▼ 原子力協定が満期 (草の根ニュース)
ほとんど議論がなされないまま、1988年7月16日に発効した「日米原子力協力協定」が本年の7月に30年の満期を迎え、その半年前までに日米双方とも見直しの動きがなかったため、この1月16日に自動延長となった。
日本の原子力政策を抜本的に見直すための議論をする絶好の機会であったのだが、アメリカ側はトランプ政権の態勢が整わず、日本側はこれ幸いと沈黙を続けたので、何ら議論がないまま自動延長となったのである。
この日米原子力協力協定によって、日本はアメリカから使用済み核燃料の再処理に関する包括的事前同意が与えられ、特定施設における再処理によって取り出されたプルトニウムを保有することが認められた。
これは異例のことで、核拡散防止条約(NPT)に参加する核兵器非保有国で唯一日本のみに認められた特権である。
なぜアメリカが日本に格別の権利を与えたのかについて、日本は非核三原則を持つとか、日本の核開発は平和目的に限っているとかということになっているが、日本が原発に関してアメリカに従順な同盟国であり、日本にアメリカの核の傘の恩恵を認識させるために譲歩したのではないかと勘ぐっている。
いずれにせよ、その結果として、日本は国内の再処理施設や英仏に依頼していた再処理によってプルトニウムを約48トン(国内約10トン、英仏に約38トン)も蓄積することになった。原爆6000発分である。
ところが余剰プルトニウムの処分に関して、具体的な方針もないまま先送りし続けているのが日本の実情なのである。日本が辛うじて行っているプルトニウム消費は既存の原発のプルサーマル発電のみだが、原発1基当たり1年で0.4トン程度にすぎず焼け石に水である。
高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定でプルトニウムは完全に出番がなくなってしまったのだ。
累積するプルトニウムに対して、諸外国から核拡散や核テロリズムの危険性が指摘され、日本の核武装化の狙いが疑われる状況にある。
日本政府は「利用目的のないプルトニウムは持たない」と国際公約し、核兵器開発の意図はないと強調しているが、今のような無策な状況で国際社会に信用されるだろうか。
現実に核武装を主張する有力な政治家がおり、現政権も「現在の憲法の範囲内で核兵器の保有・使用は許される」と閣議決定しているのである。
この問題はまた、行き詰っている核燃料サイクル路線とも深くかかわっている。
青森県六ケ所村に建設されている再処理工場は98年に稼働予定があったのだが、昨年でなんと24回目の延期になった。現時点では2021年に稼働を予定しているが、総費用は当初の予定を大幅に上回って収束のめどが立っていない。
もし稼働すれば1年に8トンのプルトニウムが追加されることになり、矛盾が拡大するだけである。
▼ 先送りは無責任
この際、再処理工場をはじめとする核燃料サイクル路線を一切中止し、プルトニウムのこれ以上の累積を中止することである。
このような決定によって生じる軋礫を恐れて、ひたすら先送りしようというのが政府の考えのようだが、無責任極まると言わざるを得ない。
幸い日米原子力協定が満期を迎えることで、7月以降になると半年前に通告すれば協定を終了させることができるし、協定の改定交渉も可能になる。
これを日本の原子力政策を抜本的に変える好機として、国民的な議論を喚起すべきだろう。(草の根運動会員)
『沖縄・日本から米軍基地をなくす草の根運動~草の根ニュース』(2018年8月28日)
池内 了(総合研究大学院大学名誉教授・宇宙論)
ほとんど議論がなされないまま、1988年7月16日に発効した「日米原子力協力協定」が本年の7月に30年の満期を迎え、その半年前までに日米双方とも見直しの動きがなかったため、この1月16日に自動延長となった。
日本の原子力政策を抜本的に見直すための議論をする絶好の機会であったのだが、アメリカ側はトランプ政権の態勢が整わず、日本側はこれ幸いと沈黙を続けたので、何ら議論がないまま自動延長となったのである。
この日米原子力協力協定によって、日本はアメリカから使用済み核燃料の再処理に関する包括的事前同意が与えられ、特定施設における再処理によって取り出されたプルトニウムを保有することが認められた。
これは異例のことで、核拡散防止条約(NPT)に参加する核兵器非保有国で唯一日本のみに認められた特権である。
なぜアメリカが日本に格別の権利を与えたのかについて、日本は非核三原則を持つとか、日本の核開発は平和目的に限っているとかということになっているが、日本が原発に関してアメリカに従順な同盟国であり、日本にアメリカの核の傘の恩恵を認識させるために譲歩したのではないかと勘ぐっている。
いずれにせよ、その結果として、日本は国内の再処理施設や英仏に依頼していた再処理によってプルトニウムを約48トン(国内約10トン、英仏に約38トン)も蓄積することになった。原爆6000発分である。
ところが余剰プルトニウムの処分に関して、具体的な方針もないまま先送りし続けているのが日本の実情なのである。日本が辛うじて行っているプルトニウム消費は既存の原発のプルサーマル発電のみだが、原発1基当たり1年で0.4トン程度にすぎず焼け石に水である。
高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定でプルトニウムは完全に出番がなくなってしまったのだ。
累積するプルトニウムに対して、諸外国から核拡散や核テロリズムの危険性が指摘され、日本の核武装化の狙いが疑われる状況にある。
日本政府は「利用目的のないプルトニウムは持たない」と国際公約し、核兵器開発の意図はないと強調しているが、今のような無策な状況で国際社会に信用されるだろうか。
現実に核武装を主張する有力な政治家がおり、現政権も「現在の憲法の範囲内で核兵器の保有・使用は許される」と閣議決定しているのである。
この問題はまた、行き詰っている核燃料サイクル路線とも深くかかわっている。
青森県六ケ所村に建設されている再処理工場は98年に稼働予定があったのだが、昨年でなんと24回目の延期になった。現時点では2021年に稼働を予定しているが、総費用は当初の予定を大幅に上回って収束のめどが立っていない。
もし稼働すれば1年に8トンのプルトニウムが追加されることになり、矛盾が拡大するだけである。
▼ 先送りは無責任
この際、再処理工場をはじめとする核燃料サイクル路線を一切中止し、プルトニウムのこれ以上の累積を中止することである。
このような決定によって生じる軋礫を恐れて、ひたすら先送りしようというのが政府の考えのようだが、無責任極まると言わざるを得ない。
幸い日米原子力協定が満期を迎えることで、7月以降になると半年前に通告すれば協定を終了させることができるし、協定の改定交渉も可能になる。
これを日本の原子力政策を抜本的に変える好機として、国民的な議論を喚起すべきだろう。(草の根運動会員)
『沖縄・日本から米軍基地をなくす草の根運動~草の根ニュース』(2018年8月28日)
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