パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 都教委が管理統制強化孕む学校働き方改革実行プログラム案を公表

2023年12月21日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

23年11月24日の都教委定例会で学校働き方改革実行プログラム中間まとめの報告を聞く教育委員ら
 ★ 「教員の誇りとやりがい」謳うも、管理職と主幹教諭の優遇に偏重 (マスコミ市民)

永野 厚男(教育ジャーナリスト)

 本誌10月号で、2023年8月28日の文部科学省・中央教育審議会〝質の高い教師の確保特別部会〟で、部会長の貞広斎子(いつこ)千葉大教授が永岡桂子(けいこ)文部科学大臣(当時)に手渡した〝学校働き方改革〟等の『提言』(以下『文科提言』と略記)の問題点を、分析・批判した。
 一方、東京都教育委員会は03年10月、公立小中高校等の卒業・入学式で、教職員に〝君が代〟起立・斉唱強制を強化する〝10・23通達〟を発出し(不起立・ピアノ不伴奏教職員延べ484人を懲戒処分に)、06年3月には生徒に〝君が代〟時に起立・斉唱させる〝指導〟を強制する〝3・13通達〟まで発出し、学校への管理統制を強めている(但し良心ある現・元教職員の頑張りで、これまで最高裁等で、減給・停職処分77件・66人の処分取消し判決を勝ち取っている)。
 その都教委は23 年11月24日の定例会で「次代を担う子供たちの豊かな学びと健やかな成長に向け、東京都の公教育に従事する全教職員が、心身ともに健康で、やりがいをもって生き生きと働けるよう、働き方改革を推進。健康的な職場環境の実現に取り組んでいきます」(以下引用は、要旨とする)との〝宣言〟文を議決。この後、矢野克典(かつのり)人事企画担当部長が「宣言文の実現に向けて、これまでの働き方改革に関する取組を着実に進めるとともに、今後、集中的に取り組むべき具体的な対策を取りまとめ、学校における働き方改革を更に加速していく、実行プログラム」の『中間まとめ』(以下『都実行プ』と略記。都教委HPに掲載)を報告し、12月23日までパブリックコメントを行った。以下、分析する。

 ★ 政治色・国家主義色濃い〝調査〟は有害だと明記すべき

 筆者は本誌10月号で、文科省や都教委が学校現場に下ろしてくる調査もの(当然ながら集計や詳細な報告義務に労力・時間を要する)は、いじめや体罰、性被害問題等、児童生徒のためになる調査は必要だしむしろ充実させるべき、しかし、(1)卒業・入学式等の〝君が代実施率・実施状況〟調査、(2)自民党・下村博はくぶん文氏の文科相当時の3回にも及ぶ、文科省発行道徳副読本(〝国を愛する態度〟も盛る)の配布・活用調査、(3)自民党・義家弘介(よしいえひろゆき)氏の国会質問に起因する「職員会議での議決方法の点検・調査」――等、政治色・国家主義色の濃い〝調査〟は、教職員を多忙化させる上に、権力側が教育内容に介入したり教育の国家統制に直結したりする目的だから、全廃するべきだと指摘した。
 『都実行プ』15頁は、「都教委は平成31年に調査ルールを策定し、調査の縮減に取り組んできたが、令和4年度に実施した都立学校教員勤務実態調査では、調査への回答等に負担感を感じている教員は約8割にのぼる」と、一般論としては、調査ものが多忙化の原因であることは認めている(『文科提言』も同)。
 しかしこの記述では極めて不十分。〝君が代〟等、政治色・国家主義色の濃い〝調査〟や、後掲の「×印」に3件示す都教委の特異な政策等の押し付けこそが、「教員一人一人が誇りやりがいをもって職務に従事できる環境」(『都実行プ』3頁・6頁にある文言)を大きく損ね有害なのだ。
× 前記・調査へのプレッシャーにより、校長らが「卒業式前日等の予行演習や音楽の授業での〝君が代〟起立・斉唱の〝練習〟徹底。→『都実行プ』は9頁で「学校行事の準備・運営は、教員の業務だが、負担軽減が可能な業務だ」と分類した19年の中教審答申を載せている。卒業式等は〝君が代〟は一切なしにし(国旗は式場内三脚掲揚だけにし)、児童生徒が思いを語ったりスライド上映したりする時間に回す方が、大多数の児童生徒や保護者、教職員にとっては嬉しいはずだ。
× 都教委高校教育指導課・江本敏男課長(当時。現江北(こうほく)高校校長)らが防災教育推進都立高校からピックアップする等し、13年7月26日~ 28 日に田無(たなし)工業高ラグビー部等の男子生徒34人を陸上自衛隊朝あ さ か 霞駐屯地に、14年11月26~28日に大島高校2年生全員を対象に(全35 人中19人が拒否し、図書室で課題学習)同武山(たけやま)駐屯地に、〝宿泊防災訓練〟だと称し引率し、自衛隊東京地方協力本部の瀧澤(たきざわ)健二3等陸佐(当時)が「気を付けー。回れー右! 前へ、進め!」等号令をかけ行進訓練させたり、「自動小銃を手に、鉄帽・迷彩戦闘服で突撃してくる自衛隊員らの写真」を生徒に7枚も見せ、〝国防の任務、抑止力〟、即ち〝防災〟と無関係な軍事力に言及。→詳細は本誌14年4月・9月号、『週刊金曜日』15年3月6日号の拙稿。
× 都教委高校教育指導課・佐藤聖一課長(当時。現八王子東高校校長)らが19年11月9日、東京国際フォーラムで開催した「第2回都立高校生等ボランティア・サミット」等で飾るため、全日制の都立高全178校に東京五輪大会の参加国・地域を割当てし、「国旗を配色した千羽鶴を製作」せよと強制した。折り鶴計500羽を折るだけに留まらず、それらにビーズに通した糸を針で通しつなぎ合わせる作業ゆえ、サミットに生徒を引率した教員の5~6人もがアンケート(都民が開示請求で入手)に、「働き方改革が問われている現在、千羽鶴は現場に多大な負担だ。常軌を逸している。お金と時間の無駄遣いである本イベントは、廃止すべき」等、反対意見を明記している。→詳細は『月刊紙の爆弾』20年10月号の拙稿。

 ★ 副校長・主幹教諭には四重の〝恩恵〟。一般教諭には?

 学校の教職員について「校長、教頭、教諭」等の設置を規定していた学校教育法に、第1次安倍政権は07年、「副校長、主幹教諭(略)を置くことができる」を加筆した。だが都教委は、国に先駆け学校管理運営規則を改定し、03年4月から主幹教諭を配置。主幹教諭(当初の名称は主幹。管理職への〝登竜門〟だと言う人も)を、東京都の多くの小中高校等の校長が教務・生活指導の2分掌の主任に任命している(中高の進路指導主任、更に全日制高の各学年主任まで主幹教諭が占める学校も)。また04 年4月から教頭の名称を廃止し、副校長と称させ権限を強化。上意下達の学校作りを一層進めた。
 この副校長等について、『文科提言』は①教員業務支援員の全小・中学校配置、②副校長・教頭マネジメント支援員(副校長の退職者等を期限付きの会計年度任用職員で採用)を新規で2350人配置、③管理職手当を月に約5千円~1万円増額、主任手当は勤務日一日ごとに200円から400円に倍増――を主張している。副校長や主幹教諭の給料表は一般教諭より高額なのに、更なる「手当大幅増」は優遇しすぎだ。
 一方、『都実行プ』は4頁・10頁・21頁で、①を〝スクール・サポート・スタッフ〟と名付け、「全小・中学校に各1名配置できる規模の予算を確保しており、9割超の小・中学校に配置している。平成30年度400人 → 令和5年度1971人」と記述。だが教員免許状を持たないため、仕事内容は「学習プリント印刷など教員の授業準備をサポート」と、単純作業だとしている。しかし近年、ICT推進で一般教諭は印刷物が大幅減(【注】参照)ゆえ、教員の多忙解消にはほとんど役立たず、実際は(副)校長・教頭の雑用係だ、と言えよう。
 『都実行プ』は4頁・10頁・21頁・22頁で、②を〝副校長補佐。学校マネジメント強化事業の実施〟と名付け、「配置規模は令和元年度134校→令和5年度1028校。行政機関からの調査対応や教職員の服務管理、来客対応等の業務を実施しており、約千校に配置している」と主張。都教委のこの主張からは、「副校長補佐を付けてやったのだから、前記(1)~(3)のような政治色の濃い調査であっても、文句を言わず回答しろ」という〝論理構成〟になりかねない。

 また、『都実行プ』7頁・17頁は③について、23年6月の政府の〝骨太方針〟の「職務の負荷に応じたメリハリのある給与体系の改善」なる美辞麗句を引用、〝処遇改善〟と称し、「管理職手当や主任手当の支給額の見直し、新たな手当の創設(略)等に関する国の検討状況を踏まえ、対応を検討」と主張。「文科省・都教委に従順な出世コース」と一般教諭との、カネでの格差拡大を謀む。
 ④〝出世コース〟には更なる〝恩恵〟も。『都実行プ』15頁は「(前記都教委の)都立学校教員勤務実態調査で、副校長はもとより、主幹教諭等についても校務分掌等の学校経営に関わる業務に多くの時間を要しており、その負担軽減・業務の効率化が求められる」と主張。①~③で優遇を受ける副校長主幹教諭仕事内容を、①②の人たち以外に割り振るとしたら、背負わされるのは一般教諭になってしまうのではないか。
 ところで、『都実行プ』15頁が「副校長等の業務の権限移譲等について検討」と主張する「権限移譲」先が、もし主幹教諭(都教委が導入時から「監督層だが管理職ではない」としてきた)だとしたら、主幹教諭が〝管理職化〟し、ピラミッド型の学校作りを加速させるので、危険だ。
 以上の都教委のやり方では、『都実行プ』18頁が「東京都公立学校教員の新規採用者の離職率は約4%。また毎年1%程度の教職員が精神疾患により休職している」と嘆く状況は、改善できない。いや、それどころか、もっと悪化するだろう。

 筆者は①~④の全てを廃止・白紙撤回した上で、対案として国レベルで正規の教員(主幹教諭ではなく、一般教諭)の定数を大幅増し、早期に全小中高校等に配置するよう求める。 なお、『都実行プ』18頁の前記「新規採用教員の離職率約4%」等を嘆いている下りは、「教員同士のコミュニケーションを円滑化(略)すること(略)が求められている。(前記都教委の)教員勤務実態調査では、4割超の教員が同僚や先輩に気軽に相談しづらいと答えている」と、教員同士の同僚性の欠如を指摘している。
 しかし「管理職→主幹教諭(監督層)→主任教諭→一般教諭」という職階制の徹底により、同僚性を奪いパワハラも起こる事態を生み出した元凶は、都教委ではないか。「都立学校において、職員室の環境改善を一層推進」と改善策らしき主張をしているが、空虚に聞こえる。

【注】『都実行プ』は16頁で「Teams等を活用し、教員間の資料共有や児童・生徒への配布物の電子配信を推進。保護者コミュニケーションシステムを段階的に導入し、児童・生徒の欠席情報登録や保護者へのお便り配信の電子化を推進。ペーパーレス化等を推進」と繰り返している。因みに23年11月15日の中教審〝特別部会〟では、〝印刷〟を「教員業務支援員の仕事」の前面に出してきた文科省財務課提出資料に対し、戸ヶ﨑勤・戸田市教育長が「DXが進む中、いかがなものか」と苦言を呈していた。

『マスコミ市民』(2024年1月号)

 



教育ジャーナリスト・永野厚男から皆様にお願い、
12月23日(土)の夜までに都教委の『学校働き方改革プログラム中間まとめ』反対の パブコメを送信して頂ければ幸いです。

 「小中高校等の卒業式等や小中の音楽の授業」での"君が代"起立・斉唱強制、都立高校での陸上自衛隊連携"宿泊防災訓練"強制等によって、多忙化と共に「教職員の誇り・やりがい」を大きく損ねている東京都教育委員会が、図々しくも「教職員の誇り・やりがい」のための「学校働き方改革」だと称し、その「プログラム」の『中間まとめ』を公表。

 12月23日(土)まで、後掲の「※印」の都教委HPの要領で、「WEBの都教委のURL又はQRコードから提出フォームにアクセスす方法」等で、パブコメを募集中です。
 都教委に忠実な(副)校長や日本会議の右翼らが、「都教委万歳」の組織的パブコメを集中させている危険性が大。
(因みに文科省の2008年の学習指導要領改悪のパブコメでは、あの安倍晋三氏ブレーンの61歳・八木秀次氏らが組織的パブコメ工作を大展開し、小学校音楽指導要領の"君が代"を「いずれの学年でも歌えるよう指導する」と、"到達目標明示"型に大改悪してしまいました。皆様も記憶に新しいと思います)
 そこで、皆様にお願いです。教育ジャーナリスト・永野厚男が都教委の『学校働き方改革プログラム中間まとめ』を分析・批判した、最新の『マスコミ市民』2024年1月号の
――都教委が管理統制強化孕む学校働き方改革実行プログラム案を公表~教員の誇りとやりがい」謳うも、管理職と主幹教諭の仕事量・カネ両面の優遇に偏重――
の記事を参考に、12月23日(土)の夜までに、「WEBの都教委のURL又はQRコードから提出フォームにアクセスす方法」等で、パブコメをいくつか送付して頂ければ幸いです。


※東京都教育委員会HPから
 《御意見募集》「学校における働き方改革の推進に向けた実行プログラム」 中間のまとめについて
 公開日:令和5年(2023)11月24日



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