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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ブラック企業ワタミの渡邉氏は議員の職も辞するべき

2015年12月27日 | 格差社会
 ◆ 社員を死に追いやったワタミ社長を
   政治家に仕立てた安倍官邸の責任


 先日、過労のため自ら命を断った女性社員の遺族と和解したワタミ。自身の責任を認めた創業者の渡邉美樹氏ですが、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では「渡邉氏は議員の職も辞するべき」とし、彼を政治家にした安倍官邸の責任についても厳しく追求しています。
 ◆ ワタミ創業者を政治家にした安倍官邸の責任
 「労務管理はできていた」「一方的にワタミグループをブラック企業と呼ぶことは、到底、受け入れられない」。
 そう言い張っていたワタミの創業者、渡邉美樹参議院議員が、過労で心身ともに追い込まれ自ら命を絶った女子社員について、ついに自らの責任を認めた。1億3,000万円の損害賠償金を会社が支払い、再発防止策を講じることで、遺族と和解した。
 いまになって「お墓まいりをさせてほしい」と言う渡邉に対し、「この先の彼の生き方を見たい。いまは絶対に来てほしくない」と両親は拒絶した。これまで、まるで事件をでっち上げられたかのごとき態度をとってきた渡邉の、謝罪の気持ちが本物であるかどうか見極めるまで、申し出を受け入れがたいという両親の思い。痛いほどよく分かる。
 そもそも和解すれば問題が解決したと思っているなら大間違いだ。渡邉はいやしくも国会議員である。公人として社会問題に立ち向かわねばならない立場だ。彼に自らを律する能力があるのなら、和解と同時に、議員の職も辞するべきではないか
 もともと政界進出を狙っていた渡邉に、自民党からの出馬を要請したのは、安倍首相だった。2013年7月の参院選を目前にした同年3月、菅官房長官から電話で打診があり、その後、安倍首相、菅官房長官との会食の席で、正式に話が決まった。
 自民党は同年4月、ブラック企業対策を発表したが、渡邉の出馬が決まったのを受けて、この対策を参院選公約から削除した経緯がある。それゆえ、すでにブラック企業として名前があがっていたワタミの創業者を擁立した自民党の責任も重大であり、あらためてブラック企業対策を練り直すとともに、すみやかに渡邉の議員辞職を勧告すべきであろう。
 渡邉の言行に偽善的なところがあるのは、テレビで見る印象だけでなく、知る人ぞ知る事実のようである。安保法制は違憲だと国会で指摘した憲法学者の1人、小林節慶応大名誉教授も彼とかかわり、あきれ果てて離れていった1人だ。
 衆院議員をつとめたこともある漢学者、棚橋一郎が1889年に創設した私立学校「郁文館」
 渡邉は経営難に陥った同校を2003年3月、買収し、理事長の座に就いた。渡邉は学校改革をめざし、学校法人の名称を「私立郁文館」から「郁文館夢学園」に変えた。彼は「夢」という言葉が大好きなのだ。そのとき、慶応大学教授と兼職で校長(非常勤)になったのが小林だった。
 「週刊プレイボーイ」2013年9月9日号に、郁文館に関する小林へのインタビュー記事が掲載された。小林は校長になったいきさつをこう語る。
 「もとはと言えば、『ワタミのオーナー社長が学校を作りたいと言っている』と、弁護士をしている私の教え子が相談してきたところから、話は始まっているんです。…私がワタミの顧問弁護士になり、経営難に陥っている学校を政治家から教えてもらい、買い取ることにした。それが郁文館です」
 郁文館の創立者の先祖と小林教授の先祖が、同じ大名の家老どうしだったという奇縁も、小林を動かしたようだ。
「渡邉は『先生、2人で頑張って、学校改革の立て直しの成功例を作って、全国に渡邉学園グループを作りましょうね』なんて言う。私は、郁文館の改革だけでも一生かかるんじゃないのと思ったんですが」
 小林はしだいに、渡邉の語る学校改革を疑うようになっていく。

 郁文館教育の特色のひとつ「夢合宿」。郁文館が経営難に陥る元凶となったホテルを合宿施設として、10泊11日の合宿を毎年おこなうものだが、小林はこの行事についての渡邉の発言に唖然とした。
 「私の目の前で常務理事に『これ、何泊したら採算取れる?』と言う。聞いてびっくりした。渡邉に『教育』という観点からの配慮は全然ない
 ワタミが手掛ける有機野菜農場に校外学習で遠足に行くことになったときのこと。
 「渡邉が有機野菜を切り分けた袋を生徒に売る用意をしちゃっているわけですよ。『子供たちにお土産の野菜を押し売りするな』って言ったら渡邉は『用意しちゃったんですよ』って(笑)。彼は教育者ではなく、経営者として『採算を度外視しない』ことばかりやっている」
 小林は校長就任から2年ほど後、郁文館を去った。「アイツはいかがわしい野郎だけど、それに早く気づかず、付き合っちゃった自分がすごく恥ずかしいんだ」。
 およそ教育者とはかけ離れた渡邉の発想に、小林は嫌気がさしたらしい。

 そういえば、渡邉の政治家としてのスローガンは「経営力で日本を取り戻す」「教育力を高め日本を取り戻す」だ。
 「日本を取り戻す」の本家、安倍首相もそうだが、政治を、教育を、勘違いしているのではないか。
 かつて彼は「学校改革で成功して文部科学大臣になって、そのあと総理大臣にもなりたい」と知人に語ったことがあるという。教育さえも、彼にとっては野心実現の一手段にすぎないようだ。
 そもそも、彼が自信を持つ経営力と、新入社員を死に追いやった社員教育の考え方とは、密接不可分の関係にあるのではないだろうか。
 森美菜さんは08年4月、ワタミに入社し、横須賀市内の店舗に配属されたが、わずか2か月後に飛び降り自殺した。残業が月100時間を超える過重な勤務で疲労が蓄積し、うつ状態に陥ったとみられる。
「体が痛いです 体が辛いです 気持ちが沈みます 早く動けません どうか助けてください 誰か助けてください」。手帳に遺された悲痛な心の叫びだ。
 連日午前3時ごろまでの深夜勤務。電車通勤で、終電以降もタクシーは使えないため、始発の出る午前5時ごろまで店内で待機した。
 研修では、渡邉の言葉をまとめた理念集を丸暗記する。満点をとるまでテストが繰り返された。
 休日でさえボランティア名目の研修。渡邉の著作を読んで感想を書かされた。

 森さんの死は労災認定され、労働基準監督署は
  「就業規則を労基署に届けていない」
  「法定の休憩時間を与えていない」
  「残業代を支払っていない」
  「1日8時間を超えて働かせるときに必要な協定(三六協定)が結ばれていない」
 などの是正勧告を2008年4月から13年2月まで24件も出している。
 上場企業が労務管理の基本ルールすら守ろうとしない。その創業者、渡邉美樹が2006年、安倍内閣の教育再生会議の委員となったのである。
 同年10月、第1回目の会議で、渡邉は次のような発言をしている。

 「私はこの3年半で1,500人の生徒のいる、118年の歴史のある学校を立て直した教育者としての経験、それから、就職活動におけるセミナーを開催し毎年1万人の大学の卒業生と触れ合っている経験からして、この日本の教育は崩壊したと思っております。その中で、どうすればいいのか。英語が、国語がという問題ではなく、…根本的なパラダイムの転換みたいなものが必要だと思っております」
 日本の教育は崩壊しているから自分が根本的に立て直すと言わんばかりの夜郎自大な態度である。その渡邉が、2012年、森さんの労災認定を受けてこんなツイートをした。
 「…彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。労務管理できていなかったとの認識は、ありません。ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」
 渡邉の言う「幸せ」とはどのようなことなのだろうか。社員に配布している渡邉の「理念集」には、最近の経営悪化にともなって撤回された有名な言葉があった。「24時間、死ぬまで働け」
 2006年、テレビ東京の「日経スペシャル カンブリア宮殿」という番組で村上龍と対談したさい、「それは無理ですって最近の若い人は言うけど、鼻血を出そうがブッ倒れようが、1週間やらせれば、それは無理じゃなくなるんです」と発言し、村上を絶句させた。
 たぶん渡邉の思考法には、誰もが自分と同じような心身の力を持っているという奇妙な前提があるのだろう。それにしても、寝食を忘れて働けば、誰もが自分と同じように成功者になれると本気で考えていたわけではあるまい。
 人それぞれに幸せの基準は異なっている。その差を認めず、同一色に塗りつぶしていくのが全社一丸、社業発展への道と考えているのかもしれないが、往々にしてそういうタイプの経営者は一種の教祖のようになりたがる。
 ユーチューブで「watanabemikioffice」というアカウントを検索すると、渡邉の動向を記録した多くの動画が出てくる。タレントのプロモーションビデオのようなものらしい。このうちの1つに「7泊8日ありがとうツアー」というのがある。まるで、テレビのドキュメンタリー番組のような仕立てだ。
 笑顔をたたえて1人列車に乗る渡邉。プロらしき男性によるナレーション。
 「渡邉は全国の社員に感謝を伝える旅に出た。社内にはなぜか渡邉ファンが多い。埼玉の食材加工センターで渡邉を出迎えたのはパートタイマーの主婦たち。もちろん、渡邉ファン…それにしてもこの中高年からの人気はただごとではない」
 店の女子社員は喜びの涙を流して初対面の渡邉と握手し、数十人のパート主婦は渡邉の来訪に、歓喜の表情で拍手、先を争って渡邉が差し出す手書きメッセージ入りの名刺を受けとる…。
 どこかの国の独裁者も顔負けの、自己礼賛ビデオ。どんなにカリスマ性があっても、画面のなかの全ての人たちが同じような笑顔を浮かべ、同じように行動することなどありえない。気味の悪い作り物というほかない。
 ワタミは、自業自得とはいえブラック企業批判によるイメージダウンで業績が急速に落ち込み、存亡の危機にある。おせっかいなようだが、渡邉にとってはスター気取りを捨てるいい機会なのではないか。
 教育や政治に関してもそうだが、なにより1人1人の人間に対して、謙虚にならなければならないはずだ。
 もっとも、安倍晋三や渡邊美樹らにそれを望むのが間違いかもしれない。彼らの「取り戻したい日本」というのは、国家や会社にひたすら奉仕し、権力や権威に唯々諾々と服従する人々の社会であろうから。
 著者/新 恭(あらた きょう)
 記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
『国家権力&メディア一刀両断』(2015年12月25日) より一部抜粋
http://www.mag2.com/p/news/134950?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_1225
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http://www.mag2.com/m/0001093681.html
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