2017年11月07日 | 格差社会
  =郵政20条裁判=
 ◆ 画期的判決さらに前進へ

   「長期雇用予定」を理由に一部格差容認 (『労働情報』)
梅田和尊 弁護士(旬報法律事務所〉

 郵政20条東日本裁判は2014年5月に東京地方裁判所に提訴して始まりました。
 裁判に立ち上がった原告3名は、郵便局で郵便配達や郵便物の仕分け作業などの仕事をしている時給制の有期契約社員(非正規労働者)です。
 彼らは正社員と混じりながら同じ仕事をしているのですが、正社員に支払われている様々な手当などが支払われなかったり、金額に違いがあったりします。その待遇の格差は不合理であるとして、労働契約法20条を武器に格差の解消を求めているのが、この裁判です。
 裁判は2017年9月14日に第1審の判決が出されました。判決の内容と課題を報告します。
 ◆ 労働契約法20条とは
 そもそも労働契約法20条とは、正社員と有期契約の労働者との間に期間の定めの有無による労働条件の違いがあるときに、その違いは、仕事の内容や責任、仕事内容や配置の変更の範囲、その他の事情に照らして不合理であってはならないという法律です。
 格差が拡大する日本社会において、これ以上の格差拡大を放置することはできないとして、民主党政権時の2012年に格差是正の武器として新しく創られた法律です。
 今、この日本の中で既に複数の労働契約法20条を使った裁判が起こされ、判決もいくつか出されています。
 この裁判でも原告らは、この労働契約法20条を使って正社員と非正規労働者の間の待遇の相違が不合理であると主張して、正社員と同様の手当の支払いや損害賠償を求めました。
 ◆ 判決の内容
 9月に出された判決は、原告らが求めた請求の中で、年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇の4点について、待遇の相違が不合理であると明示しました。
 年末年始勤務手当は、正社員が年末年始の12月29日から1月3日に実際に働くと1日ごとに定額の手当が支給されるというものです。
 非正規労働者には年末年始勤務手当は1銭も支給されません。
 年末年始勤務手当が正社員に支給されている理由は、国民の大多数が休日である年末年始に年賀状の仕事などがある郵便局の最繁忙期の労働に就いたことへの対価として支払われているというものです。
 でも、国民の大多数が休日の時に最繁忙期の仕事に就いているのは原告ら非正規労働者も全く同じです。原告の中には10年以上勤務している方もいて、もう何年も年末年始に家族と一緒に過ごしたり休めなかったりしているのは正社員と全く同じなのです。
 判決は、この年末年始勤務手当の性格から正社員に対してだけ支払うのは不合理だとしました。
 住居手当は一定の家賃負担などがある正社員に支給される手当です。これも非正規労働者には1銭も支給されません。
 判決は、正社員の中でも転居を伴う配転が予定されていない新一般職に住居手当を支給しながら、非正規労働者に支給しないことは不合理であると認めました。
 次に夏期冬期休暇病気休暇ですが、いわゆる夏休みと冬休み、そして、病気になったときの休暇を有給で取ることができる制度です。
 非正規労働者には夏期冬期休暇はなく、病気休暇は無給となっています。
 判決は、夏期冬期休暇はお盆休みや年始に帰省するなど国民的な習慣・意識などを背景に制度化されたもの、病気休暇は労働者の健康保持のための制度で、非正規労働者にこれらの制度を設けないことは合理的理由がないと認めました。
 判決はこれらの不合理な待遇の相違によって原告らが被った損害として合計約92万円の支払いを日本郵便株式会社に命じました。
 ◆ 判決の意義と課題
 日本郵便株式会社は約20万人の正社員に対して、ほぼ同数の約19万人の期間雇用社員が働く大企業です。
 その中で4つの待遇の相違についてですが判決が不合理であると認めたことは画期的であり、日本の雇用社会に与える影響も非常に大きいものと言えます。
 他方で、判決は原告が求めてきた夏期年末手当(賞与)や早出勤務等手当など、その他の手当については相違の不合理性を認めず原告らの請求を棄却しました
 また、相違が不合理であると認めた年末年始勤務手当と住居手当についても、正社員は長期雇用が予定されているという理由で、正社員と全く同額である必要はないと述べ、正社員と比べて年末年始勤務手当は8割、住居手当は6割の限度で損害と認めました。
 しかしながら、非正規労働者は日本の労働者の約4割を占め、今や基幹的労働力となっています。
 非正規の働き方を長期に続けている方も多い現状の中で、長期雇用の予定などという理由で格差を認めていいのでしょうか。
 長期雇用の予定という使用者の主観的な理由によって格差が容認されてしまっては、労働契約法20条の意味がほとんど無くなってしまいかねません。
 裁判はこれから東京高等裁判所に舞台が移ります。
 労働契約法20条が創られた意味を訴え、第1審の判決をさらに前進させ、職場から不合理な格差を無くすべく尽力したいと思います。是非、ご支援を宜しくお願いします。
『労働情報 962』(2017/10)

コメント    この記事についてブログを書く
« 「教員が君が代を歌わない権... | トップ | 大阪:子どもの貧困対策の実... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

格差社会」カテゴリの最新記事