2005年4月の入学式における不起立者に対する処分に抗議する研究者声明
東京都教育委員会は、2004年中の248名、2005年3月卒業式に関わる52名に加えて、2006年5月27日、2005年の入学式において「国歌斉唱」の際起立しなかった9名の教員と、「君が代」の伴奏を拒否した1名の教員を処分しました。
その中でも、特に、東京都立川市立立川第二中学校教諭根津公子さんに対しては、停職一ケ月という非常に重い処分が加えられました。
わたしたちは、「国歌斉唱」時に着席したことを理由に「停職」という非常に厳しい処分が行われたことについて、正直驚きを禁じ得ません。
今回の処分は、教員が起立をしないならば、最終的には「免職」にまで至るという東京都教育委員会の意志を、明確に示しました。
しかし、そもそも、「国歌斉唱」の際、教員に対して職務命令を出して起立させることは、憲法および教育基本法に照らして、違法としか考えられません。
したがって、違法な職務命令に法的義務は発生せず、それが繰り返されたからといって、「停職」や「免職」に至るはずはありません。
自由で民主的な社会において、教育という営みは、その受け手である子どもが、自律的に思考する力を獲得するために行われるべきものです。
この原理は、憲法13条の個人の尊重、19条の思想良心の自由、26条の教育を受ける権利などによって、子どもに保障されています。
教育の目的として「人格の完成」を掲げ、教育に対する「不当な支配」を禁じる教育基本法は、日本国憲法が想定する自由で民主的な社会における教育のあり方を具体化したものです。
この原理は、旭川学カテスト最高裁判決において、国は「子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入」を行うことができないと判示された通りです。
以上のような憲法と教育基本法の理念に照らすならば、学習指導要領に基づいて、「国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導」することには限界があるはずです。
学習指導要領は文部科学省の「告示」であり、旭川事件において最高裁が示したように「大綱的基準」にすぎません。
個々の教員に対して起立・斉唱の職務命令を発して、その違反に対して戒告・減給・停職・免職という処分を行うことは、教員を利用することによって、子どもたちを特定の価値に従わせることを目的とするものであり、日本国憲法および教育基本法に違反し、教育委員会が有する権限の範囲を著しく逸脱することは明らかです。
東京都教育委員会は、今回の処分によって、教員と子どもたちに対して、「日の丸・君が代」に恭順を示さない者は許さないという、強烈なメッセージを発しました。
この処分は、子どもたちを「指導」するために行われているのであり、すでに子どもたちへの直接の強制は作動しているものと考えられます。
処分を受けた10人の教員は、このような状況を未然に防ぐために、職をかけて抵抗を試みたものと考えられます。
わたしたちは、このような教員の抵抗は、「信用失墜行為」どころか、東京都教育委員会の違法行為を社会に訴え、それを是正するために行われた正当な行為であると高く評価します。
わたしたち研究者は、「不起立」を貫いた10人の教員の勇気に敬意を表すとともに、彼らとともに、法を回復するために力を尽くすことが、わたしたちに課された社会的責任って、日本国憲法と教育基本法に違反し、あるべき教育から逸脱を続ける東京都教育委員会の行為に強く抗議し、lO.23通達に基づくすべての処分を撤回することを要求します。
2005年6月吉日
呼びかけ人・賛同人:愛敬浩二(名古屋大学)、青木宏治(高知大学)、麻生多聞(鳴門教育大学)、足立英郎(大阪電気通信大学)、姉崎洋一(北海道大学)、荒牧重人(山梨学院大学)、飯島滋明(工学院大学)、池田正樹(静岡県)、石埼学(亜細亜大学)、石川裕一郎(聖学院大学)、市川須美子(獨協大学)、伊藤進(明治大学)、稲正樹(大宮法科大学院大学)、井上陽子、井端正幸(沖縄国際大学)、井本傳枝、植野妙実子(中央大学)、植松健一(島根大学)、植村勝慶(國學院大學)、浦田賢治(早稲田大学名誉教授)、江熊隆徳(全国教育法研究会)、江原勝行(大東文化大学非常勤講師)、小栗実(鹿児島大学)、小沢隆一(静岡大学)、押久保倫夫(東海大学)、小野雅章(日本大学)、梶岡寛之(広島市立五日市南中学校(非常勤))、柏木修(中学校教員)、柏崎敏義(関東学院大学)、片山等(国士舘大学)、金井徹、上脇博之(神戸学院大学)、河合正雄(早稲田大院)、川岸令和(早稲田大学)、川口洋誉(名古屋大学院生)、川村肇(獨協大学)、北川善英(横浜国立大学)、木村元(一橋大学)、木村陽吉(全国教育法研究会)、久保冨三夫(立命館大学)、小林正直(神奈川大学院生)、駒込武(京都大学)、小松浩(神戸学院大学)、今野健一(山形大学)、斉藤一久(東京学芸大学)、斉藤小百合(恵泉女学園大学)、榊原秀訓(南山大学)、阪口正二郎(一橋大学)、笹沼弘志(静岡大学)、児美川孝一郎(法政大学)、清水雅彦(明治大学)、清水康幸(青山学院女子短期大学)、白桃敏司(東京都立高島養護学校教員)、杉山和恵(愛知学泉大学)、隅野隆徳(専修大学名誉教授)、高橋保(桐生市立神明小学校教諭)、高橋利安(広島修道大学)、高野啓司(早稲田大院)、田口和人(武蔵野美術大学)、竹内俊子(広島修道大学)、竹田友三、多田一路(立命館大学)、谷口聡(名古屋大学院生)、谷光(退職教員)、千國亮介`早稲田大学大学院生)、塚田哲之(神戸学院大学)、辻本雅史、戸波江二(早稲田大学)、土屋基規(神戸大学)、寺川史朗(三重大学)、中川明(弁護士・明治学院大学)、中川律(明治大学大学院博士後期課程)、中嶋哲彦(名古屋大学)、中島徹(早稲田大学)、長岡徹(関西学院大学)、中田康彦(一橋大学)、長峯信彦(愛知大学)、永野恒雄(全国教育法研究会)、成澤孝人(三重短期大学)、成嶋隆(新潟大学)、西原博史(早稲田大学)、西村英之(明治大学付属明治高等学校・中学校)、丹羽徹(大阪経済法科大学)、野口美代子(尼崎市立立花小学校)、根森健(新潟大学法科大学院)、西脇秀晴(神奈川大学院生)、平岡亮(中央学院大学)、舟木正文(大東文化大学)、古川純(専修大学)、細井克彦(大阪市立大学)、堀健次(古江台小学校分会)、堀尾輝久(東京大学名誉教授)、牧本富雄、松井幸夫(関西学院大学)、松倉聡史(市立名寄短期大学)、松原幸恵(山口大学)、松村芳明(早稲田大院)、三島敏男(民主教育研究所)、水島朝穂(早稲田大学)、水谷厚子(愛知教育法研究会)、三上昭彦(明治大学)、三輪隆(埼玉大学)、本秀紀(名古屋大学)、元山健(龍谷大学)、森英樹(名古屋大学)、八木英二(滋賀県立大学)、八鍬友広(新潟大学)、柳井健一(山口大学)、山口和孝(埼玉大学)、山口和秀(岡山大学)、山崎英壽(日本体育大学)、山崎武央(新潟五泉高校)、山崎真秀(元静岡大学)、山根雅昭(早稲田大学大学院)、山本敏郎(金沢大学)、山本由美(工学院大学非常勤)、吉岡直子(西南学院大学)、吉川卓治(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)、米田俊彦(お茶の水女子大学)、林量俶(埼玉大学)、和田進(神戸大学)、渡辺洋(神戸学院大学)以上 122名
東京都教育委員会は、2004年中の248名、2005年3月卒業式に関わる52名に加えて、2006年5月27日、2005年の入学式において「国歌斉唱」の際起立しなかった9名の教員と、「君が代」の伴奏を拒否した1名の教員を処分しました。
その中でも、特に、東京都立川市立立川第二中学校教諭根津公子さんに対しては、停職一ケ月という非常に重い処分が加えられました。
わたしたちは、「国歌斉唱」時に着席したことを理由に「停職」という非常に厳しい処分が行われたことについて、正直驚きを禁じ得ません。
今回の処分は、教員が起立をしないならば、最終的には「免職」にまで至るという東京都教育委員会の意志を、明確に示しました。
しかし、そもそも、「国歌斉唱」の際、教員に対して職務命令を出して起立させることは、憲法および教育基本法に照らして、違法としか考えられません。
したがって、違法な職務命令に法的義務は発生せず、それが繰り返されたからといって、「停職」や「免職」に至るはずはありません。
自由で民主的な社会において、教育という営みは、その受け手である子どもが、自律的に思考する力を獲得するために行われるべきものです。
この原理は、憲法13条の個人の尊重、19条の思想良心の自由、26条の教育を受ける権利などによって、子どもに保障されています。
教育の目的として「人格の完成」を掲げ、教育に対する「不当な支配」を禁じる教育基本法は、日本国憲法が想定する自由で民主的な社会における教育のあり方を具体化したものです。
この原理は、旭川学カテスト最高裁判決において、国は「子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入」を行うことができないと判示された通りです。
以上のような憲法と教育基本法の理念に照らすならば、学習指導要領に基づいて、「国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導」することには限界があるはずです。
学習指導要領は文部科学省の「告示」であり、旭川事件において最高裁が示したように「大綱的基準」にすぎません。
個々の教員に対して起立・斉唱の職務命令を発して、その違反に対して戒告・減給・停職・免職という処分を行うことは、教員を利用することによって、子どもたちを特定の価値に従わせることを目的とするものであり、日本国憲法および教育基本法に違反し、教育委員会が有する権限の範囲を著しく逸脱することは明らかです。
東京都教育委員会は、今回の処分によって、教員と子どもたちに対して、「日の丸・君が代」に恭順を示さない者は許さないという、強烈なメッセージを発しました。
この処分は、子どもたちを「指導」するために行われているのであり、すでに子どもたちへの直接の強制は作動しているものと考えられます。
処分を受けた10人の教員は、このような状況を未然に防ぐために、職をかけて抵抗を試みたものと考えられます。
わたしたちは、このような教員の抵抗は、「信用失墜行為」どころか、東京都教育委員会の違法行為を社会に訴え、それを是正するために行われた正当な行為であると高く評価します。
わたしたち研究者は、「不起立」を貫いた10人の教員の勇気に敬意を表すとともに、彼らとともに、法を回復するために力を尽くすことが、わたしたちに課された社会的責任って、日本国憲法と教育基本法に違反し、あるべき教育から逸脱を続ける東京都教育委員会の行為に強く抗議し、lO.23通達に基づくすべての処分を撤回することを要求します。
2005年6月吉日
呼びかけ人・賛同人:愛敬浩二(名古屋大学)、青木宏治(高知大学)、麻生多聞(鳴門教育大学)、足立英郎(大阪電気通信大学)、姉崎洋一(北海道大学)、荒牧重人(山梨学院大学)、飯島滋明(工学院大学)、池田正樹(静岡県)、石埼学(亜細亜大学)、石川裕一郎(聖学院大学)、市川須美子(獨協大学)、伊藤進(明治大学)、稲正樹(大宮法科大学院大学)、井上陽子、井端正幸(沖縄国際大学)、井本傳枝、植野妙実子(中央大学)、植松健一(島根大学)、植村勝慶(國學院大學)、浦田賢治(早稲田大学名誉教授)、江熊隆徳(全国教育法研究会)、江原勝行(大東文化大学非常勤講師)、小栗実(鹿児島大学)、小沢隆一(静岡大学)、押久保倫夫(東海大学)、小野雅章(日本大学)、梶岡寛之(広島市立五日市南中学校(非常勤))、柏木修(中学校教員)、柏崎敏義(関東学院大学)、片山等(国士舘大学)、金井徹、上脇博之(神戸学院大学)、河合正雄(早稲田大院)、川岸令和(早稲田大学)、川口洋誉(名古屋大学院生)、川村肇(獨協大学)、北川善英(横浜国立大学)、木村元(一橋大学)、木村陽吉(全国教育法研究会)、久保冨三夫(立命館大学)、小林正直(神奈川大学院生)、駒込武(京都大学)、小松浩(神戸学院大学)、今野健一(山形大学)、斉藤一久(東京学芸大学)、斉藤小百合(恵泉女学園大学)、榊原秀訓(南山大学)、阪口正二郎(一橋大学)、笹沼弘志(静岡大学)、児美川孝一郎(法政大学)、清水雅彦(明治大学)、清水康幸(青山学院女子短期大学)、白桃敏司(東京都立高島養護学校教員)、杉山和恵(愛知学泉大学)、隅野隆徳(専修大学名誉教授)、高橋保(桐生市立神明小学校教諭)、高橋利安(広島修道大学)、高野啓司(早稲田大院)、田口和人(武蔵野美術大学)、竹内俊子(広島修道大学)、竹田友三、多田一路(立命館大学)、谷口聡(名古屋大学院生)、谷光(退職教員)、千國亮介`早稲田大学大学院生)、塚田哲之(神戸学院大学)、辻本雅史、戸波江二(早稲田大学)、土屋基規(神戸大学)、寺川史朗(三重大学)、中川明(弁護士・明治学院大学)、中川律(明治大学大学院博士後期課程)、中嶋哲彦(名古屋大学)、中島徹(早稲田大学)、長岡徹(関西学院大学)、中田康彦(一橋大学)、長峯信彦(愛知大学)、永野恒雄(全国教育法研究会)、成澤孝人(三重短期大学)、成嶋隆(新潟大学)、西原博史(早稲田大学)、西村英之(明治大学付属明治高等学校・中学校)、丹羽徹(大阪経済法科大学)、野口美代子(尼崎市立立花小学校)、根森健(新潟大学法科大学院)、西脇秀晴(神奈川大学院生)、平岡亮(中央学院大学)、舟木正文(大東文化大学)、古川純(専修大学)、細井克彦(大阪市立大学)、堀健次(古江台小学校分会)、堀尾輝久(東京大学名誉教授)、牧本富雄、松井幸夫(関西学院大学)、松倉聡史(市立名寄短期大学)、松原幸恵(山口大学)、松村芳明(早稲田大院)、三島敏男(民主教育研究所)、水島朝穂(早稲田大学)、水谷厚子(愛知教育法研究会)、三上昭彦(明治大学)、三輪隆(埼玉大学)、本秀紀(名古屋大学)、元山健(龍谷大学)、森英樹(名古屋大学)、八木英二(滋賀県立大学)、八鍬友広(新潟大学)、柳井健一(山口大学)、山口和孝(埼玉大学)、山口和秀(岡山大学)、山崎英壽(日本体育大学)、山崎武央(新潟五泉高校)、山崎真秀(元静岡大学)、山根雅昭(早稲田大学大学院)、山本敏郎(金沢大学)、山本由美(工学院大学非常勤)、吉岡直子(西南学院大学)、吉川卓治(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)、米田俊彦(お茶の水女子大学)、林量俶(埼玉大学)、和田進(神戸大学)、渡辺洋(神戸学院大学)以上 122名
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