★ 週48時間以上 ★
超長時間労働者 世界で6億人 lLO報告書
世界の労働者の5人に1人に相当する6億人以上が、暮らしをたてるためだけに週48時間以上の超長時間労働に従事していることが、ILO(国際労働機関)の報告書で明らかになった。
報告書は、50カ国以上の労働時間を取り上げ、途上国と移行経済諸国の労働時間政策の影響を初めて検証している。
■暮らし守るためだけに
ILOの報告書によると、途上国・移行経済諸国の労働時間は非常にばらつきがあるが、総じて先進国よりは長く、二〇〇四-〇五年に週四十八時間以上の超長時間労働従事者が労働者全体に占める割合が高かった国としては、ペルー(50・9%)がトップとなり、これに韓国(49・5%)、タイ(46・7%)、パキスタン(44・4%)が続いた。
先進国では、英国25・7%、イスラエル25・5%、オーストラリア20・4%、スイス19・2%、米国18・1%、日本17・7%といった状況になっている。
これらの国で労働時間短縮の試みが功を奏しなかった理由は多様だが、労働者がただ暮らしのためだけに長時間働く必要があることや生産性が低い状況下で生産高を上げようとする企業の試みによる残業の幅広い活用などが指摘されている。
その上で報告書は、労働時間関連の法律・政策は、特に週最大労働時間、残業代、インフォーマル就業に対する影響の点から、途上国では実際の労働時間に限られた影響しか与えていないと指摘している。
報告書はもう一つの懸念要因として、労働時間における明確な男女間格差を挙げている。
世界的に男性は女性よりも平均して長く働く傾向があり、女性は短時間労働に従事する可能性がかなり高いとした上で、これは無報酬の家事労働と家族の世話の主たる責任の配分によるところが大きいと結論付けている。子どものいる夫婦の間では、男性の有報酬労働時間が長くなるのに比して、女性は短くなる傾向があり、例えば、マレーシアでは女性の推計23%が子どもの世話を理由として仕事を辞めているとしている。
■労災、職業病リスク…
さらに、報告書は、今日のグローバル経済の特徴であるサービス産業の拡大とインフォーマル就業の増加も長時間労働の主な原因であると指摘している。
サービス産業の労働時間は最もばらつきが大きく、卸・小売業、ホテル・レストラン、運輸・倉庫・通信業といった交代制や通常時間外の勤務を一般に伴う産業では特に長いと分析。警備産業の法定労働時間は最も長く、例えばジャマイカでは週七十二時間に達すると推計されている。
途上国の就業者全体の少なくとも半数が従事するインフォーマル経済ではその約五分の三が自営業だが、自営業の男性の三割以上は週四十九時間以上働いているとされている。製造業の平均労働時間は世界的にほぼ週三十五-四十五時間の範囲に収まるが、コスタリカやフィリピンなど一部途上国では相当長くなっているという。
さらに、若者や引退年齢に近い労働者の労働時間がその他の人々よりわずかに短くなっているのは、この層の不十分な雇用機会を反映している場合が多いことを報告書は示している。
途上国・移行経済諸国では、通常労働時間の規制が進展しつつあるが、超長時間労働の広まりは明らかに懸念すべき事態で、ILO労働・雇用条件計画の専門家は「労働時間の短縮は労働者の健康や家庭生活の充実、職場における事故の低下、生産性向上、男女平等の促進という肯定的な結果を招く可能性がある一方で、途上国・移行経済諸国における短時間労働者の相当数が不完全就業状態にあるかもしれず、したがって貧困に陥る可能性が高い」と警告。
■改善へ政策提言
労働時間に関する国際労働基準が初めて採択されてから一世紀近くになろうとしているが、報告書は現状を危倶し、①労働災害や職業病のリスク低減に向けた長時間労働の削減②フレックスタイムのような国内状況に合った家族に優しい労働時間方策の採用③質の高いパートタイム労働の促進④企業の生産性向上に寄与する妥当な法定労働時間制限の採用-など、労働時間の分野でのディーセントワーク(人間らしい適切な仕事)を促進することに向けた政策の早急な実現を提言している。
『東京新聞』(2007年7月24日 夕刊 ワークス)
超長時間労働者 世界で6億人 lLO報告書
世界の労働者の5人に1人に相当する6億人以上が、暮らしをたてるためだけに週48時間以上の超長時間労働に従事していることが、ILO(国際労働機関)の報告書で明らかになった。
報告書は、50カ国以上の労働時間を取り上げ、途上国と移行経済諸国の労働時間政策の影響を初めて検証している。
■暮らし守るためだけに
ILOの報告書によると、途上国・移行経済諸国の労働時間は非常にばらつきがあるが、総じて先進国よりは長く、二〇〇四-〇五年に週四十八時間以上の超長時間労働従事者が労働者全体に占める割合が高かった国としては、ペルー(50・9%)がトップとなり、これに韓国(49・5%)、タイ(46・7%)、パキスタン(44・4%)が続いた。
先進国では、英国25・7%、イスラエル25・5%、オーストラリア20・4%、スイス19・2%、米国18・1%、日本17・7%といった状況になっている。
これらの国で労働時間短縮の試みが功を奏しなかった理由は多様だが、労働者がただ暮らしのためだけに長時間働く必要があることや生産性が低い状況下で生産高を上げようとする企業の試みによる残業の幅広い活用などが指摘されている。
その上で報告書は、労働時間関連の法律・政策は、特に週最大労働時間、残業代、インフォーマル就業に対する影響の点から、途上国では実際の労働時間に限られた影響しか与えていないと指摘している。
報告書はもう一つの懸念要因として、労働時間における明確な男女間格差を挙げている。
世界的に男性は女性よりも平均して長く働く傾向があり、女性は短時間労働に従事する可能性がかなり高いとした上で、これは無報酬の家事労働と家族の世話の主たる責任の配分によるところが大きいと結論付けている。子どものいる夫婦の間では、男性の有報酬労働時間が長くなるのに比して、女性は短くなる傾向があり、例えば、マレーシアでは女性の推計23%が子どもの世話を理由として仕事を辞めているとしている。
■労災、職業病リスク…
さらに、報告書は、今日のグローバル経済の特徴であるサービス産業の拡大とインフォーマル就業の増加も長時間労働の主な原因であると指摘している。
サービス産業の労働時間は最もばらつきが大きく、卸・小売業、ホテル・レストラン、運輸・倉庫・通信業といった交代制や通常時間外の勤務を一般に伴う産業では特に長いと分析。警備産業の法定労働時間は最も長く、例えばジャマイカでは週七十二時間に達すると推計されている。
途上国の就業者全体の少なくとも半数が従事するインフォーマル経済ではその約五分の三が自営業だが、自営業の男性の三割以上は週四十九時間以上働いているとされている。製造業の平均労働時間は世界的にほぼ週三十五-四十五時間の範囲に収まるが、コスタリカやフィリピンなど一部途上国では相当長くなっているという。
さらに、若者や引退年齢に近い労働者の労働時間がその他の人々よりわずかに短くなっているのは、この層の不十分な雇用機会を反映している場合が多いことを報告書は示している。
途上国・移行経済諸国では、通常労働時間の規制が進展しつつあるが、超長時間労働の広まりは明らかに懸念すべき事態で、ILO労働・雇用条件計画の専門家は「労働時間の短縮は労働者の健康や家庭生活の充実、職場における事故の低下、生産性向上、男女平等の促進という肯定的な結果を招く可能性がある一方で、途上国・移行経済諸国における短時間労働者の相当数が不完全就業状態にあるかもしれず、したがって貧困に陥る可能性が高い」と警告。
■改善へ政策提言
労働時間に関する国際労働基準が初めて採択されてから一世紀近くになろうとしているが、報告書は現状を危倶し、①労働災害や職業病のリスク低減に向けた長時間労働の削減②フレックスタイムのような国内状況に合った家族に優しい労働時間方策の採用③質の高いパートタイム労働の促進④企業の生産性向上に寄与する妥当な法定労働時間制限の採用-など、労働時間の分野でのディーセントワーク(人間らしい適切な仕事)を促進することに向けた政策の早急な実現を提言している。
『東京新聞』(2007年7月24日 夕刊 ワークス)
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