パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

沖縄基地問題を劇的に解決させる秘策

2016年02月03日 | 平和憲法
 ◆ 普天間基地は首相の地元、米軍岩国基地に移転すべきだ (ダイヤモンド・オンライン)

 沖縄県宜野湾市長選挙で、自民党・公明党の連立与党が全面的に支援した無所属・現職の佐喜真淳氏が当選した。佐喜真氏は米軍普天間飛行場の移設に関して「普天間の固定化は絶対あってはならない」と主張したが、名護市辺野古移設の是非には触れなかった。だが、移設反対を掲げ、翁長雄志知事が推した志村恵一郎氏を大差で退けた
 安倍晋三首相は、「安全保障に関わることは国全体で決める。一地域の選挙によって決めることはない」と発言していた。選挙結果にかかわらず、普天間飛行場の辺野古への移設を着実に進める意向を示していたわけだが、佐喜真氏の再選で、移設の動きが加速することは間違いない。
 しかし、本稿は「安全保障は国全体が決める」のならば、普天間飛行場を沖縄県外へ移設させるべきだと、改めて主張したい。
 そして、安倍首相の地元である「米軍岩国飛行場」への移設を、この問題を劇的に解決させる秘策として実現すべきだと考える。
 ● 安倍政権は、沖縄基地問題の変質を軽視すべきではない
 この連載では、2009年の自民党下野、2009-12年の民主党政権期を経て、それ以前とは全く異なる問題に変質してしまった政治課題を取り上げてきた。
 例えば、「原発の是非」を巡る原発近隣の「住民」とその他「一般国民」の関係が、2011年の東日本大震災・福島第一原発事故を機に、従来と逆転してしまったことである。
 具体的には、従来は「住民」が原発反対で、それを「一般国民」が国策推進の観点から批判するという構図だったことだ。
 かつて原発建設計画に関する住民投票条例が7市町村で制定され、新潟県巻町(現新潟市、1996年)、同県刈羽町(2001年)、三重県海山町(現紀北町、01年)で投票が行われた。これに対しては、住民以外の一般国民から「国策である原発政策に住民投票はなじまない」「自治体の権限外」との厳しい批判が展開されたものだった。
 しかし、事故後は、雇用の悪化などから早期の原発再稼働を求める地元に対して、それ以外の自治体が原発再稼働反対を訴える正反対の対立構図となった。
 野田佳彦政権時の大飯原発再稼働に関しては、橋下徹大阪市長や、嘉田由紀子滋賀県知事ら原発再稼働と直接関係がない自治体首長が批判を展開し、大飯原発のある福井県の自治体が、再稼働に肯定的な立場を取ったのだ。
 だが、野田政権は原発を巡る「住民」と「一般国民」の関係逆転の構図に気づかず、従来通りの手法で進めようとしたために、大飯原発再稼働決定に大変な「政治的エネルギー」を費やすことになってしまった(第41回)。
 安倍政権も原発再稼働を進めている。鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機に続き、1月29日には関電高浜原発3号機(出力87万キロワット)を稼働させた。しかし、震災前に日本国内にあった54基の中で、新基準施行後に再稼働したのはわずか3基である。市民運動による再稼働反対の裁判も頻発している。高支持率を誇る安倍政権でさえ、原発再稼働には従来では考えられないくらい「政治的エネルギー」を費やしてしまっている。
 翻って「沖縄基地問題」も、民主党政権を経て、異なる問題に変質したものの1つである。鳩山由紀夫首相(当時)の「最低でも県外」という公約から始まった普天間飛行場移設を巡る迷走は、沖縄県民の基地問題に対する意識を劇的に変化させてしまった。鳩山首相が公約を破り、自民党政権時に決まった「辺野古への移設」に戻ってしまったことに対する怒りは、「なぜ沖縄県に在日米軍施設の75%が集中しているのか」という、本土に対する「被差別意識」の高まりに変化していったのだ(前連載第49回)。
 しかし、自民党は政権復帰後、沖縄県民が抱く「被差別感情」を考慮することはなかった。辺野古移設については「唯一の解決策」とし、県外移設を求める沖縄県の声には一切聞く耳を持たなかった。
 一方で、普天間飛行場返還跡地へのディズニーリゾート施設の誘致が浮上するなど、沖縄県に対する地域振興策は次々と打ち出してきた。米軍基地の現状維持を前提として、いかにバラマキによって沖縄県民の感情を懐柔するかという、2009年以前の自民党政権と全く変わらない対応に終始してきたのだ。
 だが、安倍政権は、以前の自民党政権時とは異なる沖縄県民の「被差別感情」の高まりを軽視してはならないのではないだろうか。安倍政権が今回の勝利で調子に乗り、普天間飛行場の辺野古移設を強引に進めるならば、沖縄県民の「被差別意識」は更に高まり、それは日本の安全保障上の重大なリスクとなっていく懸念があるからだ。
 ● 沖縄は日本に併合され、琉球人は日本を構成する民族の1つとなった
 日本人は、一般的に日本を「社会的な均質性が極めて高い国」だと思っているようだ。アイヌ民族などの存在を忘れて「単一民族国家」との表現をする者も少なくない。だが、英国で暮らした筆者から見れば、それは「幻想」でしかないように思う。沖縄と本土に関して英国的な見方をすれば、日本人は単一民族ではない。あえて大胆にいえば、日本は沖縄を併合し、琉球人は日本を構成する民族の1つとなったと考えるのが自然だ。
 英国は、正式国名が「グレートブリテンと北部アイルランド連合王国」であり、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4ヵ国の連合国家である。その1つであるスコットランドで、2014年9月に英国からの独立を問う住民投票が行われたのは記憶に新しい(第90回)。
 スコットランドは、元々「ケルト民族」であり、イングランド人の「アングロサクソン民族」とは異なった独自の文化、歴史、伝統、言語を有し、11世紀にはすでに統一王国を形成していて、フランスと同盟を組んで、イングランドに対抗していた。しかし、1707年にイングランドに併合され、「連合王国」の一角となった。
 英国では、スコットランドなどの民族的、文化的、歴史的な独自性を尊重し、広範な自治権が認められている。1999年には、スコットランド議会が設立された。そして、北海油田の収入をベースとする、スコットランド独自の福祉・社会保障政策が充実している。
 英国的な観点でみれば、日本の本土と沖縄の関係は、実はイングランドとスコットランドの関係となにも変わらない。沖縄には、かつて「琉球王国」という独立国家が存在して、琉球人は独自の歴史、文化、言語を持っていたからだ。琉球王国は、ポルトガルなど欧州からも「レキオ」「レキオス」と呼ばれ、国際的に独立国家と認知されていた。19世紀半ばには、アメリカ、フランス、オランダと修好条約を締結していたのだという。
 琉球王国は約600年間存続し、一方日本の沖縄統治は1879年から1945年、1972年から現在までの100年程度である。これは、スコットランドとイングランドの関係と同じように、琉球王国という独立国を日本が併合し、琉球人は「日本を構成する多様な民族の1つ」となったと考えるのが自然なのではないだろうか。
 しかし日本では、沖縄は日本と民族的に一体と考えられており、スコットランドのように歴史、文化、言語の独自性を尊重されているとはいえない。それどころか、日本政府には都道府県の中で、沖縄県にだけ適用される法律・制度がたくさんある。「内閣府沖縄担当部局(旧沖縄開発庁)」「沖縄振興特別措置法」「沖縄振興計画」「沖縄振興開発金融公庫」「金融特区」「特別自由貿易地域」「北部振興事業」などである。要するに、沖縄県に自治は認められず、日本政府の決定の押し付けが続いてきた。
 ● 「琉球独立論」の背後に見え隠れする中国の存在
 以上のような歴史的経緯により、実際に沖縄には「琉球独立論」が存在している。翁長沖縄県知事もこれに強い影響を受けていると言われている。安倍政権は、これを「民族的な同質性が高い日本ではありえない荒唐無稽な議論」として切り捨てるべきではなく、慎重に扱うべきである。
 なぜなら、「琉球独立論」の背後には、中国の存在が見え隠れしているからである。琉球王国は、かつて中国を中核に周辺国家がシステム的に序列化され、決められた通商路、貿易港を通じて中国の朝廷に対する儀礼活動や、経済活動を行う「冊封体制」に組み込まれた国家だったという。そして、琉球王国は、東アジアの中心に位置するという地理上の優位性を生かし、中継貿易のセンターとなり多大な利益を得て、冊封体制の中で朝鮮に次ぐ第2位の地位を維持してきたのだという。
 琉球王国を日本は1879年に併合した。日本ではこれを「琉球処分」と記述するが、実際は独立国であるにもかかわらず日本政府の一方的な命令に従わないことを処罰の理由として、軍事力を背景に強制的に王国を廃し、国王を廃位させたものであった。事実上、日本による「琉球併合」だったといえる。
 これに対して、琉球王国は、1872、74年に使節団を清朝に派遣し、清国との冊封関係の継続を望んだ。独立を維持するために清国を頼ろうとしたのだが、欧米列強の植民地収奪競争にさらされていた清国には、琉球を支援する余裕はなかった。これによって、日本による琉球支配は既成事実となった。
 この歴史的経緯を根拠に、中国には沖縄が日本ではなく中国の領土であるという主張が存在し、中国共産党員やマスメディア、学者や現役の軍人の間に広がりつつある。
 人民日報系の環球時報は「沖縄は明治政府が19世紀末に清国から奪い取ったものであり、日本政府は現在も沖縄人の独立要求を抑え込んでおり、またかつての琉球王国住民の大部分は福建省、浙江省の出身で、言葉も制度も中国大陸と同じだった」とし、「琉球諸島の中国本土復帰」を主張する。中国国内には「日本からの沖縄解放」を主張する団体も存在しているという。
 これは、中国政府が公に主張していることではない。現在のところ、「琉球独立論」の背景に中国がいるというのは、いわゆる「陰謀論」の類でしかないかもしれない。だが、さまざまな国との間の「領土問題」について、自らに有利な論理を一方的に展開していくのが中国の常套手段である。今後、沖縄県民の「被差別意識」が更に高まり「琉球独立論」が拡大するようなことになれば、中国がそれに乗じて沖縄に介入するという懸念もありえないことではない。
 ● 沖縄県民の被差別意識を解消する方法 : 安倍首相の地元「岩国」移設を決断すべし
 安倍首相が「安全保障に関わることは国全体で決める。一地域の選挙によって決めることはない」と言うならば、在日米軍基地の74%が沖縄にあるという「差別」は、まさに国家全体で考えるべき安全保障上の重大なリスクなのではないだろうか。
 沖縄県民の「差別」に対する怒りが、「琉球独立論」に変化し、拡大することがないようにする対策が必要だ。それには、従来通りの地域振興策や基地負担軽減策だけでは不十分である。もっと沖縄県民に明らかにわかりやすい形での「差別の解消」をしなければならない。それは、「普天間基地の県外移設」の実現しかないのではないか。沖縄の米軍基地負担を本土が受け止めるという、わかりやすい形での「差別の解消」を示す必要があるのだ。
 しかし、鳩山政権時にさまざまな県外移設案が浮上し、消えていったことで明らかになったように、本土に米軍基地を新たに受け入れる自治体は存在しないだろう。沖縄に同情するようなことをいう政治家や国民は多いが、いざ自らの地元で受け入れるとなると、口をつぐみ、逃げてしまうのだ。
 そこで、本稿では、安倍首相が、自らの地元である山口県民を説得し、米軍岩国飛行場で普天間飛行場の移設を受け入れるべきだと提案したい。
 現職の内閣総理大臣が、自ら説得のために地元に行き、基地受け入れのために頭を下げるのだ。首相が自ら汗をかいて、最も難しい問題を自らの地元で受け止めて、沖縄に対する「差別」を解消するのである。沖縄の人々に対して、これほど目に見える形で首相と日本政府の誠意を示す行動はない。
 また、世論に対する強烈なアピールにもなるだろう。これまで安倍内閣の支持率は、概ね高い水準で安定していたが、あくまで「他よりはマシ」という「消極的支持」に過ぎなかった。それは、これまで首相が、財政再建や構造改革のための「国民に痛みを強いる政策」を避け続けて「指導力も政治力も必要ない、政策全体へ配慮する知恵も必要ない、誰も反対しない政策」を並べることを続けてきたからだ(第52回)。
 反対論が広がる中、強引に国会を通した「安保法制」でさえ、法律が成立した直後から、「一応総活躍」「新・3本の矢」を打ち出し、バラマキと批判される補正予算を組んで、支持率を維持しようとした(第122回)。安倍首相は事あるごとに、「自らの指導力」を誇るが、実際は本当に指導力が必要な場面からは、逃げまくってきたと言わざるを得ない。
 しかし、安倍首相が普天間飛行場を、地元である岩国に移設する決断をするならば、おそらく内閣支持率は爆発的に急上昇するだろう。今こそ、誰もやりたがらない、最も嫌な問題を自ら引き受ける、首相にしかできない指導力を発揮すべきである。
 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人

『ダイヤモンド・オンライン - Yahoo!ニュース BUSINESS』(2016/2/20)
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160202-00085538-diamond-nb
コメント    この記事についてブログを書く
« 100%再生可能エネルギー... | トップ | 東京「君が代」三次訴訟控訴... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

平和憲法」カテゴリの最新記事