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もの言える自由裁判 東京高裁が憲法判断避け棄却

2009年03月04日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ◆ もの言える自由裁判 東京高裁が憲法判断避け棄却
永野厚男・教育ライター

 土曜日(本人は勤務日外)に行なわれた前任校の卒業式で来賓紹介の際、「おめでとうございます。色々な強制のもとであっても、自分で判断し、行動できる力を磨いていって下さい」祝辞を述べたことで、都教育委員会の指示下、二〇〇五年七月、校長に“指導処分”された都立高校の教諭が、精神的苦痛への損害賠償を請求した裁判(もの言える自由裁判)で、東京高裁(柳田幸三裁判長)は一八日、教諭の控訴を棄却した。
 判決文は地裁判決を踏襲、教諭の主張を(1)自由な校風で知られた前任校の卒業式での祝辞としてふさわしい(2)憲法の保障する思想・良心・表現の自由等を制約するのに必要な「高度の必要性と合理的な理由(重大な害悪の発生)」がない(3)勤務日外の私的発言を制約する法的根拠がない、などと整理・要約。
 その上で「明確な法的根拠がなく、重大な支障が生じた場合でなくても、表現の自由を制約できないものではない」「以前勤務した学校の式次中に現職教員の立場で発言したから(勤務外でも)校長の監督権限が及ぶ」などとして、教諭の主張を退けた。
 判決後の報告集会で、弁護団は「本件"指導処分"は、教諭の表現の自由を侵害する。にもかかわらず判決は、憲法判断に入らず、表現の自由への制約を認めてしまっており、問題だ」と指摘した。


 一八日は10・23通達(〇三年)後の〇五年春の卒業・入学式等の“君が代”時、不起立等で都教委に懲戒処分された、都立高校教諭六六人が不当処分撤回を求めている二次訴訟の第四回弁論で、野田正彰・関西学院大教授の証人尋問も行なわれた。
 精神科医である野田教授は、一次訴訟(〇四年の被処分教員中の一七三人が提訴)の原告も含めアンケートをとり、十数人から詳細に聞き取り調査したのを基に、「処分前提の通達は問答無用で、教員は無視できないため、恐怖の圧迫感、抑圧感を募らせ、命と同じくらい大切な職業倫理を奪っている。一過性のストレスではなく、“君が代”症候群といえる」と証言した。

 翌一九日には、日教組に属さない独立教組・アイム’89の小中の不起立教員二人が起こした裁判の判決が、東京地裁で出た。渡邉弘裁判長は「棄却する」と述べ、数秒で退廷。傍聴席から批判の声が湧き起こった。判決文は(1)“君が代”斉唱は全国のほとんどの学校が実施しており、起立は通常想定される行為だから特定の思想の強制ではない(2)職務命令も通達も合理性があり、教育公務員は「全体の奉仕者」だから不起立は信用失墜行為だ――などと、〇七年のピアノ裁判最高裁判決をなぞっただけのもの。
 原告教員は閉廷後、「始めに結論ありきで、怒りがこみ上げてくる。これからも闘う」と、決意を語った。
『週刊金曜日』(2009/2/27 740号【金曜アンテナ】)
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/antenna/antenna_kiji.php?no=520
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