=たんぽぽ舎です。【TMM:No3975】「メディア改革」連載第36回=
◆ 河井前法相事件の主犯は安倍首相と二階幹事長
報道は関係者の実名出し、買収目的交付罪の追及を
◎ 河井克行前法相(衆院議員)・河井案里参院議員夫妻(5月18日公選法違反で逮捕、東京拘置所で勾留中)に6月30日、それぞれ319万円の夏のボーナスが支給された。夫妻にも無罪の推定がはたらくので、逮捕で辞任とまでは言わないが、国会議員なのだから、かけられた嫌疑について有権者に説明する義務がある。
◎ 河井事件の主犯は安倍晋三首相と自民党本部(安倍総裁、二階俊博幹事長)だ。
首相は案里氏が出馬した2019年7月の参院選広島選挙区(定数2)に、東京と山口県下関市の事務所から配川博之筆頭秘書(安倍後援会・会計責任者)、畑村剛、鮎川建司、柿本康平各秘書と事務員多数を出張させ、自民党は河合夫妻に1億5000万円を投入した。安倍、二階両氏にも説明責任がある。
◎ 安倍首相が河井夫妻に異常な執念で肩入れした理由は、1年前の「週刊文春」2019年6月27日号が<「首相の責任」「もう過去の人」安倍首相はかつてこき下ろされた“あの男”を許さない>という題名で明らかにされていた。
https://bunshun.jp/articles/-/12426
記事の書き出しは<参院選を目前に、安倍晋三首相(64)が、仇敵を抹殺するべく、広島での“仁義なき戦い”に力を入れている。仇敵とは溝手顕正前参院議員会長(76)のこと>とあった。2007年夏の参院選、安倍首相は小沢民主党に惨敗したが、当時防災相だった溝手氏は会見で「首相本人の責任はある。(続投を)本人が言うのは勝手だが、決まっていない」と批判。12年2月にも、野田佳彦政権に「話し合い解散」を主張した安倍氏を「もう過去の人」とこき下ろした。
安倍氏は自分を再び首相に推してくれた克行氏、萩生田光一文科相、菅義偉官房長官、甘利明自民党税制調査会長らを重用する一方、溝手氏のように安倍氏を批判した政治家への恨みを片時も忘れないできた。
安倍氏の思いを忖度した安倍氏の取り巻き連中は、「自民の2議席独占」という実現不可能な目標を掲げて、克行氏の配偶者で当時広島県議だった案里氏を擁立した。実際は仇敵、溝手氏を落選させるためだった。安倍氏個人の私怨をはらすためで、国政選挙の私物化だった。
◎ 安倍氏が仕掛けた広島での“仁義なき戦い”は、東京地検特捜部の応援を受けた広島地検の徹底捜査で司法の場に移り、第二次安倍内閣は最大のピンチを迎えている。河合夫妻は94人に計約2570万円を渡した疑いでの捜査が進んでいる。
6月26日の中国新聞によると、94人のうち約40人が地元政治家で、地元メディアの取材に授受を認めたのは31人。31人のうち地方議員は28人で、実名で取材に答えたのは18人いる。
克行氏は地方議員に現金を渡す際、安倍首相、菅義偉官房長官、二階俊博自民党幹事長が安里氏に期待していると説明している。
北広島町の宮本裕之町議会議長は、案里氏と首相らのツーショット写真が載った新聞記事などのコピーを見せている。
克行氏が、「安倍さんから」と安倍首相の名前を出し、現金30万円を受領したと告白した府中町の繁政秀子町議(案里氏の後援会会長)は6月29日、議員を辞職した。
これまでに首長3人が辞職しているが、議員で辞職したのは繁政氏1人だけで、議長などの議会での役職の退任に留まっている。
夫妻から現金を受け取った議員らにも刑事責任が問われるが、買収資金を用意した者も公選法違反(買収目的交付罪)で罰せられる。
買収をさせる目的で金銭などを交付した場合は、交付した側も罰せられると定めた規定だ。
◎ 自民党から出た1億5000万円から買収資金が出たのは間違いないだろう。自民党からの軍資金のうち1億2000万円は政党交付金(血税)から出ている。
広島地検は県議会、議員事務所などを捜索した。東京地検は、選挙資金を給付した自民党と安倍事務所を捜索すべきだ。
安倍首相は19年7月14日、広島市内で案里候補の名前を連呼して応援演説を行った。菅長官も3回広島入りして、案里候補とパンケーキを食べている映像がテレビに流れている。
首相の秘書4人が19年6月末に広島へ出張し、案里氏の秘書と二人一組になり、4日間かけて企業約50社を回っている。「河井さんの秘書だけでなく、総理の秘書が来たから会った」と語る会社社長もいる。
1河井夫妻が1億5000万円を使い切ったとは思えない。安倍事務所の関係者がピンハネした可能性もある。首相の秘書、スタッフが選挙の参謀を務めており、金の流れのすべてを知っているはずだ。
◎ テレビ各局は河井事件を報じてはいるが、安倍首相と二階自民党幹事長の嫌疑についてほとんど触れない。
安倍首相の会食仲間の田鎧墨沙�はテレビで、「実は安倍さんは克行氏のことを好きではないし、評価もしていない。広島で自民が2議席を取りたいという目的で案里氏を擁立した。選挙戦では序盤、溝手氏が圧倒的に優勢だったので、安里氏に力を入れただけだ」などと解説していた。大ウソだ。
また、6月20日に首相と会食したタレントの橋下徹氏は翌日朝のフジテレビ「日曜報道ザ・プライム」で、「検察は現金を受け取った議員を起訴しないのではないか。河井夫妻に不利な証言をしている議員は全部、反河井陣営だ」「政治家同士の金のやりとりは合法だ」などと力説していた。
◎ メディアは、河合夫妻から現金を渡された地方議員約40人の中から「実名」を明らかにする“告白ドミノ”が起きているなどと報じているが、メディアは現金をもらったことが判明した地方政治家の実名を報じるべきだ。本人が実名をOKするまで実名報道しないというのは誤っている。
実名で告白した議員は、夫妻の裁判で、現金を受け取った当事者の氏名が出ると考えて、いまのうちに会見をして謝罪しておこうということだろう。
京アニ事件など事件事故の報道では、犠牲者の実名を遺族の意向を無視してまで報道するのに、公人中に公人である議員の氏名を仮名にするのは二重基準だ。
◎ 安倍首相は河井氏の逮捕があった直後の6月18日夕、国会閉幕の記者会見を開いた。首相は夫妻の氏名も挙げずに、遺憾を表明し、任命責任も認めた。
しかし、どう責任をとるかは言わない。党からの1億5000万円供与について記者に聞かれ、「二階幹事長が1億5000万円については公認会計士のチェックを受けていると説明したと聞いている」とだけ答えた。
二階氏は会見で、「党の宣伝のための広報誌の印刷と配付に使ったと聞いている」と説明。その後に「党からの金の使途は分からない」と言い方を変えている。
報道機関の記者には、メディアスクラムをがっちり組んで、安倍首相の秘書らの実名を伝え、徹底的な肉薄取材を期待したい。
◆ 河井前法相事件の主犯は安倍首相と二階幹事長
報道は関係者の実名出し、買収目的交付罪の追及を
浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)
◎ 河井克行前法相(衆院議員)・河井案里参院議員夫妻(5月18日公選法違反で逮捕、東京拘置所で勾留中)に6月30日、それぞれ319万円の夏のボーナスが支給された。夫妻にも無罪の推定がはたらくので、逮捕で辞任とまでは言わないが、国会議員なのだから、かけられた嫌疑について有権者に説明する義務がある。
◎ 河井事件の主犯は安倍晋三首相と自民党本部(安倍総裁、二階俊博幹事長)だ。
首相は案里氏が出馬した2019年7月の参院選広島選挙区(定数2)に、東京と山口県下関市の事務所から配川博之筆頭秘書(安倍後援会・会計責任者)、畑村剛、鮎川建司、柿本康平各秘書と事務員多数を出張させ、自民党は河合夫妻に1億5000万円を投入した。安倍、二階両氏にも説明責任がある。
◎ 安倍首相が河井夫妻に異常な執念で肩入れした理由は、1年前の「週刊文春」2019年6月27日号が<「首相の責任」「もう過去の人」安倍首相はかつてこき下ろされた“あの男”を許さない>という題名で明らかにされていた。
https://bunshun.jp/articles/-/12426
記事の書き出しは<参院選を目前に、安倍晋三首相(64)が、仇敵を抹殺するべく、広島での“仁義なき戦い”に力を入れている。仇敵とは溝手顕正前参院議員会長(76)のこと>とあった。2007年夏の参院選、安倍首相は小沢民主党に惨敗したが、当時防災相だった溝手氏は会見で「首相本人の責任はある。(続投を)本人が言うのは勝手だが、決まっていない」と批判。12年2月にも、野田佳彦政権に「話し合い解散」を主張した安倍氏を「もう過去の人」とこき下ろした。
安倍氏は自分を再び首相に推してくれた克行氏、萩生田光一文科相、菅義偉官房長官、甘利明自民党税制調査会長らを重用する一方、溝手氏のように安倍氏を批判した政治家への恨みを片時も忘れないできた。
安倍氏の思いを忖度した安倍氏の取り巻き連中は、「自民の2議席独占」という実現不可能な目標を掲げて、克行氏の配偶者で当時広島県議だった案里氏を擁立した。実際は仇敵、溝手氏を落選させるためだった。安倍氏個人の私怨をはらすためで、国政選挙の私物化だった。
◎ 安倍氏が仕掛けた広島での“仁義なき戦い”は、東京地検特捜部の応援を受けた広島地検の徹底捜査で司法の場に移り、第二次安倍内閣は最大のピンチを迎えている。河合夫妻は94人に計約2570万円を渡した疑いでの捜査が進んでいる。
6月26日の中国新聞によると、94人のうち約40人が地元政治家で、地元メディアの取材に授受を認めたのは31人。31人のうち地方議員は28人で、実名で取材に答えたのは18人いる。
克行氏は地方議員に現金を渡す際、安倍首相、菅義偉官房長官、二階俊博自民党幹事長が安里氏に期待していると説明している。
北広島町の宮本裕之町議会議長は、案里氏と首相らのツーショット写真が載った新聞記事などのコピーを見せている。
克行氏が、「安倍さんから」と安倍首相の名前を出し、現金30万円を受領したと告白した府中町の繁政秀子町議(案里氏の後援会会長)は6月29日、議員を辞職した。
これまでに首長3人が辞職しているが、議員で辞職したのは繁政氏1人だけで、議長などの議会での役職の退任に留まっている。
夫妻から現金を受け取った議員らにも刑事責任が問われるが、買収資金を用意した者も公選法違反(買収目的交付罪)で罰せられる。
買収をさせる目的で金銭などを交付した場合は、交付した側も罰せられると定めた規定だ。
◎ 自民党から出た1億5000万円から買収資金が出たのは間違いないだろう。自民党からの軍資金のうち1億2000万円は政党交付金(血税)から出ている。
広島地検は県議会、議員事務所などを捜索した。東京地検は、選挙資金を給付した自民党と安倍事務所を捜索すべきだ。
安倍首相は19年7月14日、広島市内で案里候補の名前を連呼して応援演説を行った。菅長官も3回広島入りして、案里候補とパンケーキを食べている映像がテレビに流れている。
首相の秘書4人が19年6月末に広島へ出張し、案里氏の秘書と二人一組になり、4日間かけて企業約50社を回っている。「河井さんの秘書だけでなく、総理の秘書が来たから会った」と語る会社社長もいる。
1河井夫妻が1億5000万円を使い切ったとは思えない。安倍事務所の関係者がピンハネした可能性もある。首相の秘書、スタッフが選挙の参謀を務めており、金の流れのすべてを知っているはずだ。
◎ テレビ各局は河井事件を報じてはいるが、安倍首相と二階自民党幹事長の嫌疑についてほとんど触れない。
安倍首相の会食仲間の田鎧墨沙�はテレビで、「実は安倍さんは克行氏のことを好きではないし、評価もしていない。広島で自民が2議席を取りたいという目的で案里氏を擁立した。選挙戦では序盤、溝手氏が圧倒的に優勢だったので、安里氏に力を入れただけだ」などと解説していた。大ウソだ。
また、6月20日に首相と会食したタレントの橋下徹氏は翌日朝のフジテレビ「日曜報道ザ・プライム」で、「検察は現金を受け取った議員を起訴しないのではないか。河井夫妻に不利な証言をしている議員は全部、反河井陣営だ」「政治家同士の金のやりとりは合法だ」などと力説していた。
◎ メディアは、河合夫妻から現金を渡された地方議員約40人の中から「実名」を明らかにする“告白ドミノ”が起きているなどと報じているが、メディアは現金をもらったことが判明した地方政治家の実名を報じるべきだ。本人が実名をOKするまで実名報道しないというのは誤っている。
実名で告白した議員は、夫妻の裁判で、現金を受け取った当事者の氏名が出ると考えて、いまのうちに会見をして謝罪しておこうということだろう。
京アニ事件など事件事故の報道では、犠牲者の実名を遺族の意向を無視してまで報道するのに、公人中に公人である議員の氏名を仮名にするのは二重基準だ。
◎ 安倍首相は河井氏の逮捕があった直後の6月18日夕、国会閉幕の記者会見を開いた。首相は夫妻の氏名も挙げずに、遺憾を表明し、任命責任も認めた。
しかし、どう責任をとるかは言わない。党からの1億5000万円供与について記者に聞かれ、「二階幹事長が1億5000万円については公認会計士のチェックを受けていると説明したと聞いている」とだけ答えた。
二階氏は会見で、「党の宣伝のための広報誌の印刷と配付に使ったと聞いている」と説明。その後に「党からの金の使途は分からない」と言い方を変えている。
報道機関の記者には、メディアスクラムをがっちり組んで、安倍首相の秘書らの実名を伝え、徹底的な肉薄取材を期待したい。
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