=たんぽぽ舎:連載「メディア改革」第165回=
★ 8・6反戦反核集会参加で5人を監禁
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
12月6日午前、広島へ飛んだ。年金生活者だから、ANAの格安のシニア航空券(当日零時から空席がある時だけ乗れる)での出張取材だった。広島では、
1.「8・6ヒロシマ暴処法5人弾圧を許すな! 5人の仲間を今すぐ返せ!12・6広島地裁包囲 怒りの大行動」の取材、
2.10日のノーベル平和賞で忘却された朝鮮民主主義人民共和国在住の朝鮮人被爆者の二つを取材した。
集会の呼び掛けは「8・6ヒロシマ暴処法弾圧を許さない会」。
6日正午から広島拘置所正門前で、昨年8月6日の原爆ドーム前集会で、広島市役所職員を集団で転ばせたという罪状で、今年2月28日に広島県警に逮捕され、広島地検に「暴力行為等処罰に関する法律」(暴処法)違反で起訴され9カ月半勾留されている5人を激励した。
午後1時からは隣にある広島地裁の正門前で、5人の保釈請求を却下している刑事第一部合議A係(角谷比呂美裁判長、小川貴紀右陪席裁判官、伊集葉留花左陪席裁判官)に対する抗議行動を行った。
被告人の一人の父親は
「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が与えられ、同じように反戦反核を訴えている息子らは投獄されている。理不尽だ。
昨年の8・6集会で転んだという市職員は被害届を出していない。
戦時下にできた暴処法で逮捕した県警公安警備は戦前の「特高警察」と変わらない。
接見禁止もついていて、家族は面会もできない。政治弾圧だ」
と訴えた。
★ “事件”を捏造し250日勾留する広島地裁のひどさ
その後、私は約10分、電気式人工喉頭でスピーチした。
「裁判長の角谷さんは、自分が裁判官になった時の初心に戻って、自分がいま5人に対してしていることを考えてほしい。事件が存在していない。逮捕・起訴が捏造だ。被害者がいないので“冤罪”ですらない」
「昨年の8・6集会を現場で取材した。厳粛な集会を妨害したのは全国から動員された日本会議系右翼活動家。半年後に5人は逮捕され、猛暑の夏、エアコンのない拘置所で監禁されている。5人のクリスマスと年末年始を、獄中で迎えさせるのは国家犯罪だ」
私は地裁事務局に意見書(12頁)を提出した。
6日の行動を取材したキシャクラブメディアの記者はゼロ。
7日の各紙の広島版にも記事は一字もなかった。メディアは、広島市、市議会、県警、地検、裁判所の共犯者だ。
5人の裁判は公判前準備手続きしか行われず、公開の公判が開かれていない。
準備手続き中で、警察官の尋問が強行された。憲法違反だ。
板垣雄三東大名誉教授(中東研究)は
「8・6弾圧はイスラエルがやっている裁判もなしの行政拘禁と同じかそれ以上のもので、パレスチナ問題と深く結びついたものだ」
と強調している。
https://znn.jp/2024/11/post-477742.html
★ 平岡・元広島市長は「米国に謝罪を要求せよ」
7日午後、間もなく97歳になる平岡敬・元広島市長(元中国新聞編集局長)にインタビューした。
平岡さんは、私の第一作『犯罪報道の犯罪』を最初に評価してくれた先輩ジャーナリストだ。昨年8月以来の再会だった。
鋭く現代政治を見極める平岡さんは
「被団協のノーベル平和賞受賞はめでたいことだが、少々はしゃぎ過ぎではないか。米国の原爆投下は国際法違反と米国に認めさせないと、核禁条約の実効性はない。米国などの核抑止に頼る自公政権をもっと強く批判すべきだ」
と話した。広島は、米国ネバダ州や仏領南太平洋諸国の核実験場近くの被爆者、中東の劣化ウラン弾犠牲者などもいる、米国は対中戦争を狙っている、核戦争を止め、すべての核兵器を廃絶する運動の中心にならなければならない。
★ 朝鮮人被爆者代表の式典不参加は差別
広島県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖会長に、被爆者が住んでいた朝鮮人集住地区を案内してもらい、インタビュー。
「広島の被爆者は日本の国家責任を追及し、米国に原爆投下を謝罪させるべきだ」と訴えた。
夜遅く、金さんの息子さんの朝鮮料理店「スラ」での夕食の場に、ジャーナリストの宮崎園子・元朝日新聞記者が駆け付けてくれた。
宮崎さんらは、新刊本『「平和都市」ヒロシマのまがりかど』(西日本出版社)を出したばかりだ。「広島で広島市を批判すると排除される」と話した。
https://www.asahi.com/articles/ASSD52210SD5PITB00HM.html
取材の2日間、核兵器廃絶には、米国の原爆投下を国際法違反として、米国に認めさせることが今後の課題と認識した。
被団協代表団が9日ノルウェーに到着した。日本時間の10日午後9時から行われる授賞式には30人が出席し、3人の代表委員が登壇してメダルや賞状を受け取ったあと、田中煕巳さんが演説をする。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241209/k10014662141000.html
広島、長崎の被爆者の中には朝鮮人も多数いた。しかし、金会長はオスロに招かれず、被団協が募金で4000万円を集めオスロ訪問団を組んだが、金氏に声はかからなかった。
朝鮮に住む被爆者は忘れられたまま、授賞式が行われる。
たんぽぽ舎です。【TMM:No5120】2024年12月10日(火)転載・転送歓迎
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