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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 経済分野でも「戦争する国」づくりを進める「経済秘密保護法案」

2024年04月03日 | 平和憲法

 ☆ 危険な「経済秘密保護法案」
  ~秘密保護法対策弁護団共同代表 海渡雄一弁護士へのインタビュー (「救援新聞」)

 岸田政権は、秘密保護法を経済分野まで拡大する経済秘密保護法案(重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案)を2月27日に国会に上程し、今国会での成立を狙っています。この法案の危険性について、、秘密保護法対策弁護団共同代表の海渡雄一弁護士にお話を聞きました。

 ☆ 「安全保障」を経済にも拡大

―――この法案では、「経済安保情報」というあまり聞きなれないものが対象になっていますが。

海渡 「経済安保情報」の経済安保という概念は、2022年に成立した経済安全保障推進法(経済安保法)によるものです。この経済安保法は、「安全保障」を軍事だけでなく、経済分野にも拡大するためのものです。
まず、経済安保法の中身を説明しましょう。

①重要な物資(レアメタルや半導体、医療品の原料など)の安定供給を確保するため、サプライチェーン(供給連鎖)の強靭(きょうじん)化をすすめる。
②基幹インフラ役務の安定的な提供の確保。そのために15の事業(*)の管理統制を強める。
③軍民両方で使えるような重要技術の研究開発の官民協力
④原子力や武器に関する技術の特許の非公開

 この法律の狙いはなにかといえば、経済分野で中国への依存を減らし、中国製のインフラを排除し、「脱中国化」することにあります。
 当然排除すれば中国が対抗的な措置をとることが予想されるので、サプライチェーンの強化をすすめておく。また、岸田政権は軍事兵器を海外に輸出しようとしていますが、デュアルユース(軍民両用の技術)の開発をすすめることも大きな狙いです。結果的に米国への依存を強めることになります。
 アメリカでは、中国を排除する法整備を2018年から本格化させ、中国系企業のファーウェーなど5社の製品を使う企業が政府と取引できないという状況もあります。

*15事業=電気通信、放送、金融、航空、空港、鉄道、電気、ガス、水道、貨物自動車運送、外航貨物、港湾運送、クレジットカード、石油、郵便


 ☆ 秘密保護法が暮らしの中に

―――それでは経済秘密保護法案について。

海渡 法案の内容を説明します。

①政府が保有する経済安保情報で、特に秘匿が必要なものを「重要経済安保情報」に指定する。
その情報を取り扱う者(国家公務員、民間人)を、政府が調査し、漏えいのおそれがないかなど適性を評価する(セキュリティ・クリアランス)。
情報を漏えいした者を処罰する。「重要経済安保情報」を漏えいなどした場合は5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金刑。とくに安全保障に「著しい支障」を与える恐れのある情報で機密性の高い経済安保情報については「特定秘密」として、秘密保護法を適用する(10年以下の拘禁刑)。

 秘密保護法は、外交、防衛、テロ、スパイ活動の4分野で「特定秘密」に指定しています。今回、秘密保護法の改正は提案しませんでしたが、実際には、5分野目に「経済安保」を加えるものです。適性評価も秘密保護法と同様です。今回の法案は「経済安保版・秘密保護法案」です。

 ☆ 法案の問題点

―――法案の問題点について。

海渡 第1に、そもそも「経済安保」の定義が不明確で、そのため「経済安保情報」も政府の解釈で恣意的に拡大され、「秘密」が無制限に広がるおそれがあります。国民の暮らしに関わる経済情報で、政府に都合の悪い情報が隠蔽され、市民の知る権利が侵害されてしまいます。そのことは、民主主義を歪めることにつながります。
 第2に、「重要経済安保情報」の漏えいや取得行為にっいて罰則を科すため、ジャーナリストや市民が情報を得ようどする場合に萎縮効果が生じ、知る権利を害します
 第3に、さきほどお話した秘密保護法の大幅な拡大です。
 第4に、セキュリティ・クリアランス(適性評価)によって、広範な民聞人、家族も含めて、身辺調査がおこなわれることになります。
 第5に、「重要経済安保情報」の指定について、国会での審査・報告がなされません

 ☆ 広く民間も

―――以府機関だけでなく、民間企業を含め、広範な労働者や研究者が適性審査、身辺調査の対象となることが予想されます。憲法に保障されたプライバシーを侵害することになります。アメリカでは4OO万人以上もの人が適性評価を受けているとされていますが。

海渡 アメリカの適性評価では国への忠誠心が評価されます。日本でも、事実上、国や企業への忠誠が求められることになります。
 秘密保護法では、適性評価の対象者は、主に公務員、それも防衛庁職員や公安警察官など限られた人たちでしたが、今回は、中小企業も含め、一般の民間企業で働いている、国家機密とは縁のない人たち・家族が適性評価の対象とされます。調査内容も、思想・信条を含めプラバシーに関わる情報が調査されるこどが予想されます。対象者の規模も、数十万人とも言われ、大幅に拡大されるごとになります。

 調査方法(図参照)は、企業が政府と「経済安保情報」を含む事業を契約する場合、企業は適性評価の対象となる役員・社員の名簿を政府に提出します。その名簿にもとづき、政府の機関(内閣情報調査室や公安警察など)が適性評価を実施し、企業には結果のみが報告されます。
 もし労働者が適性評価を拒否すれば社内での評価に影響するため、労働者は拒否できません
 会社として適性評価を断れば契約そのものが結べなくなります
 この法案により内閣総理大臣のもとに設けられる新たな大規模な情報機関に適性評価対象者の膨大な個人情報が蓄積されることとなります。このような仕組みは、デジタル監視法によってすべての情報を内閣総理大臣のもとに一元化しだ仕組みを前提とするものです。数十万人の身元調査ができる仕組みは、恣意的に運用されれば、大変なプライバシー侵害を招きかねません。

 ☆ 力あわせ廃案に

―――最後に。

海渡 今回の法案は、経済の国家統制を強め、軍産学共同の軍事国家化を進め、経済分野でも「戦争する国」づくりを進めることが狙いです。「経済安全保障」という名で広く情報が秘密のべールで覆い隠されることで、市民が政府の経済政策を検証できない社会になってしまいます。秘密保護法が、私たちの暮らしのなかに浸透し、監視社会がいっそうすすむことになります。
 力をあわせて廃案に追い込みましょう。

―――ありがとうございました。廃案めざしがんばりましょう。

『救援新聞』(2024年3月15日)


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