◆ ますますエリート育成に税金を注ぐ都教委
「等しく教育を受ける権利」を各教育委員はどう考えるか
前回4月24日の定例会では非公開議題に入学式「君が代」不起立処分案件が予測されたため、公開議題を終え、処分案件の非公開議題に移る時点で、傍聴者20人のうちの半数が退場しながら、「君が代」不起立処分の不当性について、ことばにした。各教育委員にしっかり考えてほしかったからである。
それに対し木村委員長は、議事妨害の現認確認を担当職員に指示し、担当職員は今日の傍聴受付時に2度目の現認をされた人に対し、「誓約書」に署名を強要した。
そして、今日も定例会の冒頭、木村委員長は「議事妨害に対しては厳しく対処する」と宣言。背面監視も続く。都教委を批判する者を敵対視する教育委員と事務方である。
今日の公開議案は①「進学重点校の指定について」と他1件、報告事項が3点(②「卒業式・入学式の実施状況について」 ③「グローバル人材の育成に向けた取組(高校)について」 ④「平成25年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握について」)。
毎回の定例会で、事務方の議案・報告も、それを検討する教育委員の発言・対応もエリート教育にしか関心がないのか、ノンエリートは自己責任でと考えているのかと思わざるを得ない。今日もしかり。
①「進学指導重点校の指定について」は、
青山高校を新たに進学重点校に指定したいという議案。進学重点校に指定されるには、「難関国立大学等現役合格者数15人」など3つの選定基準に達することが要件となる。2012年、8校のうち7校が基準に達して更新されたが、青山高校は基準に達しておらず、以降2年間の大学合格実績を見て判断することになっていた。
この春の実績は基準(難関大学現役合格数が17人)に達し、青山高校は3年間の更新が可能となり、進学指導重点校に指定することが承認された。進学重点校への予算配分は、他の高校に比べ、群を抜く。
③「グローバル人材の育成に向けた取組(高校)について」:
今年度3期生を出す「次世代リーダー育成道場」(都立高生徒、都立中及び都立中等教育学校生徒 100人×2を1年間海外に留学させることが主な役割。一人あたりの総費用300万円のうち、8割は公費負担)、来年度、国際高校に国際バカロレア(国際バカロレア機構が認定した学校で学び、統一試験に合格することで、国際的に認められる大学進学資格を取得できる)の教育プログラムを実施するコースを設置するなど、エリート育成に金を注ぎ込むのが、今の都教委の方針である。
「グローバル人材の育成に向けた取組(高校)について」は、「使える英語力」、「高校在学中の留学」と「海外大学進学」、日本人としての自覚や資質の涵養が課題であるとし、今年度の取り組みとして、次のア~キを上げる。
ア.外国人招致(現在5人を100人に)とネイティブ(1年次105時間すべての授業に)を入れた英語の授業の拡大
イ.英語科教員140名を英語圏の大学に派遣
ウ.英語教育重点校10校の指定
エ.次世代リーダー育成道場による留学支援の継続
オ.来年度中に国際高校において国際バカロレアの認定を目指し、施設整備、ネイティブの雇用等推進
カ.JICAの施設に高校生100人を派遣し、国際貢献のための体験研修(25人ずつ5泊6日)の実施
キ.日本の伝統・文化を学ぶ科目の設置(すでに39校が設置)
ウ.の英語教育重点校10校は、「海外研修に毎年40人以上(の生徒)が参加している」「次世代リーダー育成道場に2桁の応募がある」「外国語コースが設置されている」「留学生を受け入れている」などの「実績」から指定したという。
配布された資料には英語教育重点校の取り組みとして、「外国人の授業の実施(全学年)」「生徒の海外語学研修の実施」「留学生との交流」などが挙げられている。そうすると、すべての高校で「ネイティブを入れた英語の授業の拡大」をするのではなく、英語教育重点校で行う、あるいは、重点校に極端に厚いということか。
進学重点校の指定、次世代リーダー育成道場、国際バカロレア、そして英語教育重点校。これらが重複して特定の高校に集中する。不平等もいいところだ。
憲法26条「教育を受ける権利」は「すべて国民は、…その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する」と謳う。「その能力に応じて」と限定することによって、養護学校・特別支援学校をつくり、ノーマライゼーションへの道を阻んできたと思うのだが、都教委が今、ノンエリートには自衛隊駐屯地での宿泊訓練を、エリートには金をふんだんに使ってグローバル人材の育成をするのも、「その能力に応じて、等しく」と開き直るのだろうか。
② 卒業式・入学式の実施状況について」では、
「国旗掲揚」「国歌斉唱」「会場設営等」についての、全都の学校からの報告を一覧表(A3用紙10枚)にして提示し、「国旗掲揚、国歌斉唱、すべての学校で適正に行われた。職務命令違反が○名あった」というだけのものだった。
前回の定例会で「都民から寄せられた苦情や請願の件数、内容」の報告の中に、「君が代」不起立処分についての批判がかなりの数あったにもかかわらず、ここでもまったく、委員からの発言討論はなかった。
③ 「平成25年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握について」では、
「2013年度は2012年度に比べ、体罰が減った。体罰をした教職員110名のうち、複数回行った者が25人」などの報告。「体罰の程度が著しい事案」として「野球部の活動中に、宿題や教員に対する態度について1名の生徒を指導した際、同生徒に対して、足を蹴る、胸への張り手をする体罰を計20回程度行うとともに、右手で左側頭部を3回程度叩き、右胸両下腿打撲傷の傷害を負わせた」など24件が校名をあげて報告されている。
報告を受け、「体罰の認識が広まった。しかし、(体罰をした教員の)感情がコントロールできなかったですまされない事案がある。体罰は許されないが、教員からの聞き取りも必要ではないか」(竹花委員)との発言があったが、その真意がどこにあるのかがわからなかった。生徒に問題があるときには、教員の処分を軽減してもいいということなのか、と疑問に思った。
「君が代」不起立で停職通算22か月の処分を科された私に比べ、体罰に累積加重処分はなく、何度繰り返しても軽い処分である。
処分の軽重は、処分事案に対する都教委の認識を反映する。都教委をあげて体罰防止に取り組むというならば、傷害を負わせても、心に傷をつけても軽い処分で済ませることはしないはず、と思うのだが。
『レイバーネット日本』(2014-05-24)
http://www.labornetjp.org/news/2014/0522nezu
「等しく教育を受ける権利」を各教育委員はどう考えるか
前回4月24日の定例会では非公開議題に入学式「君が代」不起立処分案件が予測されたため、公開議題を終え、処分案件の非公開議題に移る時点で、傍聴者20人のうちの半数が退場しながら、「君が代」不起立処分の不当性について、ことばにした。各教育委員にしっかり考えてほしかったからである。
それに対し木村委員長は、議事妨害の現認確認を担当職員に指示し、担当職員は今日の傍聴受付時に2度目の現認をされた人に対し、「誓約書」に署名を強要した。
そして、今日も定例会の冒頭、木村委員長は「議事妨害に対しては厳しく対処する」と宣言。背面監視も続く。都教委を批判する者を敵対視する教育委員と事務方である。
今日の公開議案は①「進学重点校の指定について」と他1件、報告事項が3点(②「卒業式・入学式の実施状況について」 ③「グローバル人材の育成に向けた取組(高校)について」 ④「平成25年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握について」)。
毎回の定例会で、事務方の議案・報告も、それを検討する教育委員の発言・対応もエリート教育にしか関心がないのか、ノンエリートは自己責任でと考えているのかと思わざるを得ない。今日もしかり。
①「進学指導重点校の指定について」は、
青山高校を新たに進学重点校に指定したいという議案。進学重点校に指定されるには、「難関国立大学等現役合格者数15人」など3つの選定基準に達することが要件となる。2012年、8校のうち7校が基準に達して更新されたが、青山高校は基準に達しておらず、以降2年間の大学合格実績を見て判断することになっていた。
この春の実績は基準(難関大学現役合格数が17人)に達し、青山高校は3年間の更新が可能となり、進学指導重点校に指定することが承認された。進学重点校への予算配分は、他の高校に比べ、群を抜く。
③「グローバル人材の育成に向けた取組(高校)について」:
今年度3期生を出す「次世代リーダー育成道場」(都立高生徒、都立中及び都立中等教育学校生徒 100人×2を1年間海外に留学させることが主な役割。一人あたりの総費用300万円のうち、8割は公費負担)、来年度、国際高校に国際バカロレア(国際バカロレア機構が認定した学校で学び、統一試験に合格することで、国際的に認められる大学進学資格を取得できる)の教育プログラムを実施するコースを設置するなど、エリート育成に金を注ぎ込むのが、今の都教委の方針である。
「グローバル人材の育成に向けた取組(高校)について」は、「使える英語力」、「高校在学中の留学」と「海外大学進学」、日本人としての自覚や資質の涵養が課題であるとし、今年度の取り組みとして、次のア~キを上げる。
ア.外国人招致(現在5人を100人に)とネイティブ(1年次105時間すべての授業に)を入れた英語の授業の拡大
イ.英語科教員140名を英語圏の大学に派遣
ウ.英語教育重点校10校の指定
エ.次世代リーダー育成道場による留学支援の継続
オ.来年度中に国際高校において国際バカロレアの認定を目指し、施設整備、ネイティブの雇用等推進
カ.JICAの施設に高校生100人を派遣し、国際貢献のための体験研修(25人ずつ5泊6日)の実施
キ.日本の伝統・文化を学ぶ科目の設置(すでに39校が設置)
ウ.の英語教育重点校10校は、「海外研修に毎年40人以上(の生徒)が参加している」「次世代リーダー育成道場に2桁の応募がある」「外国語コースが設置されている」「留学生を受け入れている」などの「実績」から指定したという。
配布された資料には英語教育重点校の取り組みとして、「外国人の授業の実施(全学年)」「生徒の海外語学研修の実施」「留学生との交流」などが挙げられている。そうすると、すべての高校で「ネイティブを入れた英語の授業の拡大」をするのではなく、英語教育重点校で行う、あるいは、重点校に極端に厚いということか。
進学重点校の指定、次世代リーダー育成道場、国際バカロレア、そして英語教育重点校。これらが重複して特定の高校に集中する。不平等もいいところだ。
憲法26条「教育を受ける権利」は「すべて国民は、…その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する」と謳う。「その能力に応じて」と限定することによって、養護学校・特別支援学校をつくり、ノーマライゼーションへの道を阻んできたと思うのだが、都教委が今、ノンエリートには自衛隊駐屯地での宿泊訓練を、エリートには金をふんだんに使ってグローバル人材の育成をするのも、「その能力に応じて、等しく」と開き直るのだろうか。
② 卒業式・入学式の実施状況について」では、
「国旗掲揚」「国歌斉唱」「会場設営等」についての、全都の学校からの報告を一覧表(A3用紙10枚)にして提示し、「国旗掲揚、国歌斉唱、すべての学校で適正に行われた。職務命令違反が○名あった」というだけのものだった。
前回の定例会で「都民から寄せられた苦情や請願の件数、内容」の報告の中に、「君が代」不起立処分についての批判がかなりの数あったにもかかわらず、ここでもまったく、委員からの発言討論はなかった。
③ 「平成25年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握について」では、
「2013年度は2012年度に比べ、体罰が減った。体罰をした教職員110名のうち、複数回行った者が25人」などの報告。「体罰の程度が著しい事案」として「野球部の活動中に、宿題や教員に対する態度について1名の生徒を指導した際、同生徒に対して、足を蹴る、胸への張り手をする体罰を計20回程度行うとともに、右手で左側頭部を3回程度叩き、右胸両下腿打撲傷の傷害を負わせた」など24件が校名をあげて報告されている。
報告を受け、「体罰の認識が広まった。しかし、(体罰をした教員の)感情がコントロールできなかったですまされない事案がある。体罰は許されないが、教員からの聞き取りも必要ではないか」(竹花委員)との発言があったが、その真意がどこにあるのかがわからなかった。生徒に問題があるときには、教員の処分を軽減してもいいということなのか、と疑問に思った。
「君が代」不起立で停職通算22か月の処分を科された私に比べ、体罰に累積加重処分はなく、何度繰り返しても軽い処分である。
処分の軽重は、処分事案に対する都教委の認識を反映する。都教委をあげて体罰防止に取り組むというならば、傷害を負わせても、心に傷をつけても軽い処分で済ませることはしないはず、と思うのだが。
『レイバーネット日本』(2014-05-24)
http://www.labornetjp.org/news/2014/0522nezu
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