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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子の都教委傍聴記(2/12)

2016年02月15日 | 暴走する都教委
 ◆ 定時制高校の存続を求める請願を不採択
 議案は
  ①「都立高校改革推進計画・新実施計画」の策定について
  ②請願に対する回答について

  ③「東京都発達障害教育推進計画」の策定について
 報告が
  ④学校設定教科「人間と社会」の設置及び使用教科書について
  ⑤「不登校・中途退学対策検討委員会報告書」について
  ⑥「東京都教育ビジョン(第3次)一部改訂(案)」の骨子について他。
 傍聴席20のところ、請願を出していた人たちが傍聴に来られたので、傍聴希望者は35名。モニターさえ用意すれば傍聴から外れた15人も他の部屋で聴くことができるのに、その要求を都教委は無視した。大杉教育委員の姿はなかった。
 ①「都立高校改革推進計画・新実施計画」の策定について
 ②請願に対する回答について


 「都立高校改革推進計画・新実施計画」の策定については、今年度までの取り組みと前回までの定例会で議題になった新たな計画を加え、2016年度から3年間の「計画」(案)――教育内容が52項目、学校設置・課程改善等が17項目、教育諸条件が32項目の取り組み――が分厚い冊子で提案された。
 新たな取り組みとしていくつか挙げれば、教育内容では、
  ア.基礎学力の定着が十分でない生徒に対して、放課後や休業日等に外部人材を活用して学習支援を行う「校内寺子屋」を10校に設置する
  イ.ICT(情報通信技術)パイロット校に光丘高校、三鷹中等教育学校を指定し、タブレットPCを使って授業改善を図り、生徒の主体的で能動的な学習により学力向上を目指す
  ウ.「理数アカデミー」(大学、研究機関と連携して最先端の実験・講義を受ける)の取り組みを富士高校・附属中学校で行う
  エ.医学部進学を希望する生徒を集めて「チーム」を結成し3年間一貫した育成プログラムを実施するのは、戸山高校
  オ.新教科「人間と社会」の設置
  カ.部活動指導の民間委託モデル校1校を指定
  キ.進学指導重点校や中高一貫教育校等の中から、英語教育推進校を40校指定
  ク.JET(語学指導等を行う外国青年招致事業)青年等の活用によって、日本の伝統・文化を理解させ、日本人としての誇りを持たせる事業に50校を指定
  ケ.オリンピック・パラリンピック教育の推進
  コ・発達障害教育環境の整備
  サ.主権者意識の醸成
  シ.復興ボランティア体験や交流活動を行う「合同防災キャンプ」の実施等の防災教育の更なる充実
   等々。

 学校設置・課程改善等では、
  ス.新国際高校の設置を検討(「日本人としての自覚・誇りを備え、世界に通用する人材の育成」を謳う)
  セ.白鴎高校・附属中学校において、日本人としてのアイデンティティの育成や英語教育に重点を置く(2018年度実施)
  ソ.小中高一貫教育校を立川国際中等学校で2022年度開校に向け準備
  タ.工業高校等専門高校の改編
  チ.チャレンジスクールの新設・規模拡大
  ツ.昼夜間定時制高校の規模拡大
  テ.夜間定時制課程(定時制高校)の一部閉課程
  ト.島外生徒の受け入れ体制の整備等。教育諸条件では、組織的な学校経営、教員の資質・能力の向上、研修ほか。
 これまでも指摘してきたところだが、競争をあおり、一部エリート育成には金をかけるが、ノンエリートには金をかけず、さらには切り捨て、そして、「日本人としての誇り」「日本の伝統・文化」を随所に登場させる「新実地計画」だ。
 復興ボランティア、オリンピックボランティアは、戦前戦中の勤労奉仕に他ならない。
 テ.夜間定時制課程(定時制高校)の一部閉課程(対象は立川高校、小山台高校、雪谷高校、江北高校)については、存続を求める請願が9件出されていて、議案となったが、事務方の「回答」に教育委員全員が同意して、不採択となった。
 「回答」は、定時制を希望する生徒は減り、昨年度の入学者選抜応募倍率はわずか0,42倍。夜間定時制高校の生徒の中には、昼夜間定時制高校やチャレンジスクールを希望していたものの、合格できなかったという生徒も多いのだから、昼夜間定時制高校とチャレンジスクールの夜間部の規模拡大やチャレンジスクールの新設を行う
 立川高校の閉課程(3クラス90人)に当たっては、その3クラス分を、昼夜間定時制高校である砂川高校の夜間部の学級増と立川地区チャレンジスクール(仮称)の新設により確保する。
 また、夜間定時制高校を希望する生徒については、福生高校、町田高校、神代高校、青梅総合高校、五日市高校併合科などの周辺の夜間定時制高校において受け入れていく。他3校の閉課程についても同様に対応する。したがって、4校すべて閉課程にする、というもの。
 対する教育委員の発言は、「マクロでは合理的、ミクロでは通えなくなるなどの問題が出てくる。当事者・受益者の相談窓口を設ける。それを発信することも必要」(遠藤教育委員)、「定時制(を閉課程にするか存続させるかについては)、今はこれ(都教委案)が最善と思う。きめ細かい手立てをしていってほしい」(山口教育委員)。
 どちらも閉課程に同意する発言であって、定時制を存続させることに賛成する発言は誰からもなかった。
 「新実施計画」には、「全ての生徒に適切な学びを提供する」と謳いながら、通えなくなる生徒がいても仕方がないということか。
 生徒の年齢に幅がある定時制高校だから通うことができた、という年齢のいった人やいろいろな境遇の人がいたから、学齢期を過ぎても適応できたという人たちに、昼夜間定時制高校やチャレンジスクールに行けというのか。昼夜間定時制高校やチャレンジスクールで代替できないことは明らかではないか。
 少数の生徒を切り捨てることに痛みは感じない計画に、「これが最善」と言い放ち、同意する教育委員たち。意見公募に対して寄せられた177件の意見や2万筆以上の署名、9件の請願に、全く耳を貸さなかった。
 全体を通しての教育委員の発言は、「5年、10年先を考えれば、改革の方向性を全面的に支持する」(遠藤教育委員)に集約される。
 中井教育長は、ソ.「小中高一貫教育校の設置」に対して東京私立中学高等学校協会から反対する意見が提出されていることについて、それには向き合わずに、「私立と公立はこれまでも協力し、切磋琢磨すべきところはしてきた。これからも協力し、切磋琢磨していきたい」と静かに、だが、居丈高な言辞を吐いた。
 ④学校設定教科「人間と社会」の設置及び使用教科書について

 2007年度から実施してきた教科「奉仕」を発展的に統合し、人間の在り方生き方に関する新教科「人間と社会」を2016年度から必修にする。
 使用する教科書は、都教委作成で151円。国定教科書というものだ。年間35時間(週当たり1時間)を実施。この教科書を使って16時間、体験活動を19時間やれということである。都教委から35時間の振り方まで指定され、教員は都教委の手の中で踊らされるようだ。
 教科書は「人間関係を築く」「学ぶことの意義」「働くことの意義」「役割と責任を考える」「マナーと社会のルールについて考える」「地域社会を築く」「グローバル化が進展する社会に生きる」等の18章からなり、
 例えば、「マナーと社会のルールについて考える」では「社会の秩序と規律を守ることによって個人の自由が保障される」、「地域社会を築く」では「『町田クリーンアップ作戦』には、成瀬高校の2年生260名が参加」などと、刷り込みを忘れない。
 教育委員の発言は、「教科書は多岐にわたる項目で、いい内容だ。先生は社会を経験していないから、地域や企業と連携をとっていくとよい」(山口教育委員)、「人間力を育てる大事な教科だ。世の中で活躍する人をゲストに招いたり、オリンピック教育と関連させたりするとよい」(宮崎教育委員)と、これも絶賛。
 事務方の提案に対し、教育委員が批判的視点ももって意見しないのであれば、教育委員の仕事を果たしたとは言えないと思うのだが。
『レイバーネット日本』(2016-02-14)
http://www.labornetjp.org/news/2016/0212nezu
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