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2019年第62回日弁連人権擁護大会・決議集から

2019年10月11日 | 人権
  《日弁連人権擁護大会から》
◎ 個人通報制度の導入と国内人権機関の設置を求める決議

 ※決議全文 (PDFファイル;208KB)
 国際社会は、二度にわたる世界大戦を経て、再びそのような惨劇を繰り返さず、恒久平和を実現するためには、各国における人権の確保が不可欠であること、また、歴史上まれに見る人権侵害が国内的には合法的に行われたことに鑑み、国内における人権問題を各国の自律に委ねるのではなく、国際的に人権保障を確保するシステムの構築が肝要であることを深く理解した。
 そして、1945年10月には国際連合が設立されるとともに、1948年12月には世界人権宣言が採択された。そして、世界人権宣言でうたわれた人権保障をより具体化する作業として、国際連合では現在に至るまで、20を超える国際人権条約が採択されてきた。
 国際人権条約には、国際人権条約で保障された権利を侵害された者が、国内で裁判などの救済手続を尽くしてもなお権利が回復されない場合に、人権条約機関に直接救済の申立てができる手続である個人通報制度が付帯され、日本が批准している国際人権条約のうち、計8条約にも個人通報制度が付帯されているが、日本はいずれの個人通報制度も導入していない。
 そのため、日本の裁判所はその判断が条約機関から批判されることがないことから国際人権条約に対する理解が不十分であり、その結果、法律よりも優位にあるはずの国際人権条約が、日本の裁判実務において、直接適用されることがなく、また、国内法の解釈においても、ほとんど判断の基準として採用されていないという事態が生じている。
 また、世界では、当該国に居住する者であれば国籍の有無にかかわらず、侵害された人権の回復を求めていくことのできる国内人権機関が多くの国で設置され、1993年の国際連合総会においては、国内人権機関がその権限や構成、独立性等において具備すべき基本的な要素について示した、人権の促進及び擁護のための国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則)が決議された。
 現在、国際連合加盟国のうち、既に120か国以上において国内人権機関が設置されているが、日本では、国内人権機関そのものがいまだに設置されていない。
 そこで、当連合会は、国に対し、以下のとおり求める。

 1 個人通報制度を直ちに導入すること。

 日本が批准している、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、「子どもの権利に関する条約」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」及び「障害者の権利に関する条約」について、日本は、個人通報制度を定めた条約に付帯する選択議定書を批准すること、あるいは、条約本体に定める個人通報条項の受諾宣言を行うこと。
 2 以下を内容とする国内人権機関を早急に設置すること。

 (1) 委員及び事務局の任命及び解任手続等の人事権並びに予算等の財政につき、政府の統制に置かれず、人権の促進及び擁護のための国家機関(国内人権機関)の地位(パリ原則)に関する原則を満たすよう法律で定めること。
 (2) 設置される国内人権機関については、次の機能が付与された機関であること。
 ① 人権救済機能として、事実関係を調査する権限を有し(公的機関に対する調査権限を含む。)、調停、勧告等の救済措置を採ることができる機関であること。
 ② 政策提言機能として、人権の保護及び促進の観点から、国や地方自治体の立法機関・行政機関に対し、新たな立法についての意見や、現行法の改正及び行政施策の策定や変更についての提言を行う等、人権保障を制度的に進める措置を採ることができる機関であること。
 ③ 人権教育機能として、学校や企業、裁判官・検察官・警察官・刑事拘禁施設職員等法の適用・法の執行に携わる者、弁護士等に対して、人権教育プログラムを行うことができる機関であること。
 ④ 国際協力機能として、人権の保護及び促進を担う国際連合及び関連機関や、他国の国内人権機関と協力することができる機関であること。
 現在、社会の深刻な問題となっている子どもの人権、女性差別、障がい者差別、外国人の人権及びヘイトスピーチなどの諸問題の解決を大きく前進させるために、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」及び「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」を批准して40周年を迎える今こそ、両制度の実現が求められている。
 そのため、当連合会は、日本が個人通報制度を導入し、人権の促進及び擁護のための国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則)にのっとった国内人権機関を設置して、もって国際水準の人権保障システムを完備するよう求めるとともに、当連合会もその実現のため引き続き全力を尽くす決意である。
 そして、日本の裁判実務において、国際人権条約をはじめとする国際人権法が、実効性を有するものとなるためには、訴訟活動に従事する弁護士自身が裁判の中で国際人権法に基づいて訴訟活動を行うことが必要である。
 したがって、我々弁護士自らも国際人権法の研鑽に努めるとともに、当連合会は、今後国際人権法の研修などの組織的な取組を充実させていくことを、決意するものである。
 以上のとおり決議する。

2019年(令和元年)10月4日
日 本 弁 護 士 連 合 会

『日弁連HP』
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2019/2019_2.html
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