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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

8・20『日の丸・君が代』裁判全国原告団・学習交流集会から学ぶこと

2010年09月12日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ☆ 8・20『日の丸・君が代』裁判全国原告団・学習交流集会から学ぶこと
花輪紅一郎(応援する会事務局)

 猛暑の8月20日、朝から夕まで、お茶の水の総評会館で、東京六者の呼びかけによる表記集会が100名を超える参加で開かれた。5都道府県の原告・被告14人が報告し、それに対する質疑が行われ、藤田さんも「生徒が一番敏感に反応した板橋高校は最高の学校」とアピールを行った。
 以下、北海道、新潟、東京、神奈川、大阪の報告から見えてきたものを報告する。

「8・20集会」 《撮影:平田 泉》

1,全国状況の整理~「職務命令違反」の視点から
(1)「職務命令」を出すまでには他府県では様々なハードルがある。

 A,神奈川:未だ「職務命令」は出ていない。
 B,新潟:2005年教育長が交代して12月に「通知」が出されて、翌年から「職務命令」が出るようになった。そして「戒告」処分が。
 C,北海道:2009年に網走管内で初めて「職務命令」が出された。それまでは2006年の北海道人事委員会裁決が効いて発出の動きはなかったが、マニアックな校長が「裁決」を研究して手続き上問題なくやる方法を開発し、保守的な農村地帯で保護者からの要望に地教委が呼応する形で出された。そして「戒告」処分が。
 D,大阪:2010年高校では初めて1校だけ「職務命令」が出た。前年度不起立で「厳重注意処分」が出た東寝屋川高校限定で、事前の「意思確認」が3年担任9人に対して行われ、確認が取れなかったとして9人対象に「職務命令」が出された。そして「戒告」処分が。
 E,東京:全教職員に網をかける包括的画一的「職務命令」が出ているのは東京だけ。大阪や北海道が、地域・個人限定なのに対して、「10・23通達」がいかに大胆で強引なものかが浮き彫りになった。そして東京では大量処分が。
(2)職務命令がなければ懲戒処分はない~「不起立」ではなく「命令違反」が処分対象
 A,神奈川:未だ「職務命令」が出ていないので、「懲戒処分」もない。ただし、06年から県教委は「不起立者氏名報告」を求めている。
 B,新潟:2006年に、「戒告」4名・「文書訓告」30名。07年~08年にも不起立処分が出たが、09年以降はない。新高教は「立たず、歌わず」の方針を取り下げたが、人事委審理は組合として支援。
 C,北海道:2009年、2名の不起立者に対して、「懲罰委員会」の答申に基づいて9月に「文書訓告」。
 D,大阪:2010年、「職務命令」の出た9人のうち不起立だった4人に対し、「分限懲戒審査会」の答申に基づいて、「戒告」処分が出された。
 E,東京:他府県では処分を決める独立の審査委員会を形だけでも作っているが、東京は「処分量定」を機械的に当てはめて都教委が自前で処分を決めているのも特徴である。
2,全国の裁判状況
A,神奈川:二つの裁判が進行中。

①こころの自由裁判(最高裁係属中)
 東京の予防訴訟と同じく「起立斉唱の義務不存在確認」を求める裁判。05年提訴。地裁は敗訴。高裁は原判決を破棄して「職務命令も処分も出ていないから訴えの利益なし」として訴え自体を却下。
②個人情報保護裁判(地裁係属中)
 06年から始まった「不起立者氏名収集」に対して、県審査会・県審議会とも「条例違反」と答申したが、県教委は無視して収集継続。これに対して、市民団体が08年に提訴。
B,新潟:人事委員会審理中
 08年12月第1回口頭審理以来、口頭での「職務命令」の存在をめぐって県教委の立証が難航しており、既に9回の口頭審理を終えたが、長引いている。
C,北海道:人事委員会再提訴中
 09年審査請求に対して「文書訓告は訴えの利益がない」と却下されたのに対し、「D評定は一時金に跳ね返る」として措置要求を提出した。
D,大阪:3つの裁判の報告があった。
①10年、東寝屋川高校4人の「戒告処分」は、人事委員会に提訴。
②09年、門真三中の、「文書訓告」1人・「厳重注意」7人の「処分撤回を求める裁判」が、大阪地裁に係属中。
③02年、東豊中高校卒業式での発言「良心に従って行動して下さい」が「戒告」処分された件で、地裁敗訴・高裁控訴棄却だったが、大阪高裁判決文の中で「良心の自由について特段の補足説明」があったことを評価し、上告せず確定。
E,東京:「10・23通達」関連裁判は、最高裁に4件、東京高裁に7件、東京地裁10件の、計21件が係属中。
3,全国状況から学ぶ教訓
(1)争点は「職務命令」違反ではなく、「思想・良心」の人権侵害でなければならない

 「不起立」があっても「職務命令」がなければ「懲戒処分」は発令されない点を、まず確認したい。
 その後の裁判でも明らかなように、都側は「処分」は「思想・良心」には全く無関係で「命令」に違反したことのみを理由としていると白々しく主張している
 この論理からすれば、命令のない「不起立」があってもそれを処分すれば、「思想・良心」が前面に出る裁判になりかねないので、うかつに「処分」しないことが分かる。「命令」の形式を踏んでいることが思想弾圧を覆い隠す鍵なのである。
 これまでのように、「職務命令」の合法性を「地教行法」「学習指導要領」に形式的に当てはめるだけの安易な判決を乗り越えるためには、職務命令の内容の違憲性にしっかり踏み込んで、「不起立」で処分はしていないという都の言い逃れを許さないより強力な主張が求められる。
(2)生徒への強制はしていないというまやかし
 同じ理屈で生徒への「起立斉唱強制」も、直接命令すると分かり易い人権侵害になるから、間接的に教員を通した「指導」の形態を取っている。すると表面的には、生徒にはまだ被害が及んでいないように見えてしまう。都の本当のねらいが生徒への起立強制であることは誰の目にも明らかであるのに、それを裁判官の前では口が裂けても言わないのである。もし教員の自由が「命令」に拘束されるなら(世取山教授の比喩を借りれば、教員がただの官報の郵便配達夫になってしまえば)、教員の生徒に対する権力性から生徒の人権が全面的に侵害されることは火を見るよりも明らかである。
 今後、もし東京が敗れるようなことがあれば、一律網かけの「通達」がお墨付きを得て、全国の学校で起立斉唱儀式が定着することは目に見えているし、今度こそ堂々と生徒の「思想・良心」の侵害に踏み込んでくることは明らかである。
 包括的画一的「10・23通達」が、教員の心の支配を通して生徒の心の支配にも及んでしまう、その重い意味が再確認しつつ、この狡猾なすり替えの構図を法廷でも暴き出して、都教委の危険な目論見を打ち破らなければならない。
(3)大阪府の「教職員評価制度」違憲訴訟の闘い
 大阪では「新勤評」に対する「自己申告書不提出」の取り組みから「違憲訴訟」が提起され、最高裁逆転勝利をめざして11月に全国集会が開かれるそうである。
 東京でも「人事考課制度」と連動することで、嘱託解雇・採用拒否・担任外しなど処遇面での実質的「思想差別」が持ち込まれている。
 「起立斉唱」強制は、既に「思想・良心の自由」という「精神の自由」の侵害に止まらず、「労働権」という「経済的自由」侵害の問題にも深く及んで、私たちの身分・生活をも脅かしている。このような現実を直視して、国家儀礼に名を借りた大胆にして深刻な人権侵害の実態を、全国的・国際的に明らかにし阻止していかなければならない。
『藤田先生を応援する会通信』(第43号 2010/9/9)

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