★ 都教委のすべきことは、まずは自己反省から (レイバーネット日本)
公開議題は、議案が「第6期都教委いじめ問題対策委員会への諮問について」、報告が「来年度教育庁所管事業予算見積について」。
非公開議題には今回もまた、議案、報告のどちらにも「教員の懲戒処分について」がありました。
★ 「第6期都教委いじめ問題対策委員会への諮問について」
「昨年度のいじめ件数が過去最高、しかも『重大事態』のいじめも過去最高」との報告が文科省から出されたことは報道でご存じと思います。全国総数でいじめの認知件数は732,568件(対前年で50,620件増)、「重大事態」の発生件数は1,306件(対前年度で387件増)です。「重大事態」とは、子どもの「生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」及び子どもが「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」です。
「東京都いじめ防止対策推進条例」(2014年制定)により都教委は2年ごとに都教委いじめ問題対策委員会に対して、「都内公立学校におけるいじめ防止に係る取組の検証、評価及びいじめの防止等の対策を一層推進するための方策について」諮問し、同委員会から答申を得ることになっています。
今年7月に出された第5期答申は、
「2年間の取組の成果として、子供たち自身がいじめについて考え行動できるようにするための取組、教職員が軽微ないじめも積極的に認知できるような取組、専門家の力を活用したいじめ防止対策の推進の実績が評価されている」
と言います。ならば、東京のいじめ件数は減ったはず、ですが、そうではありません。東京都公立学校における2023年度のいじめ認知件数は69,752件(対前年で3,438件増加)、「重大事態」と判断された件数は107件(対前年40件台)で過去最多です。?
だからでしょうか、答申は、取組の改善を図るために
「重大事態やその疑いがあったときの対応、教育委員会との連携等を見直すこと、教員の保護者対応のスキルの向上、各校における事例研究など、研修内容について検討す」
べきと言い、都教委が取り組むべき事項として
「発達支持的生徒指導の趣旨にのっとったいじめ防止等の推進」
「教職員の意識啓発及び対応力の向上」
「子供自身がいじめ問題の理解を深め、自ら考えて行動できるようにするための取組の充実」
等を挙げたとのことです。
「発達支持的生徒指導」とは、「児童生徒が自発的・主体的に成長・発達できるような生徒指導の在り方」ということで、挨拶や声かけ、励まし、対話を大事にする指導とのこと。
文科省・教育委員会が校長を通じて教員たちに多量な、意味のない書類を出させ、子どもたちとの時間を奪っておきながら、こんな造語遊びをするのかと、腹立たしいです。
10年間こうした取組をしてきてもいじめが減らないのはなぜか、「重大ないじめ」が発生した際に身近にいるはずの教員(学校側)が「気づかなかった」と言うのはなぜかについて、教育委員も事務方もどう考えているのか、考えていないのではないか、と私はいつも思います。
教員が書類作成や「研修」に時間をとられず、子どもたちと一緒にいる時間を20数年前までのように確保できれば、子どもたちの心を把握することができるでしょう。
また、校長による教員評価を廃止すれば、いじめに気づいた際に同僚や校長に相談することができるでしょう。
諮問・答申ではなく、これこそが、都教委のすべきことです。都教委のすべきことは、施策を出すことではなく、まずは自己反省です。
★ 「来年度教育庁所管事業予算見積について」
25年度は、「新しいステージにおける教育の展開」「多様化する児童・生徒への対応のブラッシュアップ」「学校現場のBPXによる『働き方改革』の抜本的な推進」により新規・拡充事業を実施するとのことです。
「新しいステージにおける教育の展開」では、「グローバル人材の育成」「デジタルを活用した学び」「都立高校の魅力向上・発信」を掲げ、都立高校生等の海外派遣や海外高校生の受け入れ拡大、英語教育において指導的立場の教員の海外派遣研修〈新設〉、AIリテラシー育成教材の作成〈新設〉、国内外の研究機関やスタートアップ企業との連携により探究学習プログラムを実施するとともに、探究活動の成果を発表しあうフォーラムを開催〈新設〉等々を挙げています。
デジタル教育については、スウエーデンではこの弊害が認識され、「紙と鉛筆のアナログ教育」に変わり、早くからデジタル教育をしてきたイギリスでは2014年からこれをやめました。
こうした点の論議が都教委でなされたのか、はなはだ疑問です。公教育への市場開放・金儲けが優先されているとしか私には思えません。
「多様化する児童・生徒への対応のブラッシュアップ」では、
「インクルーシブな教育環境の整備」
「特別支援教育の環境整備」
「不登校への支援充実」
「外国につながる生徒の受入・育成」
を掲げ、近接する特別支援学校と都立高校にて協働活動を実施する取組〈新設〉、インクルーシブ教育支援員の配置支援に加え、特別な支援が必要な児童・生徒が小・中学校内の特別支援教室に迅速に入室できるよう、区市町村が実施する判定委員会への心理士等の派遣や事務処理等の支援を実施〈新設〉、中学校におけるチャレンジクラス(不登校対応校内分教室)の設置拡大と教員配置等を挙げます。
私は特別支援学校に在職していた15年前に道路1本を隔てた中学校の生徒との交流を経験しました。50分の交流経験はその時間だけのもので、交流や理解が進んだとは全く思えませんでした。都教委がいう「協働活動」は、私が体験したものとは違う、と言えるのでしょうか。
文科省が言う、一緒に学ばない「インクルーシブ教育」では、何かを試みても差別が解消することはありません。このことについても教育委員は論議し考えてほしいものです。
「特別支援教室に迅速に入室できるよう、区市町村が実施する判定委員会への心理士等の派遣や事務処理等の支援」は、別離教育を推進するという宣言のように聞こえます。
「不登校への支援」でまずすべきことは、子どもたちが学校を好きになれない原因が何かを、現場の声を聴きながら探るべきです。
教員が雑務に追われ、子どもたちとの交流に時間がとれないことを解決すべきです。子どもとの語らいに時間をとることができれば、教員は子どもの変化に気づきますし、子どもから悩みを打ち明けられもあります。
いじめ問題と同様、都教委が力を注いでも実際に成果が出ないのはなぜか、解決のための方策が間違っているから成果が出ない、と考えるべきです。
「学校現場のBPXによる『働き方改革』の抜本的な推進」では、「教員の働き方改革」「校務のデジタル化」「外部人材の活用」を掲げ、
学校・教員以外でも担うことが可能な業務について外部委託を推進〈新設〉、
教員が負担なく安全に生徒の個人情報を管理できるよう、教務手帳を電子化〈新設〉、
多忙な副校長の支援員や中学校における部活動指導員の配置拡大
等を挙げています。
「働き方改革」では、これらの方策を出すことよりも、精神面での病気休職や採用1年以内に退職に追い込まれる教員が続出しているのはなぜか、都教委にその責任はないのかを考え検討することが先です。
精神面での病気休暇や若年退職が急増したのは、21世紀、都教委の管理支配がひどくなってからのことですから。
『レイバーネット日本』(2024-11-15)
http://www.labornetjp.org/news/2024/1114nezu
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