● 教科書採択妨害の経緯と抵抗する市民
~"君が代"強制 都教委元幹部が認める (週刊新社会)
● "君が代"記述口部変更で都教委が実教出版を採択
国旗国歌法を巡り、側注に「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述した、実教出版『高校日本史A』(以下『A』)、『同B』(以下『B』)のうち、記述変更した17年度以降使用の『A』は、選定した都立高校が7校に上り、東京都教育委員会は8月25日の定例会で、その7校の採択を決定した。
文科省が『A』を含む高校教科書検定合格を公表した12年3月28日以降、『産経新聞』は冒頭の記述を非難する記事を数回掲載。
都教委は当時の増渕達夫・高校教育指導課長らが、前年度の採用状況から『A』を選定する可能性ある都立高17校の校長に対し、電話で圧力をかけ(最多校は4回)、採択をゼロにしてしまった。
採択対象が『B』にも広がつた13年は、電話作戦では対処し切れなくなり、13年6月27日の定例会で、「("君が代"強制の記述が)都教委と考え方が異なる」との理由で、『A』『B』の都立高校等での選定を実質禁じる議決を、1秒の審議もせず強行していた。
今年3月公表の文科省の検定で、『A』は公務員への強制記述を削除する一方、本文に「教育現場に日の丸掲揚、君が代斉唱を義務づけることに対する反対運動もおきた」と加筆。
この記述変更を受け、都教委は6月23日の定例会で、出張吉訓指導部長が「『A』は『一部の自治体で』の記述がないことを確認したので、他の教科書と同様に扱ってもらう」と報告しただけで、実質審議がないまま『A』の選定妨害を解除したが、改訂期でない『B』は、選定禁止通知を継続発出した。
● 「教委の服務は譲れない 盲目でやっていただく」
冒頭の採択結果に関しては、次の2点が重要だ。
①8月25日の定例会で、『A』『B』に関する審議は皆無。だが前出・出張吉訓氏は、一般論としてではあるが、「各校は生徒の実態に応じ選定している」と明言。現場教諭らは、12年の時点で「生徒の実態に応じ」『A』を選定していた数校が、選定理由書を書き換えさせられ、他社の教科書に変更させられている。
今回7校が選定したということは、都教委が学校現場の「生徒の実態に応じ」『A』を選定する機会を、4年間も奪い続けてきたと言える。
②前記13年6月の選定妨害議決時の指導部長で、都教委ナンバー3の教育監を経て今年4月、東京学芸大教授になった金子一彦氏は、同大が8月20日開催した教職大学院フォーラムの分科会で、学校組織のトップダウンが話題になった時、「教委は服務(校長の職務命令への服従等)では譲れない。盲目でやっていただく」と明言。職務命令下、"君が代"不起立教員を処分し、懲罰研修まで強行している都教委が、冒頭記述の「強制」をやっている、と認めたような発言だ。
● 都教委が車代を不正支出 住民監査から訴訟提起に
前記13年6月の議決(行政による政治介入の典型)に対し、採択(営業)妨害された当時者の執筆書や出版社自身は提訴せず。このため、高嶋伸欣琉球大名誉教授ら計88人の市民が原告となり、議決撤回を求め、14年2月、都教委を提訴。
だが東京地裁は今年7月、「原告に具体的被害なし」との理由で不当にも棄却した。
しかし瓢箪から駒が。
前記13年議決の実質的な審議をした日の会議録等を、原告事務局の増田都子元千代田区立中教諭が情報開示請求したが、非開示。次に教育委員の交通費を開示請求すると、都教委がHPに「定例会は非開催」と告示していた同年5月9日、”教育委員懇談”と称する非公開で議箏録もない会議での、木村孟、内館牧子、竹花豊、山ロ香の各委員(内館、竹花両氏は当時)へのハイヤー代計15万2420円の支出が判明した(同年度ハイヤー代総額は約215万円)。
これは「日時や場所等が公表されている会議では教育委員をハイヤー輸送」と規定した07年の都教育長決定文書にすら、違反する。
この違法・不正な支出に対し、都監査委員への86人の住民監査請求(今年2月10日却下)を経て、高嶋さんら原告148人が1人1万円の慰謝料支払いを求めた訴訟の弁論が8月2日、東京地裁(北澤純一裁判長)で始まった。
この第1回弁論で高嶋さんは、ハイヤー代請求内訳を示し、「毎回、最高額のハイヤー代が出ている木村氏は13年5月9日の場合、八王子の自宅から都庁まで高速代等含め81860円に上るが、同年4月12日のタクシー利用時は15610円ゆえ、往復でも3万円強で済む。千歩譲ってもタクシーで十分」と意見陳述した。
その木村氏のハイヤー代個票は、自宅・都庁間の走行距離が「往路45㎞、復路49㎞の計94㎞」だが、無人の営業所~自宅間の迎え・回送で116㎞も走行。タクシーと違いハイヤーでは有人と同料金で算出されるこのムダ遣いは、区内の池袋と銀座にしか営業所がない㈱東都ハイヤーを契約先にしている(都教委提出の訴訟証拠)からだ。
高嶋さんが「ハイヤー使用だとしても、ネットで3社も検索できる八王子の会社なら大幅削減可能」と述べると、都教委側は顔をしかめた。
都教育委員は月2回の会議出席等だけで、月額約43万円もの報酬が出る。舛添前知事が公用車代の一部返金を求められた今、注目の第2回弁論は11月4日13時15分(東京地裁606法廷)だ。
『週刊新社会』(2016年10月4日)
~"君が代"強制 都教委元幹部が認める (週刊新社会)
教育ライター・永野厚男
● "君が代"記述口部変更で都教委が実教出版を採択
国旗国歌法を巡り、側注に「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述した、実教出版『高校日本史A』(以下『A』)、『同B』(以下『B』)のうち、記述変更した17年度以降使用の『A』は、選定した都立高校が7校に上り、東京都教育委員会は8月25日の定例会で、その7校の採択を決定した。
文科省が『A』を含む高校教科書検定合格を公表した12年3月28日以降、『産経新聞』は冒頭の記述を非難する記事を数回掲載。
都教委は当時の増渕達夫・高校教育指導課長らが、前年度の採用状況から『A』を選定する可能性ある都立高17校の校長に対し、電話で圧力をかけ(最多校は4回)、採択をゼロにしてしまった。
採択対象が『B』にも広がつた13年は、電話作戦では対処し切れなくなり、13年6月27日の定例会で、「("君が代"強制の記述が)都教委と考え方が異なる」との理由で、『A』『B』の都立高校等での選定を実質禁じる議決を、1秒の審議もせず強行していた。
今年3月公表の文科省の検定で、『A』は公務員への強制記述を削除する一方、本文に「教育現場に日の丸掲揚、君が代斉唱を義務づけることに対する反対運動もおきた」と加筆。
この記述変更を受け、都教委は6月23日の定例会で、出張吉訓指導部長が「『A』は『一部の自治体で』の記述がないことを確認したので、他の教科書と同様に扱ってもらう」と報告しただけで、実質審議がないまま『A』の選定妨害を解除したが、改訂期でない『B』は、選定禁止通知を継続発出した。
● 「教委の服務は譲れない 盲目でやっていただく」
冒頭の採択結果に関しては、次の2点が重要だ。
①8月25日の定例会で、『A』『B』に関する審議は皆無。だが前出・出張吉訓氏は、一般論としてではあるが、「各校は生徒の実態に応じ選定している」と明言。現場教諭らは、12年の時点で「生徒の実態に応じ」『A』を選定していた数校が、選定理由書を書き換えさせられ、他社の教科書に変更させられている。
今回7校が選定したということは、都教委が学校現場の「生徒の実態に応じ」『A』を選定する機会を、4年間も奪い続けてきたと言える。
②前記13年6月の選定妨害議決時の指導部長で、都教委ナンバー3の教育監を経て今年4月、東京学芸大教授になった金子一彦氏は、同大が8月20日開催した教職大学院フォーラムの分科会で、学校組織のトップダウンが話題になった時、「教委は服務(校長の職務命令への服従等)では譲れない。盲目でやっていただく」と明言。職務命令下、"君が代"不起立教員を処分し、懲罰研修まで強行している都教委が、冒頭記述の「強制」をやっている、と認めたような発言だ。
● 都教委が車代を不正支出 住民監査から訴訟提起に
前記13年6月の議決(行政による政治介入の典型)に対し、採択(営業)妨害された当時者の執筆書や出版社自身は提訴せず。このため、高嶋伸欣琉球大名誉教授ら計88人の市民が原告となり、議決撤回を求め、14年2月、都教委を提訴。
だが東京地裁は今年7月、「原告に具体的被害なし」との理由で不当にも棄却した。
しかし瓢箪から駒が。
前記13年議決の実質的な審議をした日の会議録等を、原告事務局の増田都子元千代田区立中教諭が情報開示請求したが、非開示。次に教育委員の交通費を開示請求すると、都教委がHPに「定例会は非開催」と告示していた同年5月9日、”教育委員懇談”と称する非公開で議箏録もない会議での、木村孟、内館牧子、竹花豊、山ロ香の各委員(内館、竹花両氏は当時)へのハイヤー代計15万2420円の支出が判明した(同年度ハイヤー代総額は約215万円)。
これは「日時や場所等が公表されている会議では教育委員をハイヤー輸送」と規定した07年の都教育長決定文書にすら、違反する。
この違法・不正な支出に対し、都監査委員への86人の住民監査請求(今年2月10日却下)を経て、高嶋さんら原告148人が1人1万円の慰謝料支払いを求めた訴訟の弁論が8月2日、東京地裁(北澤純一裁判長)で始まった。
この第1回弁論で高嶋さんは、ハイヤー代請求内訳を示し、「毎回、最高額のハイヤー代が出ている木村氏は13年5月9日の場合、八王子の自宅から都庁まで高速代等含め81860円に上るが、同年4月12日のタクシー利用時は15610円ゆえ、往復でも3万円強で済む。千歩譲ってもタクシーで十分」と意見陳述した。
その木村氏のハイヤー代個票は、自宅・都庁間の走行距離が「往路45㎞、復路49㎞の計94㎞」だが、無人の営業所~自宅間の迎え・回送で116㎞も走行。タクシーと違いハイヤーでは有人と同料金で算出されるこのムダ遣いは、区内の池袋と銀座にしか営業所がない㈱東都ハイヤーを契約先にしている(都教委提出の訴訟証拠)からだ。
高嶋さんが「ハイヤー使用だとしても、ネットで3社も検索できる八王子の会社なら大幅削減可能」と述べると、都教委側は顔をしかめた。
都教育委員は月2回の会議出席等だけで、月額約43万円もの報酬が出る。舛添前知事が公用車代の一部返金を求められた今、注目の第2回弁論は11月4日13時15分(東京地裁606法廷)だ。
『週刊新社会』(2016年10月4日)
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