《被処分者の会通信から》
◆ 2023年卒入学式の状況
卒入学式対策本部 川村佐和
「10・23通達」が出されてから20回目の卒入学式が終わった。今年の卒業式はコロナ禍の下行われる四度目の卒業式だった。
都教委は12月19日付の「通知」で「マスク着用を徹底する」「歌唱等は行わない」という方針を示した。
昨年は参加もしなかった「都教育委員会・PTA・来賓」の「挨拶」も明記されていた。
コロナ対策が緩和に向かう中、文科省は2月10日に「マスクを外すことを基本とする」という卒業式に関する通知を出し、マスク着用などの感染対策をした上での歌唱は認めるという方針を示したが、都教委は2月10日付で、「教職員と生徒は式全体を通してマスクを着用しない。保護者と来賓はマスクを着用してもらう」としながら、「歌わない方針」は維持する「通知」を出した。
こうして歌唱はせず、CDを立って聞くだけの「国歌斉唱」が今年の卒業式でも行われたが、入学式ではコロナ前のように「国歌斉唱」の歌唱が実施された。
3月31日(金)「卒業式総括集会」が行われ、52名もの方が駆けつけてくださった。
まず、澤藤弁護士からセアートの勧告についての報告があった。セアートからは2019年、2022年と二度にわたって、学校現場での国旗国歌強制問題について勧告が出されたが、都教委は一貫して「当委員会宛に送られたものではないので、見解を述べる立場にはない」と勧告を無視。こうした態度は日本を人権後進国として印象づけるものであり、
「教員の国旗国歌強制の拒否も、市民的不服従として許される」
「消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に制裁を科してはならない」
という勧告に自信をもって闘っていきたいと澤藤弁護士は締めくくった。
国連自由権規約委員会勧告については、国際人権プロジェクトチームを代表して、新井さんが報告してくれた。
「できるだけかみ砕いてわかりやすく」という卒入学式対策本部からの無茶ぶりにも快く応じていただき、“そもそも国際人権条約とは”というところから説明をはじめ、16年間にも及ぶ取り組みの重みとその成果を非常にわかりやすく伝えてくださった。
「委員会は日本の司法の場での規約の扱いを注視している」という新井さんの言葉に私は大いに励まされた。
後半は、今年の卒入学式の状況の説明に続いて、平松弁護士から五次訴訟の状況についての報告があった。東京「君が代」裁判五次訴訟は、今東京で行われている唯一の「君が代」裁判である。
集会参加者の期待も大きく、
「3月14日の都議会文教委員会での、とや英津子議員の、セアート勧告・自由権規約委員会勧告についての質問で明らかになった勧告への都教委の不誠実な対応について問題にすべき」
「東京都が一昨年こども基本条例をっくったが、生徒に起立を促すのは、こどもの最善の利益の確保、こどもの意見の尊重を一般原則とするこども基本条例に違反しているのではないか」
「憲法には国際条約を遵守すべきとある。裁判所には条約実現義務があるのではないか」
などといった質問・意見が相次いだ。
五次訴訟の原告3人の発言があった。
鈴木さんの「第8回、第9回弁論で、昨年出された二つの国際的な勧告と行政手続法違反という新たな争点を主張している。五次訴訟が最後の君が代裁判になると思うので、できることは何でもやって、なんとしても勝ちたい。」という言葉は、五次訴訟にかける原告の思いを代表する力強いものだった。
「10.23通達が出たとき、新たな戦前の始まりだと危惧したことが今や確信に変わりつつある。」と司会が閉会の挨拶で述べたが、新たな戦前にしないために私たちができることは、なによりも五次訴訟を始めとした「10.23通達」撤回を目指す取り組みを、これからもあきらめずにやり続けることなのではないだろうか。
『被処分者の会通信 第143号』(2023年4月14日)
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