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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

卒業式で一緒に起立できなかった生徒にも勝訴を報告したい

2022年08月07日 | 「日の丸・君が代」強制反対
  《『いまこそ』から》
 ◆ 2017年大阪再任用拒否国賠訴訟 高裁勝利判決が確定!
元大阪府立高校教員 梅原聡

 大阪府教委は、卒業式の不起立で二度あ戒告処分を受けていたことに加えて「今後、卒業式等の国歌斉唱時の起立斉唱の職務命令を含む上司の職務命令に従うか?」と問う、いわゆる「意向確認」に答えなかったことを決め手に、私の再任用申請を拒否しました。
 私はその不当性を訴えて、国家賠償請求訴訟を起こしましたが、一審の大阪地裁はこれを全面棄却、しかし、昨年12月、二審大阪高裁は「府教委の判断は、裁量権の逸脱・濫用にあたり、違法」として315万円の損害賠償を命じる判決を出しました。
 大阪府は上告(受理申立)していましたが、6月16日、ついに最高裁は府の申立を受理しないと決定しました!裁判官全員による決定とされています。
 これで、大阪高裁での勝利判決が確定しました!この報告ができることを本当にうれしく思います。

 大阪高裁判決では、年金を巡る社会情勢や再任用希望者ほぼ全員が採用されている実状などから、再任用されることへの期待は、法的保護に値するものに高まっており、再任用希望者は他の希望者と平等な取り扱いをうけることを強く期待できる地位にあったとしました。
 その上で、不起立で戒告処分の私が再任用を拒否される一方、体罰を繰り返して減給という重い処分を受けたA氏が同じ年に再任用に合格していることに注目して「府教委の判断は客観的合理性や社会的相当性を著しく欠き、裁量権の逸脱・濫用にあたる」と断じ、賠償金を支払うように命じたのです。

 一方、「『意向確認』は、キリシタンの踏み絵と同じで、思想良心の自由を直接に侵害し、違憲・違法である」という私たちの主張は、残念ながら認められませんでした。
 しかし、大阪府の商工労働部は、私たちの訴えを受けて「意向確認」が採用活動におけるいわゆる違反質問にあたるとして府教委に改善要請をしていて、府教委は事実上これを受け入れる形で、翌年度の「意向確認」の文言から「…起立斉唱の職務命令を含む…」という部分を削除しました。
 その結果、不起立者も再任用を認められるようになったのです。
 そういう意味で、私たちの運動は判決以前に、「意向確認」についても勝利していたと考えたいと思います。

 思想良心の自由、教育の自由といったことに触れることのなかった高裁判決には不満も感じていますが、昨今の司法・行政が癒着した感のある情勢の中で、「君が代」不起立者を狙い撃ちにした差別的な取り扱いを違法であると断罪した今回の判決には、大きな意味があったと確信しています。
 ただ、賠償金が支払われても、学校で過ごすはずだった時間を取り戻すことはできません。府教委には、これまでの経緯に対する真摯な反省と謝罪を強く求めたいと思っています。

 再任用拒否から5年、最初の不起立での戒告処分から10年、ここまでやってこられたのは、背中を押ししてくださる多くの方のご支援や、全国で闘う皆さんの様子に励まされてのことです。
 この間、いろいろな出会いがありました。

 はじめの不起立で処分された後、声をかけてくれた生徒がいました。
 彼女は中学校の卒業式でも、その学校の校長や担任団の先生たちに受け入れられて不起立をした、高校の卒業式でもそうしたいができるだろうかと、話してくれました。
 そんな彼女の卒業の年、私は式場外の役割に充てられていました。
 気持ちだけでも彼女の支えになれたらと思って、たくさんの3年生を教えてきたので式場に入りたいと申し出ると、校長は「君が代」の時はどうするのかを尋ねました。私は「誠意を示したいと思います」と答えたのですが、校長は何を勘違いしたのか、私を式場内の係に変更してくれたのです。
 卒業式の朝、私は「日の丸・君が代」強制に反対するビラをまいていました。その隣で、なんと、彼女と彼女の父親は登校してくる卒業生たちに自分の気持ちをつづったビラを手渡していたのです。
 卒業式が始まって、彼女と私はお互いの姿を見られる位置にはいませんでしたが、「国歌斉唱」の声と共に静かに席に着き、同じく席に着いたであろう彼女のことを思い浮かべていました。
 そんな卒業式から8年、彼女も喜んでくれているかな。

 大阪と東京では様々な事情の違いがあり、私の判決がそのまま東京の5次訴訟に活かされるものではないと思いますが、何か少しでも追い風になるところがあればと思っています。
 今後も「日の丸・君が代」で粘り強く闘っておられる全国の皆さんと、また、様々の運動と連携して、学校に自由を取り戻していきたいと思います。

『いまこそ no.26』(2022年7月29日)
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