パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

弱者・貧困者を憎悪する誤った社会観

2017年04月03日 | 格差社会
 ◆ なぜ弱者を憎むのか (東京新聞・本音のコラム)
竹田茂夫(法政大教授)

 「誰一人飢えたり凍えたりする者がいてはならない。そういう者がいれば強制収容所行きだ」。
 ナチス時代のジョークだが、弱者排除の論理や心理を言い当てる。
 一八三四年、英国議会は生存権を保障した救貧法が貧民の勤労意欲を削ぎ、社会を荒廃させたとして制度を廃止した。賃金のために労働に携わる階級が生まれたが、史上最も残酷な社会改革といわれる。
 根拠となった議会報告書は貧困や失業を自己責任とする古典派経済学の色眼鏡に基づいていた。弱者とは怠け者というわけだ。
 一九八○年代以降、英米の新自由主義政権はこの見方を復活させた。
 背景には家計の帳尻合わせに四苦八苦する勤勉な人々がいる。

 米国では福祉給付で自堕落な生活を送る「福祉女王」のイメージから黒人貧困層への憎悪が広がり、「福祉から就労へ」政策が大きく転換した。
 英国では福祉の準市場(受益と負担の交換)がうたわれたが、日本は悪名高い旧「障害者自立支援法」でこの理念を直輸入した。
 優生思想に行き着かなくとも、弱者への憎悪は生死にかかわる。

 トランプ政権の国民医療保険案は成立していれば多数の無保険者を生み、毎年四千人以上の命を奪うという。
 日本の生活保護たたきと同じで、心の闇が憎悪を生むというより誤った社会観こそ問題なのだ。
『東京新聞』(2017年3月30日【本音のコラム】)

コメント    この記事についてブログを書く
« 2017年3月東京都学校ユ... | トップ | ドキュメンタリー監督早川由... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

格差社会」カテゴリの最新記事