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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

自ら耕作する者が農地を保有する原則を破壊する

2014年08月14日 | 格差社会
  《時評自評》
 ◆ 戦後農政を覆す「農業・農政改革」
黒部清明(全農協労連中央執行委員)

 安倍内閣が先に決定した「骨太の方針」「新成長戦略」の中で打ち出した「農業・農政改革」は、戦後の農政を根本から覆すものです。
 そこでは、規制改革会議が答申した農業委員会、農業生産法人、農協の「3点の見直しをセットで断行」するという立場から、農業と農業関連団体を潰し、企業が主体となった農業の成長産業化を図り、農業生産法人も農外企業が支配し、農外企業が農地の所有権取得までできるようにすることが狙われています。
 そもそも、戦後の農政は、労働改革などと同様、日本社会の民主化を出発点としています。
 戦前の地主・小作制の下で農民の困窮、農村の疲弊、食糧難を招き、侵略戦争へと暴走した反省にたっています。そこから、家族農業など自ら耕作する者が農地を保有する原則、農家の協同組織としての農協、農民の意見を行政に反映させる農業委員会などが生まれました。
 安倍政権が「岩盤規制」として潰そうとしているのは、そうした家族農業経営を支え、維持する仕組みそのものなのです。
 農協は、家族的な農業や地域のくらしを支える上で、地域になくてはならないものです。しかし「農業改革」という名のもとに、企業の農業参入の邪魔になるからと、農協の実質的な解体を狙っています。
 全国農業協同組合中央会(全中)を「自律的な新組織」へ移行させ(農協法による設立根拠をなくす)、全国農業協同組合連合会(全農)などの連合会を株式会社化し、独占禁止法適用除外の対象から外して、共同販売や共同購入など農業協同組合としての事業の全国展開を制限しようとしています。
 単位農業協同組合(単協)についても、信用・共済事業を分離するなど、経営基盤を壊そうとしています。
 「農地の番人」ともいわれる農業委員会については、農業委員の選挙制から市町村長の選任制にし、人数も半分にして地域農業振興に関する建議も業務から外すとしています。
 いま世界的に食糧危機が懸念される中、国連は今年を「国際家族農業年」として、家族農業経営や小規模経営を「持続可能な食料生産にとって重要な基盤」と評価しています。
 日本の国土、自然環境からも家族農業を政策的にきちんと位置づけ、それを軸とした農業の発展と地域づくりが求められています。
 しかし、安倍政権がとっている政策は「骨太の方針」にある他の分野と同様、企業の利益を第一とする偏った経済政策に、食料の安定供給や安全性の確保、そのための国内農業の維持・発展、つまり市民・労働者・農民の生活を従属させ、破壊するもの以外の何物でもありません。
 農業への企業参入や大規模化で、農協の事実上の解体、事業縮小が進めば、労働者の雇用が脅かされます。株式会社化で事業が継続されても、協同組合だからできた不採算事業の維持は困難になり、これまで以上にリストラの圧力が高まります。
 一方、単協、連合会を問わず、この間の経営者の経営姿勢にも大きな問題があります。協同組合らしさを回復し、本来の役割を発揮させていくことが求められています。
 来年の通常国会に「農業改革」に基づく関連法案が提出される予定です。農協労働組合運動を職場・地域から社会運動として再構築していく中で、安倍「農業・農政改革」に立ち向かっていくしかありません。
労働を 生活を 社会を変える
『労働情報891号』(2014.7.15)

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