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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

教育2条例に関する大阪弁護士会会長声明

2012年03月24日 | こども危機
 ◆ 大阪府の教育行政基本条例案、府立学校条例案
   及び職員基本条例案に関する会長声明


 1 知事による教育行政基本条例案等の提案
 大阪府では、2012年(平成24年)2月23日、知事提案によって教育行政基本条例案及び府立学校条例案(以下「教育関係条例案」という。)並びに職員基本条例案が府議会に提案された。これらの条例案には、以下に述べる看過できない大きな問題がある。
 2 各条例案の問題点
 第一に、教育関係条例案については、学校間あるいは子どもたちの間の格差を公表することによって競争をあおり、競争に勝てなかったものに不利益を与えるという考えが随所にみられる。
 同条例案では、3年連続定員割れ高校については、「再編整備の対象とす。」とされ、定員割れを理由とする統廃合の可能性が示されている。
 府立普通科高校の学区については、維新の会提案のとおり、2014年(平成26年)4月からの一学区制とすることが盛り込まれた。
 府民に対する教育情報の提供という言い方で、学力テスト結果の学校別公表への途も開かれている。
 しかしながら、教育にこのような過度の競争を持ち込むことは、教育現場を荒廃させるおそれがある。
 第二に、職員基本条例案には、職員及び教職員に職務命令違反に対してきびしい懲戒処分・分限処分の基準を設定し、さらに職員については相対的人事評価を行うことによって、統制管理する発想がみられる。
 同条例案によれば、教職員についても、同一の職務命令違反3回で分限免職となる可能性があるが、東京都の教職員の日の丸・君が代処分事件の最高裁判決も懲戒処分として減給以上の処分を課することについては、きわめて謙抑的な判断をしており、この判決に照らしても、思想良心に関わる問題で3回の職務命令違反で分限免職につながる規定を設けることは、憲法違反のおそれが強い。
 第三に、教育関係条例案には、学校の管理及び教職員の人事等を教育委員会の事務とする地方教育行政組織法23条等に違反し、政治が教育内容に介入し、教育の中立性・公平性を侵害して、府教育委員会及び市町村教育委員会を府知事の下に置くような規定がある。
 まず、同条例案には、知事が教育委員会と協議して教育振興基本計画を策定することが定められているが、上記の教育委員会の職務権限とされた事項について知事が基本計画を定めることは同法23条に違反するおそれがある。
 また、「同計画に定めた目標達成のための教育委員の取組み等の点検評価により、知事が教育委員の罷免事由の該当性を判断する」との規定は、教育委員の罷免事由を限定した同法7条に違反し、「大阪府教育委員会が市町村に共通する教育の基本方針を定める」との規定は、府教育委員会が市町村教育委員会に命令する関係を定めることになり、「市町村に対し、・・・指導、助言又は援助を行うことができる」とする同法48条に反する疑いがある。
 第四に、職員基本条例案大阪府人事監察委員会を新たに設置し、職員の懲戒・分限処分について、任命権者に意見を言うとしているが、教育委員会についても人事監察委員会の意見を考慮する義務を課すことは、教育委員会の独立した権限を認めている同法23条に反するものである。
 3 教育関係条例案について考慮すべき事情
 教育関係条例案のモデルとなっているアメリカの「おちこぼれゼロ法」による学校選択制、学力テストの成績の悪い学校の民営化・統廃合、生徒の成績による教員へのボーナス配分などについて、失敗であったことが明らかになっている。
 府・市教育委員の中にも、競争主義は、かえって子どもたちの意欲をなくすとして反対する意見が強くある。また、教育委員会の独立性・中立性は、時の政治によって教育の内容がゆがめられないようにするための重要な制度的保障である。
 当会は、少年事件・児童福祉・学校問題などで、子どもの学習権・成長発達権を守り、子どもの権利条約を実施するために取り組んできたが、今回の各条例案が子どもの学習・成長の権利を阻害し、教職員の自由で闊達な教育活動を抑制することになることを危惧するものである。
 このような重要な問題の決定が、保護者・子どもの声、学校現場の声、教育学者の意見、諸外国の経験などを考慮せず、知事・議員の現時点での政治的動向に基づく判断で決せられることは、百年の計と言われる教育の分野については不適切である。
 以上により、当会は、知事提案の各条例案が制定されることに、強く反対するものである。

2012年(平成24年)3月19日
大阪弁護士会
会 長 中 本 和 洋

『大阪弁護士会』(2012/3/19)
http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/kanri/db/info/2012/2012_4f66fbc1bf410_0.pdf

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