《被処分者の会通信から》
◆ 教育委員の発言あれこれ
吉野典子
山口香氏の教育委員就任は2013年4月1日。私が退職して定例会を傍聴するようになったのはその1年後です。当時の会議は古参の委員が口火を切り、山口委員の発言回数は少なく、時には一言も発しないまま終了することもありました。
竹花・木村委員が順次退任し、2015年に就任した宮崎緑氏が初回に真っ先に発言した頃から、山口委員の発言も増えていきましたが、それでも“最後か、後ろから2番目に発言する人”で、論客という印象はありませんでした。
その彼女が今年8月に「スポーツの価値」(集英社新書)を出版しました。
会議(と言っても都教委定例会のことではありません)が終わった後に会議中は沈黙していた人から「私もそう思っていた」と言われてイラッとしたり、誰かの意見に反対したら「あの人と何かあったの?」と周囲から心配されて驚いたり……彼女のそんな経験も綴られていて、「分かる分かる」と思いながら読み進めました。
教育委員の著書をわざわざ読む気になったのは、9月8日のTBSラジオ「武田砂鉄のプレ金ナイト」に出演した折の発言が興味深かったからです。
「オリンピックのような国際イベントを呼んだことで、日本の立ち位置が見え、悪いこともいっぱい出てきた。例えば、国際基準で見た時に日本がどうなのか。日本人としては『まあまあいいんじゃない、これは』『こういうことあるよね』と呑み込んできたことも、『えっ、それはちょっと違うでしょ』というふうに。国際的なイベントをすることは扉を開けることなので、みなさんに見られちゃう。今まで自分の家だけでやっていたからあまり意識しなかったことが、『違うよ』となる。そういう意味で私は大掃除と呼んでいる。『ここにある物、邪魔だったよね』と感じたことをちゃんと片付けて綺麗にできるか、或いは修正できるかというところが、これから問われていると思う」。
私はすぐに「日の丸・君が代」強制と国連勧告の関係を連想し、「国内では『皆がやっていることだから』『儀礼的所作だから』で済ませてきたことが、国際基準に照らせばアウトだと分かりました。10.23通達の大掃除が必要だとは思いませんか?」と質問したくなりました。
聴き手の武田砂鉄から、五輪憲章に反して競技団体やメディアがメダル獲得目標を掲げるのをどうにかできないかと問われて、「国別対抗を薄めるとしたら、誰かとも話したのだけれど、例えば国旗掲揚とか国歌をやめてしまうとか」と答えた山口委員ですが、その時、起立斉唱しない教職員をこれまで何人も懲戒処分してきたことは、頭をよぎらなかったのでしょうか。
山ロ委員の任期は今年12月20日までです。既に最古参になっているので、今期限りかもしれません。たとえ退任後であっても、『「日の丸・君が代」強制』は、まさに
「どのような職業に就いていても、誰もがこの社会に生きる一人の人間として、自分の考えを持ち、発言していくことは、何ら否定されるべきものではないはずです。何かおかしいことがあるのに黙っているのは、むしろ無責任ではないでしょうか。それが、人々の命や人権を脅かすことであれば、なおさら」(前掲書129頁)
な問題だと気づく日が来ることを願っています。
『被処分者の会通信 第146号』(2023年11月15日)
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