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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「子どもの権利条約」採択30年、子どもたちの意見表明シンポジウム

2019年12月15日 | こども危機
 ◆ 国連「子どもの権利条約」採択30年で大集会
   中学・高校生が訴えたこと
(「紙の爆弾」)
取材・文◎永野厚男


シンポジウムで発言した中高生たち:撮影・永野厚男

 二〇一九年は子どもの権利条約を、国連総会が全会一致で採択して三十年、日本が批准・発効して二十五年。「子どもの権利条約フォーラム2019実行委員会」と毎日新聞社・毎日メディアカフェが十一月十六日、都内の文京学院大学で大規模なシンポジウムを開催した。主権者教育を中心に報告する。
 ◆ 意見を言おう、行動を起こそう
 最初のトークセッションでタレントの春名風花(はるなふうか)さんは、「下着は白」等のブラック校則やいじめ問題に対し、「おかしいからこう変えることを提案しますと、署名を集めるなど、生徒たちが行動を起こしているのはいいんじゃないかと思う。意見を言ってみてほしい」と述べた。
 またSNSについて、「とても多くの情報を得られる。意見が世界中に、子ども一人の意見でも広まる」というメリットの反面、「発信場所から(自分の使う)駅を調べたり、瞳に反射で写った景色の場所を特定したりする人がいる」ので、「個人情報を出し過ぎないことや、一度出ると消えないデジタルタトゥーに対し気を付け、犯罪に巻き込まれないようにする授業実施など、対策が必要だ」と語った。
 続くリレートークでは、中学・高校生八人が登壇した。三人に絞り、質疑の一部とともに紹介する。
 ◆ 中学1年生の坂ロ(さかぐち)くり果(か)さん
 小6の時、社会の授業で学んだ子どもの権利条約の内容は、児童労働や人身売買の禁止など、日本にはリスクの少ない内容で、私たちに関係ある、私たちが守られているという実感がなかなか湧かないと思った。
 私は条約第六条の「生きる権利」や、第一二条の「意見表明権」第一三条の「あらゆる種類の情報および考えを求め、受け、かつ伝える自由」を含む「表現の自由への権利」など、ふだん当たり前と思っているものの方が大切だと思っている。
 学校の授業を批判するわけではひとないが、私たちに関係あること、他人事(ごと)でなく自分事として条約を受け止めてもらいたい。そういうことによって辛い思いをする子どもは減ると思う。
 私は子どもの権利条約を母子手帳に載せる活動をしてきた。その理由は、母子手帳は子どもが生まれる前、お腹に赤ちゃんがいるとわかった時もらい、子どもが大きくなるまで成長の記録を書き続ける。
 この条約を載せたら皆、絶対に子どもが生まれる前に読む。読むと心が温かくなり、暴力を振るう親はいなくなると思うから。
 もう一つの理由は、子どもはこの条約を学校などで学べるが、大人は学ぶ場がなかなかないので、母子手帳に載せたら、色々な人に知ってもらえ、条約が広まり、最終的に辛い子が減ると思うから。
 私は一八年八月、世田谷区長(東京都)に口頭でお願いに行き、その後、同席した区議が議会で提案してくださり、議決。一九年四月から世田谷区では、子どもの権利条約を母子手帳に載せてもらうことができた。
 まだ世田谷区だけなので、日本や世界で母子手帳にこの条約が載っているのが当たり前になる社会に、なればいいと思っている。
 ◆ 高校2年生の安藤日為(あんどうかなる)さん
 ブラック校則問題は、子どもの自己決定権や意見表明権を阻害されていることが問題、と感じる。
 茶髪の子を黒髪に染めることの強制等は、すごく個性を踏みにじっている。子どもの権利以前に人権も考えないといけないと、すごく感じる。
 校則を変える機構として、生徒会というのが必ずあると思う。生徒が代表して選んでいる生徒会が機能していれば、直接先生と交渉できると思う。生徒会をきちんと機能させるのが、生徒が意見表明するキーになると感じる。
 高校などでは「君たちは校則わかって入学したんだろ」と言う先生が多いが、事前の説明会で校則なんて説明されていなかった。実際は、校則は生徒手帳に載っていないのに、「それは校則だから」と先生が仰ることがすごく多い。そういうことは、明文化されていない上に、なぜそれが学校でまかり通っているのかと、すごく疑問を持つ生徒は多いと思う。
 そういう校則の明文化も、もっと日本で進んでいって、その上で、制服にバッジ(各自の関わる活動・運動を象徴するバッジや、アクセサリー・ブローチのような装飾的なものなど)を付けられるようにしたいとか、生徒会を機能させ各学校で行なっていければ、校則問題は解決すると思う。
 ◆ 高校2年生の今田恭太(いまだきょうた)さん
 日本国内にはLGBTの人は一三人に一人いるという。私はXジェンダー。自分の性をどう思うかについて、男でも女でもない。海外ではクイアと呼ばれ、セクシャルマイノリティの一人だ。少しずつ向上されてきたが、差別や理解不足は続いている。私はこの現状を変えるには、教育が不可欠だと考えている。
 十年前、小学2年の頃、仕草などが女性らしかった私は、「おかま、おねえ」と言われ、嫌がらせをされた。しかし担任は「男らしくしなさい」と、私の方を叱った。今も変わっていないのではないか。多様性が認められる学校作りとは、対極にあるのではないか。
 私は二つ解決策を提案したい。
 一つは保健の授業で、性の多様性を扱うこと。私が使っている教科書は、欄外コラムにしかセクシャルマイノリティの記載がなく、授業で取り上げることもなかった。性の多様性について、早期から認知することで、差別やいじめを防ぐだけではなく、生徒が社会に出た際に悩んだ時のヒントになると思う。
 二つ目、多くの子どもは家庭や学校にしか居場所を有していない。家族に相談、カミングアウトアウトするのはとても大変なこと。保健室の先生でも構わない。性のことを安心して相談できる仕組み作りを。多様性が認められる学校作りこそが、カラフルな世界を作る鍵になる。
 憲法第一六条請願権を、年齢や国籍に関係なく「何人(なにびと)にも保障される」旨、規定している。
 しかし文部官僚がこれに反すると思われる発言をしている(本誌前号参照)。具体例として、十八歳選挙権に連動し、文科省が主権者(政治)教育の新しい通知を出すため一五年十月五日に開催した会議で「学費やエアコン設置等、学校生活の改善向上に関し、生徒会役員が地方議会に請願するのは非常に意味がある」と、林大介・東洋大学助教が発言した。
 しかし当時、教育課程課長だった合田(ごうだ)哲雄・現財務課長は「生徒会として、もし意見を言うのであれば、まず学校に言うべきだ。是非議会に請願したいというのであれば、生徒会ではなく有志として行なうべき」「生徒会活動としては行なってはいけない」と述べ、生徒会活動を制限、キツい言葉で言えば統制しようとしている。合田氏の主張は憲法第一六条に照らし、「問題あり」と言わざるを得ない。
 質疑応答の際、こうした内容について、筆者が問題提起すると、安藤さんは次のように回答した(会場での回答に、取材への回答を加えたもの)。
「市役所や、学校がある都道府県、国(の議会や政策担当者等)に、たとえばエアコン設置など要望する場合も、生徒会役員や担当者が出向いて行ない(必要がある場合は生徒会担当の先生にも同行してもらって)、その請願や要請行動の過程を明文化し、生徒や保護者に伝えるのがよいと、私は考えます」
 ◆ 主権者教育を妨害した沖縄県教育委員会
 沖縄県が一九年二月二十四日に実施した「辺野古(へのこ)米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」に先立つ一月三十日、同県教育委員会は「学校で選挙期間中の模擬投票は有権者の投票行動に影響を与える懸念があるためふさわしくない」という趣旨の緊急連絡を、各学校の教頭に宛てて出した。
 最後のパネルディスカッションでは、元日教組教育文化局長・神本美恵子前参議院議員が一九年五月二十一日の参院文教科学委員会で、この件について政府側を追及し、「県民投票は県の条例に従って実施するものであり、公選法によるものではないから、授業で事前に模擬投票させることは指導方法として考えられる。有意義である」という趣旨の答弁をさせた事実を紹介。
 「模擬投票等の主権者教育に圧力を掛け、現場を萎縮させるような教委の指導は間違いである」と指摘した。
 また、一般社団法人fairの松岡宗嗣(そうし)代表理事は「LGBTの六割が学校でいじめの経験がある。『一般的に理解が進んでないから入れなかった』と当時、文科相は説明していたが、文科省が学習指導要領改訂で多様な性の在り方を入れないので、LGBTについて少なからぬ先生たちが適切な知識を子どもたちに十分教えられなかったり、LGBTへのいじめがあったりするのではないか」と述べた。
 再登壇した春名さんは、「1年A組」「部活」等の”枠”で「仲間として頑張ろう」と言われる風潮を、「協力しないといけない気持ちになるが、諸事情で部活等できない子もいる。なるべく固定された人間関係を作らないことを念頭に指導してほしい」と語った。
 ※永野厚男(ながのあつお) 文科省・各教委等の行政や、衆参・地方議会の文教関係の委員会、教育裁判、保守系団体の動向などを取材。平和団体や参院議員会館集会等で講演。
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