▼ 食物繊維と発酵食品が有効
セシウム排出促進と免疫力強化を
昨年の福島第一原発の事故により日本国土および周辺の大気、海洋は放射能により大きく汚染された。この災厄を拡大にしないための脱原発運動の強化はもちろんだが、人類と共存し得ない放射能は将来にわたって大きな不安を人類にもたらし、低線量被曝を余儀なくされる時代を生きるには何が重要か、埼玉大学講師の吉沢弘志さんに明らかにしてもらった。
▼ チェルノブイリとの違い
操作不能は今も続いている
2011年東日本大震災とそれにともなう東京電力福島第一原子力発電所の大事故は、東電や政府、そして御用学者たちによる「チェルノブイリの~分の一」という過小評価とは裏腹に、チェルノブイリ事故を上回る人類の核開発史上最悪のものとなりつつある。
まず何よりもチェルノブイリ事故とは格段に違う人口密集地への放射能拡散・汚染が起こってしまったことだ。
そして、昨年末の「収束宣言」が茶番でしかなかったことをほとんどの国民が知っているように、福島第一の1~4号機のコントロール不能状態は今も続いている。
海洋の汚染もいつ終わるか見通しもつかず、魚介類を大量に食べる日本人にとっては、農産物と海産物を通じた長期にわたる内部被曝の脅威に立ち向かっていかなければならない。
▼ 被曝の健康への影響は無視できない
被曝による健康への影響は幼い世代ほど深刻になる。しかし、免疫力が確実に低下していく中高年層にとっても影響は決して無視できない。日本人誰もが内部被曝に対して十分な対処を心がけるべきだと考える。
放射線の生物への悪影響は、数eVの原子・電子の結合エネルギーを遙かに上回る放射線のエネルギー(電離エネルギー)が、その原子・電子レベルの結合を破壊してしまうことによる。
放射線が細胞膜や細胞核の中にあるDNAを破壊するとともに、細胞内に豊富にある水分子を破壊して連鎖反応的にフリーラジカル(活性酸素)を発生させ、そのフリーラジカルが細胞膜やDNAを破壊してしまうというメカニズムが連続して進行していく。
長期低線量被曝という現状では、後者の影響の方が遙かに大きいとされている。
▼ 自然放射能とは比較できない
もともと地球上には宇宙由来、地球を構成している物質由来の放射線がある。体内にはカリウム40が成人で常時平均4000ベクレル程度存在している。
こうした「自然放射線」による被曝から逃れることはできないが、人類も含めたすべての地球上の生物は、生命誕生の時点から自然放射線による被曝に対応できるように修復・復元のメカニズムを備えるように進化して現在に至っているのである。そこに核実験による放射能、チェルノブイリ事故による放射能、そして今回の福島事故に由来する放射能による被曝が上積みされた、と考えなければならない。
食品中のセシウムの量を、前述のカリウム40と比べて「大したことはない」とするのは、御用学者によるごまかしにすぎない。ただでさえ現代の日本に暮らしている私たちは、電磁波という電離工ネルギーに常時さらされているし、食品添加物をはじめとして大量の化学物質にもさらされている。ストレスの多い現代の生活は、細胞レベルでは常にフリーラジカルの過剰発生を引き起こしていると考えてよい。
このような複合的な悪影響に一人一人それぞれ固有の反応が生じる。一概に「~ミリシーベルトまでは大丈夫」などとするのは科学でも何でもない。
▼ 被曝から身を守るために
被曝は可能な限り避けるべき
まず何よりも、被曝を可能な限り避ける、少なくする努力が必要だ。とりわけ幼い、若い世代、妊娠中の女性には最大限の配慮を払うべきだ。
しかし、東日本に暮らす私たちは日々何らかのレベルでの被曝は避けられないのが現状だろう。一番影響の大きいセシウムに関しては、毎日数ベクレル単位での摂取でも、体内さらに臓器ごとへの集中した蓄積が確認されている。蓄積したセシウムはその臓器の細胞をβ線とγ線で集中的に被曝させるのである。
避けられない被曝に対しては、さまざまな専門機関によって効果が確認されているアップルペクチンによるセシウムの排出の促進が一定の効果を生むはずだ。それとともに細胞レベルでの修復と復元の力と免疫力の強化で対応していかなければならない。
▼ 食物療法で対処を
傷ついたDNAの修復。復元は酵素の働きによるが、酵素の働きの強化には特定のミネラルが不可欠だ。とくに「亜鉛」の働きが有効であることは動物実験で証明されている。
亜鉛が豊富な食品としては豆類と海藻類が挙げられる。豆類にはフィトケミカルで重要なイソフラボンが豊富で、その効果も期待できる。
一方、被曝に対する効果という意味で注目される「バナデート(バナジウム)」は海藻類に豊富に含まれる。
免疫力強化に不可欠な腸内環境の健全化には、食物繊維と発酵食品の常食が有効となる。
そう考えれば、穀物に野菜、海藻類と大豆発酵食品(味噌、醤油、納豆)にぬか漬けといった日本の旧来からの食生活が、長期低線量被曝にきわめて有効であることがわかる。
もちろん日々の生活における被曝への対抗も大事だが、これ以上被曝を増やさない、将来の世代に負の遺産を残さない社会の実現もともに進めていかなければならない。
核エネルギーに依存しない社会を目指す私たちの運動は、7月16日の17万人集会と毎週金曜日の官邸前行動で大きな歩みを踏み出そうとしている。
※よしざわ・ひろし
埼玉大学講師、市民ネットワーク千葉県政策調査室。10代半ばより反戦・平和、人権、環境の問題に関わり続ける。1990年にチェルノブイリ事故による被災児童の救援のためのNGOを設立。チェルノブイリ汚染地域への訪問を繰り返し行い、現地やヨーロッパの専門家と市民運動との意見交換を重ね、医療援助、非汚染食糧の供給、被災児童の保養プログラム等様々な救援プロジェクトを行ってきた。
『週刊新社会』(2012/8/7)
セシウム排出促進と免疫力強化を
埼玉大学講師 吉沢弘志
昨年の福島第一原発の事故により日本国土および周辺の大気、海洋は放射能により大きく汚染された。この災厄を拡大にしないための脱原発運動の強化はもちろんだが、人類と共存し得ない放射能は将来にわたって大きな不安を人類にもたらし、低線量被曝を余儀なくされる時代を生きるには何が重要か、埼玉大学講師の吉沢弘志さんに明らかにしてもらった。
▼ チェルノブイリとの違い
操作不能は今も続いている
2011年東日本大震災とそれにともなう東京電力福島第一原子力発電所の大事故は、東電や政府、そして御用学者たちによる「チェルノブイリの~分の一」という過小評価とは裏腹に、チェルノブイリ事故を上回る人類の核開発史上最悪のものとなりつつある。
まず何よりもチェルノブイリ事故とは格段に違う人口密集地への放射能拡散・汚染が起こってしまったことだ。
そして、昨年末の「収束宣言」が茶番でしかなかったことをほとんどの国民が知っているように、福島第一の1~4号機のコントロール不能状態は今も続いている。
海洋の汚染もいつ終わるか見通しもつかず、魚介類を大量に食べる日本人にとっては、農産物と海産物を通じた長期にわたる内部被曝の脅威に立ち向かっていかなければならない。
▼ 被曝の健康への影響は無視できない
被曝による健康への影響は幼い世代ほど深刻になる。しかし、免疫力が確実に低下していく中高年層にとっても影響は決して無視できない。日本人誰もが内部被曝に対して十分な対処を心がけるべきだと考える。
放射線の生物への悪影響は、数eVの原子・電子の結合エネルギーを遙かに上回る放射線のエネルギー(電離エネルギー)が、その原子・電子レベルの結合を破壊してしまうことによる。
放射線が細胞膜や細胞核の中にあるDNAを破壊するとともに、細胞内に豊富にある水分子を破壊して連鎖反応的にフリーラジカル(活性酸素)を発生させ、そのフリーラジカルが細胞膜やDNAを破壊してしまうというメカニズムが連続して進行していく。
長期低線量被曝という現状では、後者の影響の方が遙かに大きいとされている。
▼ 自然放射能とは比較できない
もともと地球上には宇宙由来、地球を構成している物質由来の放射線がある。体内にはカリウム40が成人で常時平均4000ベクレル程度存在している。
こうした「自然放射線」による被曝から逃れることはできないが、人類も含めたすべての地球上の生物は、生命誕生の時点から自然放射線による被曝に対応できるように修復・復元のメカニズムを備えるように進化して現在に至っているのである。そこに核実験による放射能、チェルノブイリ事故による放射能、そして今回の福島事故に由来する放射能による被曝が上積みされた、と考えなければならない。
食品中のセシウムの量を、前述のカリウム40と比べて「大したことはない」とするのは、御用学者によるごまかしにすぎない。ただでさえ現代の日本に暮らしている私たちは、電磁波という電離工ネルギーに常時さらされているし、食品添加物をはじめとして大量の化学物質にもさらされている。ストレスの多い現代の生活は、細胞レベルでは常にフリーラジカルの過剰発生を引き起こしていると考えてよい。
このような複合的な悪影響に一人一人それぞれ固有の反応が生じる。一概に「~ミリシーベルトまでは大丈夫」などとするのは科学でも何でもない。
▼ 被曝から身を守るために
被曝は可能な限り避けるべき
まず何よりも、被曝を可能な限り避ける、少なくする努力が必要だ。とりわけ幼い、若い世代、妊娠中の女性には最大限の配慮を払うべきだ。
しかし、東日本に暮らす私たちは日々何らかのレベルでの被曝は避けられないのが現状だろう。一番影響の大きいセシウムに関しては、毎日数ベクレル単位での摂取でも、体内さらに臓器ごとへの集中した蓄積が確認されている。蓄積したセシウムはその臓器の細胞をβ線とγ線で集中的に被曝させるのである。
避けられない被曝に対しては、さまざまな専門機関によって効果が確認されているアップルペクチンによるセシウムの排出の促進が一定の効果を生むはずだ。それとともに細胞レベルでの修復と復元の力と免疫力の強化で対応していかなければならない。
▼ 食物療法で対処を
傷ついたDNAの修復。復元は酵素の働きによるが、酵素の働きの強化には特定のミネラルが不可欠だ。とくに「亜鉛」の働きが有効であることは動物実験で証明されている。
亜鉛が豊富な食品としては豆類と海藻類が挙げられる。豆類にはフィトケミカルで重要なイソフラボンが豊富で、その効果も期待できる。
一方、被曝に対する効果という意味で注目される「バナデート(バナジウム)」は海藻類に豊富に含まれる。
免疫力強化に不可欠な腸内環境の健全化には、食物繊維と発酵食品の常食が有効となる。
そう考えれば、穀物に野菜、海藻類と大豆発酵食品(味噌、醤油、納豆)にぬか漬けといった日本の旧来からの食生活が、長期低線量被曝にきわめて有効であることがわかる。
もちろん日々の生活における被曝への対抗も大事だが、これ以上被曝を増やさない、将来の世代に負の遺産を残さない社会の実現もともに進めていかなければならない。
核エネルギーに依存しない社会を目指す私たちの運動は、7月16日の17万人集会と毎週金曜日の官邸前行動で大きな歩みを踏み出そうとしている。
※よしざわ・ひろし
埼玉大学講師、市民ネットワーク千葉県政策調査室。10代半ばより反戦・平和、人権、環境の問題に関わり続ける。1990年にチェルノブイリ事故による被災児童の救援のためのNGOを設立。チェルノブイリ汚染地域への訪問を繰り返し行い、現地やヨーロッパの専門家と市民運動との意見交換を重ね、医療援助、非汚染食糧の供給、被災児童の保養プログラム等様々な救援プロジェクトを行ってきた。
『週刊新社会』(2012/8/7)
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