《教職員評価システムを考える》
★ 第4回:アンケート結果は「教職員評価・育成システム」廃止を求めている
-会員A-
1、府教委「まとめ」の結論:
「評価者・被評価者ともに肯定的意見が増加し、制度が適切に運営され、着実に定着」は虚偽、捏造。
新勤評全国交流会は独自に、2010年度と2017年度のアンケートの主要6項目の設問への被評価者の回答をスコアリングして比較しています。(全国交流会ニュース19号)
(府教委が行なった「授業アンケート結果」の方法に従い、
よくつながっているが4点、
つながっているが3点、
あまりつながっていないが2点、
全くつながっていないが1点
としています)
○このスコア分布から分かることは
府教委「まとめ」の「評価者・被評価者ともに全体としてシステムに対する肯定的な意見が増加している」との評価は虚偽、捏造だということになります。
何故なら、
1)全ての項目で「特段に低い」評価
府教委は授業アンケート結果が平均2.5以下を「特段に低い」と評価しています。
これに従うならば、2010年度、2017年度とも主要6項目全てにおいて平均値が2.5以下となっていることから、教職員が「評価システム」に対して「特段に低い」否定的評価を下していること、システムの廃止を含めた抜本的見直しを求めていることを示しています。
2)システムの全面否定
「システム全体」に関する設問7の全てで、2017年度アンケート結果が前回に比べ更に低くなり、より否定的になっています。特に「目標共有」の低下が顕著です。
即ち、システムは
①「学校目標の共有」につながっていない、
②教員の「意欲・資質能力の向上」につながっていない、
③「教育活動等の充実及び学校の活性化」につながっていない
と、システムの全面否定となっています。
3)「システム全体」のスコアより「給与への反映」のスコアが高いのは不適切な誘導質問による
①2017年度の設問8(2)「給与への反映」のスコアは、2010年度に比べ+0.48増えているものの、2.30と「特段に低い」否定的評価でした。
2010年度スコアが1.80と他の項目よりも遥かに低い2を割る超「特段に低い」評価だったのは、2007年度給与反映導入直後の給与反映への拒否感が極めて強かったことを表しています。
②2017年度の自由記述においても、杉浦さんは、給与反映に否定的意見(609人)が肯定的意見(48人)の12.7倍にも達する「特段に低い」評価だったことから、「教職員評価・育成システムにより給与反映を行なうことはほとんどが否定的な意見をもっている」とし、評価結果を給与に反映させることは「廃止すべき」と主張しています。
③設問7「システム全体」のスコアが極めて低い(2.1前後)にもかかわらず、その「給与反映」のスコア(2.30)が相対的に高く出ているのは何故でしょうか。
これは、設問8が「二つのトリック」を使って肯定的評価に誘導したことによるものだと考えられます。
すなわち、設問8(1)で「頑張った人とそうでない人に給与差を設けるのは適当だと思いますか」と、①社会常識的に肯定される質問を直前に行なうことにより肯定的評価に誘導し、②「評価システム」が、さも「がんばり」を評価するものであるかのように偽装したことが、「給与反映」のスコアを高くしているのです。
4)評価と結びついた「自己申告票」と「面談」を否定
「自己申告票*」と「面談**」が2.5以下と「特段に低い」否定的評価となっているものの、スコアが設問7「システム全体」と比べ高くなっているのは何故でしょうか?
これは、評価と結びつくことで否定的側面が強くなっているものの、目標設定や面談をすること自体は肯定的に評価している人がいるからだと思われます。
*設問2(1)「自己申告票が成果の把握や目標の達成に取り組むのに役立っているか」に対し、「役立ってない」との否定的評価が6割に達し、スコアが2.26と「特段に低い」にもかかわらず、府教委が「被評価者が有用性は認識している」と肯定的評価をしているのは虚偽、捏造そのものです。
そもそも自己申告票の目標を校長の「学校方針」に沿うように設定することを余儀なくされており、教職員自身が望む目標は評価の対象とはなりません。
自由記述では、評価のために「数値目標」を義務付けることが「本来の教育にあわない」、「教育そのものに歪みが生じる」として、多くの人が目標設定を評価と切り離すべきだとしています。
**自由記述では、
「システム評価のための面談になっていて、余り実のあるものではない」、
「面談時に適切なアドバイスをもらったことがない」
等、75名が評価のための面談は役に立たないと述べています。
以上から分かることは、アンケート結果が示しているのは、“教職員が「評価システム」を否定しており、その廃止を望んでいる”ということです。
2, 杉浦さんのテキストマイニングによるKWICコンコーダンス分析結果と一致
1)評価システムは「教職員から全くといっていいほど受け入れられていない」
以上の「新勤評全国交流会」によるアンケート結果の評価が正しいことは、杉浦さんのテキストマイニングによる自由記述の分析結果により裏付けられていまます。
杉浦さんは、「自由記述の分析からは、とてもこの結論(府教委の「システムに関する肯定的言意見が増加している」との分析)とは似ても似つかない結果が示されている。
結論から言うと、評価・育成システムは目標設定と面接以外、教職員から全くといっていいほど受け入れられていない」と強調しています。
2)「少なくない旧職員がシステムの廃止、それも多くが即時廃止を求めている」
杉浦さんは、「廃止」という言葉128個が「システムの廃止」の文脈で出てきているのに、「府教委の総括には一言も出てこない」、「『システム』『給与』『意欲』でいずれも否定的記述が肯定的記述のだいたい10倍」、「すぐにでも止めてほしいという意見がいっぱいあるのに、『肯定的意見が増加し、適切に運営され定着している』という府教委の総括は一体何なのか」と府教委「まとめ」を批判しています。
3,若いときのシステムへの幻想が年代が上がるにつれ剥がれ、否定的評価が増えている
杉浦氏は「アンケート結果によると若手は評価制度に肯定的」だが、「年代が上がるごとに肯定的な意見が減少している」、「20代のとき肯定的に捉えていた層が30代になっていくと否定的になる割合が増えている」としています。
2010年、2017年いずれのアンケートでも20代でシステムに対する肯定的評価が4割を超えているのが、50代では3割を割っています。
それで、2010年に20代だった教員のシステムへの評価が2017年にはどう変化しているかを調べてみました。
1)20代が30代になると「意欲・資質能力の向上」に「全くつながっていない」が10ポイント増
表2より、「評価・育成システムが意欲、資質能力の向上につながっているか」との設問に対する肯定的評価(「よくつながっている」、「つながっている」)が2010年度アンケートで20代が43.9%と最も多かったが、彼らの多くが30代になった2017年度アンケートでは32.4%と10.5ポイントも否定的評価に転換していることが分かります。
教員に成り立てのときは肯定的評価だった者が、7年間のシステム実施を経て否定的評価に変わっているのです。
とりわけ「全くつながっていない」と評価システムを全否定する人が20代で13.7%だったものが、7年後の30代では24.3%と10.6ポイントも増えています。
このことからも、府教委が「評価者・被評価者とも肯定的意見が増加し、制度が適切に運営され、着実に定着」と結論づけているのは虚偽であり、捏造であることが実証されます。
2)評価が教員のアイデンティティ危機に「追い打ち」をかけている
---教員が求めているのは評価システムの廃止か支援システムへの転換か!
杉浦氏は、年代が上がるとともに、教員のシステムへの否定的意見が増えているのは、アイデンティティ形成の危機にある教職員が支援を必要としているのに、評価が逆に「不適格とか能力のなさとかのレッテルを貼り、バーンアウトを助長している」ことにあるとして、評価より支援を、システムを「評価・育成から支援・育成に再構築」することを提言しています。
4.23学習・交流会では、「評価・育成システム」の廃止か「支援・育成システム」への転換かについての議論がありました。次回はこれについて考えてみたいと思います。
『教職員評価システムを考える』(2023-03-18)
https://blog.goo.ne.jp/shinkinpyouhantai2019/e/615728f51a8706012e5058b4b6e5d449
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