「日の丸・君が代」問題の集会で話す大能清子さん=27日、東京都豊島区で
◆ 女性教師が涙の訴え「生徒の人権のためだった」
~「日の丸・君が代」に従わず、再任用されない春を迎えた(東京新聞【こちら特報部】)
卒業式や入学式での「日の丸・君が代」強制を20年以上続ける東京都教育委員会。今年も、過去に不起立を理由に処分を受けた教員の再任用を拒否した。国際機関は是正を求めてきたが、強制の根拠となる通達は撤回されていない。思想・良心の自由を掲げる教員らは、都教委からの圧力が変わっていない現状を訴える。(宮畑譲)
◆ 年金が支給される年齢になったら…事前通告されてきた
「自分のために反対したのではなく、生徒の人権が守られるために反対してきた。『いてよ』という生徒と引き剥がされる」
27日午後、東京都豊島区内で行われた集会で、新年度の再任用を打ち切られた大能清子さん(64)が涙ながらにやるせない思いを訴えた。定年後も都立高校定時制の教諭として、進路指導に従事。新年度以降も再任用を望んでいたが、今年1月に打ち切りを告げられた。
2017年春の卒業式で起立をしなかったことから、戒告処分を受けた。20年以降、そのことを理由に、公的年金が支給される年齢に達すれば再任用を更新しないという「事前告知」を毎年受けてきた。
「事前告知は気持ちの重しだった。気持ちが揺さぶられ、働くのが嫌になった。それでも生徒の顔を見ると気持ちが奮い立って続けてきた。多くの人が再任用される流れがあるのに、こんなことになるとは」
◆ 起立しなさそうな教員は外される?
入学式・卒業式で教職員が「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」と規定し、従わない場合は責任を問うことを明記した通達が出されたのは03年。石原慎太郎都政時代のことだ。同年度の卒業式で、193人が戒告や減給の懲戒処分を受け、翌年度の入学式で210人が処分された。これまでに処分されたのは484人に上る。
都教委によると、通達に基づき処分が行われたのは、17年度の都立高校の卒業式が最後。本年度の卒業式でも行われなかった。都教委は取材に「通達に基づいて次年度以降も適切に卒入学式を実施していく」と説明し、通達を撤回する予定はないとする。
27日に行われた集会では、入学式や卒業式で、起立しなさそうな教員をあらかじめ関係する学年から外す傾向があるとの訴えもあった。生徒についても、式中に起立を促すよう都教委が指導しているという。元都立高校教諭の川村佐和さん(65)は「参加者全員の起立を徹底させようという都教委の意図を感じる。各学校の裁量をなくし、管理を徹底しようとしている」と述べた。
この日は、東京地裁で係争中の処分取り消しを求める第5次訴訟の原告も「現状が嫌で今年で非常勤を辞めることにした。やりきれない」「日の丸・君が代は軍国主義のシンボル。強制しないでほしい」などと声を上げた。
過去には、国際労働機関(ILO)と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の合同委員会などが日の丸・君が代の強制に是正勧告を出している。勧告内容の実施を求める市民グループは昨年10月、勧告の意義などをまとめたブックレットを出版。今年4月7日には、国際社会から見た教員の権利と思想・良心の自由について考える集会を都内で開く。
ブックレット執筆者の1人で、国際人権団体で活動する寺中誠さん(64)は「強制は国際人権法上認められていないのに、日本政府は勧告をほとんど無視してきた。各教委に正式な通知すらしていない。異常な状態を早く解消しなくてはいけない」と話す。
『東京新聞【こちら特報部】』(2024年3月28日 12時00分)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/317744?rct=tokuhou
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