警視庁が12月3日、漫画家のろくでなし子さんと作家の北原みのりさんを逮捕した件で、『週刊金曜日』は同日、逮捕に抗議するとともに、一刻も早い2人の釈放を求める抗議声明文を発表した。
平井康嗣・編集長名での抗議声明では、ろくでなし子さんの『週刊金曜日』連載が、再逮捕のきっかけになった可能性について言及するとともに、「自由な表現活動に対する重大な侵害と暴力行使でしかありません」と批判している。
抗議声明文の全文は次の通り。(『週刊金曜日』編集部)
◆ ろくでなし子さん、北原みのりさん逮捕への抗議声明文
本日12月3日、ろくでなし子さんが警視庁小岩署にわいせつ物頒布等の容疑で再逮捕されました。今年7月12日に続く逮捕です。
ろくでなし子さんは、自身の女性器を主題にした作品の発表をつづけてきました。
ろくでなし子さんの一連の作品は、女性の性を商品化する「わいせつ」物を氾濫させている男性的な社会に対して疑義を唱える表現活動です。
いまだに一連の作品を“刑法違反のわいせつ物”ととらえる警視庁の不勉強さにはあらためて残念な思いを抱きます。
また、今回の再逮捕のきっかけの一つとして、『週刊金曜日』における、ろくでなし子さんの連載漫画が考えられます。
この漫画では小岩署での勾留体験がつまびらかに描かれています。その中で、警視庁小岩署の不当な取り調べや、そもそもの容疑理由の不明朗さも明らかにされてきています。
警察や司法当局が自らの不都合な事実を隠ぺいするために、または報復的に、ろくでなし子さんの逮捕に及んだとすれば、これは自由な表現活動に対する重大な侵害と暴力行使でしかありません。
さらに今回は、北原みのりさんも同日、わいせつ物公然陳列容疑で警視庁に逮捕されました。北原さんも『週刊金曜日』に連載を持つ作家です。北原さんも性を女性が取り戻すために活動を続けてきた代表的な人物の一人です。
ともかく不当な理由で国民の平穏な生活を侵害することはやめてほしい。一刻も早く2人が釈放されること、そして強硬な捜査を取りやめることを強く、強く求めます。
抗議の意思表示として、ろくでなし子さんが「わいせつ」と表現について考える対談を来週発行の12月12日号に掲載します。
*未確認事項があったため文章を一部修正しました。(2014/12/03 21:12)
『週刊金曜日ニュース』(2014年12月3日)
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=4860
※ ネット署名は 「芸術家・ろくでなし子氏の即時釈放を要求します」(Change.org)
《週刊金曜日 メディア仕分け人》
◆ 「女性も輝きましょう!」
そんな安倍首相の言葉断固拒否します
速やかにご退陣を
安倍晋三首相が演説してる。拳ふりあげながら、和やかな顔で。
「女性の力を活かしていけば日本はもっと成長していきます。家庭で頑張って子育てに頑張っているお母さんも、また子育てと仕事、両立させているお母さんも、両立させたいと考えているお母さんも、仕事で一生懸命頑張っている女性も、人生の目標に向かってしっかりと進んでいくことができるような、女性にとってやりがいのある暮らしやすい日本を間違いなく作ってまいります」
ふ・ざ・け・る・な、ふざけるな。
「特定秘密保護法や集団的自衛権、安倍首相はどうかと思うけれど、女性政策については評価したい」
最近、日頃からフェミな話をする女性がそんなことを言い出して、私は腹の底から驚いた。
「何でも反対ばかりしていたら、ダメだと思う。いい所は評価して、利用しなくっちゃっ!」
そうなんでしょうか。安倍のにやついた顔を見ながら考えている。史上最悪で最も過激な政権のもとで、かつてないほど「女性政策」がうたわれている意味を。
第一次安倍政権のとき、彼が最初にやったのは「女性天皇」議論を終わらせたこと。第二次安倍政権が発足したとき、彼が最初にやったのは「女性宮家創設」議論をつぶしたこと。
安倍さんが気になっているのは、この国の「象徴」の「家族の形」だ。
だいたい、「『従軍慰安婦』の強制連行はなかった」と言い続け、あたかも「従軍慰安婦」の問題が日本の名誉であるかのように扇動し、フェミニズムへの無知と偏見をさらしたジエンダーフリーバッシングに力を入れてきた男です。
そんな男が言う「女性も、輝きましょう!」という言葉を、どうやって信じろというんでしょう。
先の大戦中、女たちは大活躍した。家庭を守り、国のために子どもを生み育て、政府に協力し、夫や息子を戦地に送り出し、社会に進出し、発言権を強めた。それはまさに「輝いていた」ことだろう。
国が女に協力を求め、「輝いて!」などと薄ら笑いを浮かべるほど、気味の悪いことはない。
これまでどれだけの女が、男社会の中で辛酸をなめてきたか。男社会の中で口を閉ざしてきたか。そういう女たちが、自分に服従する女の部下しか選ばない男に、「わーお、私も輝くわっ!」と投票でもするかと?
だいたい「輝け」なんて、女にしか使わない言葉だ。女を「磨くもの」と思っている証拠でしょう。
男自身が変わり、男社会が変わることは約束せず、女の人を「活用」させることを約束する総理。これで女が騙されると思っているのだとしたら、日本の女、相当舐められたもんです。
断固、拒否して、あんたにも国にも活用されたくない、速やかにご退陣下さいと、お伝えします。
安倍首相には政界ではなく、私生活で輝いていただきたいです。
※きたはらみのり/
ライター・女性向けアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表。気になるメディアを仕分けしていきます。著書に『メロスのようには走らない。女の友情論』(ベストセラーズ)。
『週刊金曜日 1019号』(2014.12.5)
平井康嗣・編集長名での抗議声明では、ろくでなし子さんの『週刊金曜日』連載が、再逮捕のきっかけになった可能性について言及するとともに、「自由な表現活動に対する重大な侵害と暴力行使でしかありません」と批判している。
抗議声明文の全文は次の通り。(『週刊金曜日』編集部)
◆ ろくでなし子さん、北原みのりさん逮捕への抗議声明文
本日12月3日、ろくでなし子さんが警視庁小岩署にわいせつ物頒布等の容疑で再逮捕されました。今年7月12日に続く逮捕です。
ろくでなし子さんは、自身の女性器を主題にした作品の発表をつづけてきました。
ろくでなし子さんの一連の作品は、女性の性を商品化する「わいせつ」物を氾濫させている男性的な社会に対して疑義を唱える表現活動です。
いまだに一連の作品を“刑法違反のわいせつ物”ととらえる警視庁の不勉強さにはあらためて残念な思いを抱きます。
また、今回の再逮捕のきっかけの一つとして、『週刊金曜日』における、ろくでなし子さんの連載漫画が考えられます。
この漫画では小岩署での勾留体験がつまびらかに描かれています。その中で、警視庁小岩署の不当な取り調べや、そもそもの容疑理由の不明朗さも明らかにされてきています。
警察や司法当局が自らの不都合な事実を隠ぺいするために、または報復的に、ろくでなし子さんの逮捕に及んだとすれば、これは自由な表現活動に対する重大な侵害と暴力行使でしかありません。
さらに今回は、北原みのりさんも同日、わいせつ物公然陳列容疑で警視庁に逮捕されました。北原さんも『週刊金曜日』に連載を持つ作家です。北原さんも性を女性が取り戻すために活動を続けてきた代表的な人物の一人です。
ともかく不当な理由で国民の平穏な生活を侵害することはやめてほしい。一刻も早く2人が釈放されること、そして強硬な捜査を取りやめることを強く、強く求めます。
抗議の意思表示として、ろくでなし子さんが「わいせつ」と表現について考える対談を来週発行の12月12日号に掲載します。
2014年12月3日
平井康嗣・『週刊金曜日』編集長
平井康嗣・『週刊金曜日』編集長
*未確認事項があったため文章を一部修正しました。(2014/12/03 21:12)
『週刊金曜日ニュース』(2014年12月3日)
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=4860
※ ネット署名は 「芸術家・ろくでなし子氏の即時釈放を要求します」(Change.org)
《週刊金曜日 メディア仕分け人》
◆ 「女性も輝きましょう!」
そんな安倍首相の言葉断固拒否します
速やかにご退陣を
北原みのり
安倍晋三首相が演説してる。拳ふりあげながら、和やかな顔で。
「女性の力を活かしていけば日本はもっと成長していきます。家庭で頑張って子育てに頑張っているお母さんも、また子育てと仕事、両立させているお母さんも、両立させたいと考えているお母さんも、仕事で一生懸命頑張っている女性も、人生の目標に向かってしっかりと進んでいくことができるような、女性にとってやりがいのある暮らしやすい日本を間違いなく作ってまいります」
ふ・ざ・け・る・な、ふざけるな。
「特定秘密保護法や集団的自衛権、安倍首相はどうかと思うけれど、女性政策については評価したい」
最近、日頃からフェミな話をする女性がそんなことを言い出して、私は腹の底から驚いた。
「何でも反対ばかりしていたら、ダメだと思う。いい所は評価して、利用しなくっちゃっ!」
そうなんでしょうか。安倍のにやついた顔を見ながら考えている。史上最悪で最も過激な政権のもとで、かつてないほど「女性政策」がうたわれている意味を。
第一次安倍政権のとき、彼が最初にやったのは「女性天皇」議論を終わらせたこと。第二次安倍政権が発足したとき、彼が最初にやったのは「女性宮家創設」議論をつぶしたこと。
安倍さんが気になっているのは、この国の「象徴」の「家族の形」だ。
だいたい、「『従軍慰安婦』の強制連行はなかった」と言い続け、あたかも「従軍慰安婦」の問題が日本の名誉であるかのように扇動し、フェミニズムへの無知と偏見をさらしたジエンダーフリーバッシングに力を入れてきた男です。
そんな男が言う「女性も、輝きましょう!」という言葉を、どうやって信じろというんでしょう。
先の大戦中、女たちは大活躍した。家庭を守り、国のために子どもを生み育て、政府に協力し、夫や息子を戦地に送り出し、社会に進出し、発言権を強めた。それはまさに「輝いていた」ことだろう。
国が女に協力を求め、「輝いて!」などと薄ら笑いを浮かべるほど、気味の悪いことはない。
これまでどれだけの女が、男社会の中で辛酸をなめてきたか。男社会の中で口を閉ざしてきたか。そういう女たちが、自分に服従する女の部下しか選ばない男に、「わーお、私も輝くわっ!」と投票でもするかと?
だいたい「輝け」なんて、女にしか使わない言葉だ。女を「磨くもの」と思っている証拠でしょう。
男自身が変わり、男社会が変わることは約束せず、女の人を「活用」させることを約束する総理。これで女が騙されると思っているのだとしたら、日本の女、相当舐められたもんです。
断固、拒否して、あんたにも国にも活用されたくない、速やかにご退陣下さいと、お伝えします。
安倍首相には政界ではなく、私生活で輝いていただきたいです。
※きたはらみのり/
ライター・女性向けアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表。気になるメディアを仕分けしていきます。著書に『メロスのようには走らない。女の友情論』(ベストセラーズ)。
『週刊金曜日 1019号』(2014.12.5)
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