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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 根津公子の都教委傍聴記(2024年3月28日)

2024年04月02日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

  《根津公子の都教委傍聴記(レイバーネット日本)》
★ パブリックコメントを募集はしても、反対意見には耳を貸さない都教委

 公開議題は、「都教委は東京の教育をよくするためにこれほどたくさんの施策を提言します」とばかりの議案と報告がなされました。
 議案が、①「東京都教育ビジョン(第5次)」の策定について ②「東京都学校教育情報化推進計画」の策定について、
 報告が、③高校生いじめ防止協議会について ④SOSの出し方に関する教育の推進について ⑤日本語指導推進のためのガイドラインについて ⑥「都立高校の魅力向上に向けた実行プログラム《令和6年更新版》」について ⑦「学校部活動の地域連携・地域移行に関する推進計画」の改訂について。
 報告③~⑦は、①「東京都教育ビジョン(第5次)」が謳う内容の具体化指針であり、文科省が掲げてきたものです。ですので、ここでは①②について報告します。

 ★ ①「東京都教育ビジョン(第5次)」の策定について

 2月1日の定例会でこの素案が示され、2月いっぱいパブリックコメントを募集し、「パブコメやアンケートによる子どもの声を受けて一部修正した」(提案者)という同ビジョンが示されました。
 パブコメは中学生7人、保護者19人、学校関係者73人、その他30人の計146人から寄せられたと言い、寄せられたコメントの要旨とそれに対する都教委の考え方が一覧で示されました。
 パブコメが公表されたのは初めてのこと、画期的と期待しながら読みましたが、都教委の考えに反対するパブコメに対しては、考え直す視点はありません。反対意見から学ぶことこそがパブコメの意義のはずなのに。何のためのパブコメ?、そしてその公表?、まさか、民主的な都教委を印象付けるため?と思わざるを得ません。
 いくつかを挙げてみます。

教科担任制は教員の負担軽減にならないので、必要ない」との学校関係者(教員)の意見に都教委は、

「教育の質の向上と教員の負担軽減を図るため、専科教員の加配による小学校高学年の教科担任制を、R10年度までに12学級以上の全小学校へ導入する予定です」と自説を変えません

「不登校の児童・生徒への対応は必要だが、なぜ不登校が増加するのか、彼らが通えるようになるには学校をどう変えていけばよいのかを考えて、学校そのものを改革していく必要がある。誰にとっても通いやすく居心地の良い学校作りが最終的な目標であることを忘れてはならない」との「その他」(教育関係者や保護者ではない人)の意見には、

「都教委は、不登校の子供(ママ 子ども)一人ひとりの状況に応じ、多様な学びの場を確保できるよう、学校、家庭、その他の教育機関における支援の充実を図っています」。「なぜ不登校が増加するのか、彼らが通えるようになるには学校をどう変えていけばよいのかを考えて」の意見にはダンマリです。こここそが大事というのに。

過剰な校内研究を減らしてほしい」との学校関係者の意見には、

「小中学校において、校内研究の規模や内容については、各学校が、実態に応じて決めています。都立学校において、各学校は、通常業務の負担にならない範囲で、組織的に校内研修等を実施し、授業改善に努めています」。
都教委からの指導・助言(実際は圧力)を受けて区市町村教委は校長たちに「過剰な校内研究」を指導・助言しているのに、都立高の校長もまた、都教委の指導・助言を受けて間違いなく「過剰な校内研究」を要求されているのに、こう言い逃れます。

「不登校経験のある生徒のニーズに適切に応えるには、チャレンジスクール及び昼夜間定時制高校受入規模の拡大だけでは不十分である。また、外国にルーツを持つ日本語が不自由な生徒や、大規模な集団生活になじめない生徒が増えている中で、少人数の夜間定時制は彼らが安心して学べる場として有効である。生徒や志願数だけでは測れない重要な役割を認識するとともに、夜間定時制高校を必要としている人へ配慮し、夜間定時制高校の継続・充実を求める」との学校関係者、その他の意見には、

「夜間定時制高校の入学者の状況は、夜間定時制高校を当初から希望する生徒の応募倍率が、令和5年度には0.26倍まで低下しています。(中略)このような、学校・学級規模の極端な小規模化は、ホームルーム活動や学校行事などの特別活動が低調になり、集団活動を通した教育効果が十分得られないことが懸念されます。また、多様な生徒同士の困難な状況となります。都教委は、不登校経験のある生徒の増大等、困難を抱える生徒のニーズに適切に応えられるよう、チャレンジスクール及び昼夜間定時制高校の受入規模を拡大するなど、受け入れ環境の充実を図っていきます。(後略)」。
夜間定時制高校廃校を方針とする都教委は、反対意見には耳を貸さないことがわかると思います。

 さて、「東京都教育ビジョン(第5次)」は、国が定めた「教育振興計画」を参酌し、今後5年間の施策展開の方向性を示した、全ての教育関係者の「羅針盤」であり、「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って自ら伸び、育つ教育」をめざし、「自ら未来を切り拓く力の育成」「誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実」「子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化」の3つの柱を立て、特に「教育のインクルージョンの推進、困難を抱える子供へのサポートの充実等の内容の強化」を謳います。

 柱の1つめ、「自ら未来を切り拓く力の育成」では、これまで都教委が施策の目玉としてきた「Society5.0時代を切り拓くイノベーション(革新、変革 筆者加筆)人材を育成する教育」や「グローバルに活躍する人材を育成する教育」をあげ、前者では企業や大学との連携等を、後者では海外留学の推進やスピーキングテストの実施とその結果を高校入学者選抜に使うことを挙げています。
 スピーキングテストを高校入学者選抜に使うことについては、保護者や当事者である中学生から反対の声があがっているのに、また、パブコメにも意見があがったのに都教委は反対する声には無視を決め込みます。

 柱の2つめ、「誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実」は、都教委が最も力を入れると言いますが、「健常児」と「障害児」を分ける姿勢は変えずに、「障害のある子と障害がない子(特別支援学校と普通の学校)の交流活動を推進する」と言います。
 多数となる障害のない子どもたちが交流で持つのは同情心でしかないでしょう。その点を都教委は再考すべきです。
 また、夜間定時制高校閉校の方針も変えません。「誰一人取り残さない」の言葉だけがむなしくさまよいます。

 柱の3つめ、「子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化」では、「教員の負担軽減と教育の質の向上を図るため、小学校教科担任制や(授業)時数軽減、外部人材の活用等の推進」等をあげます。
 また、病気休職者が多く(1,7%)その多くがメンタルヘルス不調という現実。これについては、「臨床心理士等による面談事業を実施する」と言います。
 パブコメの中にも「パワハラを行なう管理職をしっかりと取り締まり、メンタル不調による休職者を減らす努力をしてほしい」と言う学校関係者の意見があります。教育委員会の言いなりになっている管理職が、自分より「下」の教員を侮辱しパワハラで憂さを晴らすのでしょう。

 1990年代までのように職員会議で話し合い、学校をつくっていたときにはパワハラはまずありませんでした。職員会議で意見を交わし合う中、教員たちは互いに学び合い、仕事の質を高めることもできました。
 ですから、採用試験の倍率も高く、今のような教員不足はありませんでした。都教委は、そこから学ぶべきです。

★ ②「東京都学校教育情報化推進計画」の策定について

 「東京都学校教育情報化推進計画」は「学校教育の情報化の推進に関する法律」(2019年文科省)を踏まえて策定したもので、「東京都教育ビジョン(第5次)」の分野別計画ということです。来年度から5年間が、その期間とのこと。
 これについても、都民へ意見を募集し56件の意見が寄せられたとして、その意見要旨とそれに対する都教委の考え方が示されました。
 学校関係者から寄せられた意見には、

「計画を作る際にはぜひ継続的に実態を把握していくことを盛り込んでほしい。現場からすると、やることが非常にてんこ盛りな状態だと思う。『何をやるか』だけではなく、『何を止めるか』『何をやらなくていいか』まで踏み込んだ計画を立ててもらいたい」「教員が多忙な状態のまま研修ばかりが増えることがないようにしてほしい」といった多忙さへの悲鳴があがっています。

 同推進計画は、次の4つの方針を出しています。

ア.ICTを活用した児童・生徒の資質・能力の育成
イ.教職員のICT活用指導力の向上と人材の確保
ウ.ICTを活用するための環境の整備
エ.校務の改善とICT推進体制の整備

 アでは、「デジタルを活用したこれからの学び」は、旧来の「教員が一方的に話し、子供はそれを聞いている」「教員が学び方を細かく指示する」授業ではなく、「子供が主体的に学習活動をしている」「子供が自分で決めた方法で調べ、考える」授業に変わると言います。
 こうした授業にするために、教員は研修に精を出さねばならなくなるのは必至です
 さらに多忙となりますが、都教委は、「エの校務の改善とICT推進体制の整備をすることによって多忙は改善される」と言い、その施策として、「生徒の欠席情報登録や保護者へのおたより背信の電子化」「保護者が学校に提出する書類の電子化」「教職員の会議資料の作成など公務における生成A1活用方策についての研究・推進」「テレワークや時差勤務等を活用する新たな働き方」「統合型校務支援システムと採点分析システムとの連携等により、成績処理等の作業効率の向上」を挙げます。

 授業でICTを活用する頻度が2日に1回以上使う教員の割合が今年度(2023年度)は66,0%に上ったとのことです。ICTを使うことでわかりやすい授業になることはありますから、ICTを使うことを全面否定はしません。
 しかし、文字を覚え始めた小学生が鉛筆で文字を書くことが減ることで、手が文字を覚えなくなるのではないかということも、私は気になります。

『レイバーネット日本』(2024-03-29)
http://www.labornetjp.org/news/2024/0328nezu


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