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業績評価で世田谷区教委に質問書を提出

2010年10月15日 | 暴走する都教委
 《業績評価裁判を支援する会(岬の会)》
 ▼ 業績評価で世田谷区教委に質問書を提出

 昨日9月15日、岬の会として世田谷区教育委員会に業績評価に関して質問書を提出しました。以下に質問書を掲載します(提出したものにはない、各項目ごとの解説を加えます)。

質 問 書
 公立学校教職員への業績評価制度について、以下のとおり質問致します。
 回答についてですが、今回この質問を提出するにあたって、担当責任者のご出席をお願いしたにもかかわらす、貴委員会はこれを拒否しました。回答に際しては、担当責任者による回答についてのご説明の場を設けていただきますよう、切に要望致します。なお、回答の時期につきましては、この場で協議して決めることを求めます。
 1.公正評価義務について
 ①業績評価制度を運用するにあたって、世田谷区立学校教職員の最終評価者である貴委員会には、公平公正な評価を行う義務があることを認められますか。また、第一次評価者である校長に対して、公平公正な評価を行うよう指導監督する責任を認められますか。
 ②人事考課規則、業績評価実施要領には、評価基準、評価方法、留意事項等が定められていますが、そこからの逸脱があった場合には、公正な評価とはいえず、違法となることは認められますか。
 ③「評価者訓練テキストⅠ・Ⅱ」には、「一つの行動は、一つの『評価項目』、『評価要素』にのみ結びつけることをルールとする」ことや、様々な職務内容をどの評価項目で評価するかが定められていますが、これらの規定に逸脱して評価がなされた場合にはどうですか。
 解 説 1
 東京地裁判決は、人事考課規則や業績評価実施要領は、「評価の公正性及び正確性を担保する観点から定められたもの」であり、「評価者は、これらの定めるところに則って、公正かつ正確に業績評価を行う義務がある」と判示しました。
 原告が評価の違法性を判断する枠組みとして訴状で提起した「公正評価義務」について、都教委は、「『その業績を公正に評価する義務を負っていること』については、一般論としては認める」と答弁しました(08年5月7日付答弁書7P)。
 ところが、区教委は、「民間の労働契約関係に関わる一部の学者の学説に過ぎない」と一蹴し、「公務員の任用関係において、公正評価義務の概念が問題なる根拠はない」断じていました(08年7月10日付準備書面(1))。そして、当該評価は、人事考課規則、業績評価実施要領などの規定に遵って適切に行っているから、違法となる余地はないと主張していました(同7~8P)。
 そこで、区教委は、「一般論として」も公正評価義務を認めないのか。どういう場合には、評価が違法となるのと考えているのか、区教委の見解を質したいと思います。

 2.評価の対象とする行動についての事実確認、指導・助言について
 業績評価実施要領では、「評価者は、各要素について客観的事実に基づいて評価するものであり、総合評価の結果にあわせるように事実とは無関係に各要素を評価する、いわゆる逆算評価は行わないこと」とされています。「想像や推定による内容を評価の材料とする」ことは、厳に戒められています。
「事実に基づかない評価」や「誤認した事実による評価」は、あってはならないし、当然、違法となると考えますが、いかがでしょうか。
②業績評価実施要領は、副校長から意見と参考資料の提出を求めること、主幹や主任の参考意見を活用することとしています。評価者が他者からの報告に基づいて評価の材料とする行動を選択する場合、とりわけマイナス評価の材料とする行動を選択する場合には、被評価者本人に事実確認をしなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
③被評価者のある言動について、その場では指導や注意もしなかったことを、評価をつける段になって、マイナス評価の材料とすることは、許されるのでしょうか。
④許されるとすれば、そのようなやり方によって、「職員の資質能力の向上と学校組織の活性化」(人事考課規則)という制度目的が果たされるとお考えですか。
⑤業績評価実施要領では、ABCDの各評語には、それぞれ「指導・助言の必要がほとんどない」「日常の指導・助言で十分足りる」「日常の指導・助言では必ずしも十分ではない時がある」「常に指導・助言が必要である」という説明が付されています。日常的な指導・助言によって職務内容の不断の向上・改善をはかることが、制度の趣旨であるという理解は、間違っていますか。
 解 説 2
 東京地裁判決は、この当時は第一次評価者として位置づけられていた教頭の評価について、Cをつけた3つの評価項目及び総合評価のいずれも「事実に基づかない又は誤認した事実に基づくもの」として公正評価義務違反を認定しました。そして、校長の第二次評価も、教頭の評価を鵜呑みにしたもので違法という判断を下しました。
 また、大嶽さんへのC評価の根拠としてされた「ひいき」について、本人になんの指導や注意もしていないのに、「否定的評価の材料として使用するのは、評価のあり方として疑問が残る」としました(原判決64~65P)。「みかん」の授業や「児童への大声での叱責」についても、教頭がその場で指導や注意をしていないことを、その行為がマイナス評価の対象となるかどうかの判断要素にしています。
 ところが、区教委は、大嶽さんは、「批判されるとすぐ激高してしかも長く根に持つ性格」だから、その場では指導も注意もしなかったのだと、ほとんど人格攻撃に等しい反論をしてきています(区教委控訴理由書、吉村陳述書(2))。
 大嶽さんに対するような不当評価事例を繰り返さないためにも、本人への事実確認、日常的な指導・助言と業績評価制度の関係について、質したいと思います。

 3.本人開示、開示面談について
①開示面談においては、各評価項目のそれぞれの評価要素の評価と、その根拠とした事実について、被評価者が説明を求めた場合には、当然明らかにすべきと考えますがどうでしょうか。
②開示面談を年度内に行うことができず、評価者、被評価者の異動により、評価者と異なる校長が面談することとなる場合が想定されます。評価者から引き継ぎを行うだけでなく校長が退職した場合などを除き、当該評価を行った校長を開示面談に同席させて、説明させるべきと考えますが、いかがでしょうか。区内異動などで、貴委員会の裁量で可能なケースでは、そうした措置をとられるお考えはありませんか。
③開示面談における評価者の説明に被評価者が納得せず、苦情相談、人事委員会への措置要求、裁判で争われることとなった場合に、開示面談の際に明らかにしなかった事実を持ち出すことは許されないと考えますが、どうでしょうか。
 解 説 3
 大嶽さんは、開示面談の際に、C評価の理由として、職務実績記録に記載された6点の「問題行動」のうちの4点を口答で告げられ、職務実績記録そのものは、裁判の中で初めて証拠提出されました。
 当初C評価の理由とした事実が、職務時間外の行動であるなど、マイナス評価の材料とはなりえないものであることを突きつけられるや、区教委は「特定の事実のみが評価対象となるわけではない」(09年3月26日付準備書面(3))として、校長、教頭の陳述書で、それまで一度たりとも主張してこなかった「ひいき」や「教育相談研修会への態度」などを持ち出し始めました。
 評価の理由をコロコロ変えるこうした対応がまかりとおるのであれば、本人開示や開示面談も管理職のその場しのぎにしかならず、制度の透明性・公平性を担保するものにはなりません。そこで、評価の根拠とした事実についての説明責任、評価理由の「後出し」は許されるかを質したいと思います。
 大嶽さんの場合は、評価をつけた教頭は、「はい、さよなら」で、開示面談をしたのは、現任校の校長です。そういたケースを想定して②の質問も入れています。

 4.職務実績記録について
 職務実績記録は、「校長等が教育職員の職務実績及び指導・指示の結果等を的確に把握し、人事考課制度の効果的な運用を図るためのもの」とされ、「評価結果の開示にあたって、教育職員に対する職務実績の説明が適切に行える」ためのものと位置づけられています。また、「指導を要する教育職員については、必ず作成するものとする」とされています(都教委通知)。
①CD評価の対象とする事実があった場合に、それを職務実績記録に記録しなくてもよいのでしょうか。逆に、開示面談後の苦情相談、措置要求、訴訟において、職務実績記録に記載のない事実をCD評価の根拠として主張することも許されるのでしょうか。
②開示面談において、被評価者が希望すれば、職務実績記録を開示する、複写を手交することは、評価の透明性に資するものと考えますが、どうでしょうか。
 解 説 4
 3.で述べたように、区教委は、職務実績記録に書いていない「ひいき」や「教育相談研修会への態度」を、裁判になってからマイナス評価の根拠として持ち出してきました。このことは、裁判所の不信を買い、「職務実績記録に何らの記載をしないでおきながら、…原告の否定的評価の材料として使用するというのは、評価のあり方としても疑問が残る」(判決64~65P)とし、「大声での叱責」についても日付時刻の記載がないので「記載の正確性は担保されていない」と指摘しています(同66P)。
 これに対し、区教委は、職務実績記録は「備忘録的な役割として用いる記録」にすぎない(区教委控訴理由書21P)と、公文書でもないかのような主張をしてきています。都教委通知に示された職務実績記録の目的や位置づけにも反しており、業績評価の公正性・正確性を確保しようとする区教委の姿勢が疑われます。

 5.絶対評価と相対評価について
 人事考課規則によれば、「第一次評価者(校長)は、評価後直ちに評価書及び当該評価結果に都教育長が示す分布率を適用した資料を作成し、調整者(教育委員会人事担当部長)に提出するものとする。」(第12条2)とされています。
 この「分布率適用資料」を作成する過程で、調整者は、校長との「意見交換」、「指導及び助言」を行うことが規定され(第12条2、3)、「最終評価者(教育長)が適当でないと認めた時は、第一次評価者(校長)に再評価させる」(同条6)とされています。また、「分布率適用資料」の書式には、「学校の順位」欄があり、「職種ごとに校内順位を付与する」(09年12月1日付人事部職員課の区市町村教委宛事務連絡添付の「取扱注意」文書)とされています。
①校長が第一次評価を行うにあたって、貴委員会は、ABCの分布率を予め提示していますか。校長との意見交換の際には、提示していますか。
②校長の教員に対する総合評価の分布が決められた分布率と異なる場合、校長に評価の修正を指導していますか。校長がその指導に応じないことは、管理職としての評価のマイナス材料になりますか。
③校長の教職員に対する総合評価の分布が決められた分布率と異なることは、人事考課規則第12条6のいう「適当でない」場合にあたりますか。そうした第一次評価は、再評価の対象になりますか。
④校長が「分布率適用資料」を作成するにあたって、分布率に沿って各評価を割り振らせる指導が行われ、再評価が命じられるとすれば、それは、校長に相対評価を行わせていることを意味しませんか。
⑤絶対評価といいつつ、校長に事実上の相対評価を強いるこの仕組みこそ、「事実に基づかない評価」「後付け的な評価」、「総合評価の結果にあわせるように事実とは無関係に各要素を評価する、いわゆる逆算評価」を生み出す根本的な原因であると考えますが、いかがでしょうか。
 解 説 5
 業績評価は、第一次評価者である校長が絶対評価、最終評価者である区教育長が相対評価をつける仕組みになっています。A・B・Cの分布率を都教委が定め、区教委を通じて校長に示しています。校長が、オールBをつければ、評価のやり直しを命じられます。つまり、校長は、絶対評価といいつつ、相対評価をさせられているのです。また、学校の全職員を職種別に成績順に並べかえた「分布率適用資料」を提出させられています。
 都立校では、都教委が「C・Dを20%以上出せ」と校長に指示していることは、元三鷹高校校長の土肥さんも証言されています(「生徒がくれた“卒業証書”」旬報社135P以下)。
 大嶽さんにC評価がつけられた2004年度は、業績評価が賃金に反映された最初の年度であり、第一次・第二次評価がC・C以下の教員が昇給延伸の対象となりました。この年度は、昇給延伸となる教員にのみ本人開示が行われました。(現在は、第一次評価は校長に一本化され、ABCD4段階評価に応じた査定昇給制度となっています。また、希望者全員に本人開示が行われています。)
 業績評価で賃金が決まるとなると、昇給原資が決まっている以上、区教委は、分布率どおりに校長にABC評価を割り振らせることになります。また、校長も、「みんなBにしといたよ」などと、教職員をごまかすわけにはいかなくなります。
 校長・教頭は、人身御供を差し出すことを迫られ、大嶽さんが選ばれたことは明白です。 絶対評価といいつつ、校長に事実上の相対評価を強いるこの仕組みの矛盾点を解明します。

 6.苦情相談制度について
①貴委員会の人事主管課長、また人事主管部長が、苦情申出者、校長から事情聴取した内容が、事実関係において食い違う場合、どのような方法で事実確認を行っていますか。
②世田谷区立学校の教職員の苦情は、貴委員会の人事主管課長が委員をつとめる第3苦情相談検討委員会で検討されるのですか。そこでは、どのような検討作業を、一件につきどの程度の時間をかけて行っているのか、教えて下さい。
③苦情相談の取扱いに被評価者が納得せず不服がある場合には、いかなる救済手段がとられるべきと考えておられますか。開示面談の際には、苦情相談を教示するわけですから、苦情相談検討結果の本人通知の際にも、次なる救済方法が教示されるべきと考えますが、いかがでしょうか。
④苦情相談の申し出は、教職員が所属する職員団体を通じて行うことはできますか。申し出の際に、職員団体が立ち会うことはできますか。
国家公務員の苦情処理制度においては、本人からの事情聴取の際の第三者の同席、本人が希望する第三者からの事情聴取がともに認められています。東京都の人事考課制度の一環としての苦情相談においても、被評価者が申出しやすい制度とするために、第三者の立ち会いを認めるべきと考えるますが、どうでしょうか。貴委員会の裁量で、世田谷区では、そうした運用を行うお考えはありませんか。
以上

 解 説 6
 大嶽さんは、苦情相談を申し出ましたが、評価の修正も校長への注意・指導もなされることはありませんでした。裁判にまで訴えて初めて、評価の違法不当性が認められたことは、苦情相談制度が機能していないこと、人事考課制度がそれ自身のうちに評価の公平・公正性を担保する仕組みを備えていないことを突き出しています。
 苦情相談制度では、苦情相談を受け付けるのは人事担当課長、校長から事情聴取するのは人事担当部長、検討委員会の委員は他区の教育行政の人事担当者、決定権者は教育長でまったく第三者性はありません。事実、評価の修正や校長への指導もほとんど行われていません。
 他方、開示面談や苦情相談は、職員団体の関与や第三者の同席が認められれば、校長・区教委追及の場に転化することもできます。苦情相談での検討の実態を質し、制度改善の可能性を探ります。
 大嶽さんは、昇給延伸の取消を求めて人事委員会に措置要求しましたが、3年間待たされたあげく、棄却の判定でした。
 一審判決が、「職務実績記録」も提出させていないなど、まともに調査もしていない手続上の違法を認め、判定の取消を命じたことは画期的です。
 人事委員会の判定は、業績評価は「原則として評価者の判断が尊重されるべきもの」とし、苦情相談の検討結果を根拠に、事実誤認や恣意的評価がないと結論づける代物でした。教育行政の判断をそのまま追認するに等しい判定文であり、人事委員会の中立的機関としての立場をまったく逸脱しています。
 苦情相談の検討結果に不服がある場合の救済方法について、区教委はどう考えているのか、見解を聞きたいと思います。

『業績評価裁判を支援する会(岬の会)』(2010年09月16日)
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