▼ 世界の再生可能エネルギー発電量が20%を突破、
日本は水力と太陽光で第5位 (スマート・ジャパン)
先進国を中心に再生可能エネルギーの導入が進んで、全世界の発電量の20%以上に拡大した。そのうち約8割は水力発電だが、風力発電と太陽光発電の伸びも著しい。国別の導入量では、水力と風力で中国がトップ、太陽光ではドイツが最大だ。日本は水力と太陽光で第5位に入っている。[石田雅也,スマートジャパン]
図4 世界の太陽光発電の設備容量。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)
水力発電は現在も世界各地で開発が進んでいる。IEA(国際エネルギー機関)がまとめた全世界の現状と将来の予測によると、2011年の時点で水力による発電規模(設備容量)は10億kWを超えて、さらに2018年まで年率3%程度の伸びを続ける見通しだ(図1)。その後を追って、風力、バイオマス、太陽光の導入量が拡大していく。
発電量で見ると、水力は全世界の電力の16%を供給する。CO2を排出しないクリーンエネルギーとして役割が高まっている。風力や太陽光などを加えた再生可能エネルギー全体では世界の発電量の20%を上回り、今後ますます比率が高まっていくことは確実である。
国別では中国の水力発電が圧倒的に多くて、全体の23.4%を占めている(図2)。広い国土を流れる大きな河川を利用した水力発電所が数多く稼働中だ。次いで米国、ブラジル、カナダと面積の広い国が続く中で、日本は第5位と健闘している。ロシアと同程度の発電規模がある。
水力に続く風力発電でも、中国が他国を大きく引き離している(図3)。最近の数年間で膨大な投資をもとに発電規模を拡大してきた。第2位は水力と同様に米国で、第3位と第4位には欧州で再生可能エネルギーをリードするドイツとスペインが加わる。第5位のインドも今後さらに大きく伸びるだろう。
世界全体で見た太陽光発電の規模は、今のところ水力と比べて約10分の1、風力の約3分の1に過ぎない。ただしIEAの予測では2018年までに最も大きな伸びを見せて、6年間で3倍以上の規模に拡大していく。
太陽光では欧州の先進国が先行していて、第1位のドイツは全世界の32.7%を占める(図4)。第2位のイタリアも16.6%で続き、第3位の米国の2倍以上の規模がある。日本は中国よりもわずかに少なくて第5位だが、2012年7月に開始した固定価格買取制度によって発電設備が急速に増えている。2013年度以降は米国と中国に迫る勢いだ。
▼ 買取制度の賦課金は2014年度に6500億円へ
日本では欧州の先進国から10年以上も遅れて固定価格買取制度がスタートした。開始から1年半で100万件を超える発電設備が認定を受けて、約7000万kWの規模に達している(図5)。制度を開始する前の時点では約2000万kWにとどまっていたことから、すべての発電設備が運転を開始すれば一気に4倍以上の規模に拡大する。
ただし他の先進国と比べると、太陽光発電に偏り過ぎている。全体の95%以上を太陽光発電が占めていて、海外で多い風力発電は2%にも満たない。風力や地熱発電は設備の運転を開始するまでの開発期間が長くかかることも理由の1つだが、最大の要因は買取価格の格差にある。
太陽光発電の買取価格は出力が10kW以上の非住宅用では電力1kWhあたり40円(税抜き)に設定された。その後は年に4円ずつ減額してきたものの、2014年度でも風力や地熱、中小水力などと比較して高めだ。それぞれの再生可能エネルギーで出力が大きい設備の買取価格を比較すると、太陽光は32円、風力は22円、地熱は26円、中小水力は24円である(図6)。
今後さらに太陽光発電の買取価格は下がって、他の再生可能エネルギーと同等の20円台半ばになる可能性が大きい。一方で2014年度から洋上風力発電の買取価格が35円に設定されたことにより、全国の近海で開発プロジェクトが活発になってきた。すでに欧州の先進国では洋上風力による発電設備が広がっている。周囲を海に囲まれている日本でも将来の再生可能エネルギーとして期待がかかる。
固定価格買取制度の対象になる発電設備が拡大するのに伴って、電力の買取金額も大幅に増えてきた。電力会社などが買い取った金額のうち、通常の火力などで発電した場合の平均的なコストを差し引いた分は「賦課金」として電気料金に上乗せする仕組みになっている。
2014年度の賦課金は総額で約6500億円にのぼる(図7)。2013年度と比べて、ほぼ倍増だ。標準的な家庭で年間に約2700円、月間に225円程度の負担が増える。今後も買取の対象になる発電設備が拡大して、賦課金は確実に増えていく。この負担額を過大と見るか、妥当と見るかで、今後の日本のエネルギー政策は変わってくる。
水力を含めて再生可能エネルギーはCO2を排出することなく、原子力のように放射能を放出する危険もない。固定価格買取制度の賦課金は、地球温暖化と放射能汚染の双方を防止するためのコストと考えるべきである。どのくらいの負担額までを許容するのか、国民の見識が問われるところだ。
『Finance GreenWatch』(August 19th, 2014)
http://financegreenwatch.org/jp/?p=46153
日本は水力と太陽光で第5位 (スマート・ジャパン)
先進国を中心に再生可能エネルギーの導入が進んで、全世界の発電量の20%以上に拡大した。そのうち約8割は水力発電だが、風力発電と太陽光発電の伸びも著しい。国別の導入量では、水力と風力で中国がトップ、太陽光ではドイツが最大だ。日本は水力と太陽光で第5位に入っている。[石田雅也,スマートジャパン]
図4 世界の太陽光発電の設備容量。出典:資源エネルギー庁(IEAの資料をもとに作成)
水力発電は現在も世界各地で開発が進んでいる。IEA(国際エネルギー機関)がまとめた全世界の現状と将来の予測によると、2011年の時点で水力による発電規模(設備容量)は10億kWを超えて、さらに2018年まで年率3%程度の伸びを続ける見通しだ(図1)。その後を追って、風力、バイオマス、太陽光の導入量が拡大していく。
発電量で見ると、水力は全世界の電力の16%を供給する。CO2を排出しないクリーンエネルギーとして役割が高まっている。風力や太陽光などを加えた再生可能エネルギー全体では世界の発電量の20%を上回り、今後ますます比率が高まっていくことは確実である。
国別では中国の水力発電が圧倒的に多くて、全体の23.4%を占めている(図2)。広い国土を流れる大きな河川を利用した水力発電所が数多く稼働中だ。次いで米国、ブラジル、カナダと面積の広い国が続く中で、日本は第5位と健闘している。ロシアと同程度の発電規模がある。
水力に続く風力発電でも、中国が他国を大きく引き離している(図3)。最近の数年間で膨大な投資をもとに発電規模を拡大してきた。第2位は水力と同様に米国で、第3位と第4位には欧州で再生可能エネルギーをリードするドイツとスペインが加わる。第5位のインドも今後さらに大きく伸びるだろう。
世界全体で見た太陽光発電の規模は、今のところ水力と比べて約10分の1、風力の約3分の1に過ぎない。ただしIEAの予測では2018年までに最も大きな伸びを見せて、6年間で3倍以上の規模に拡大していく。
太陽光では欧州の先進国が先行していて、第1位のドイツは全世界の32.7%を占める(図4)。第2位のイタリアも16.6%で続き、第3位の米国の2倍以上の規模がある。日本は中国よりもわずかに少なくて第5位だが、2012年7月に開始した固定価格買取制度によって発電設備が急速に増えている。2013年度以降は米国と中国に迫る勢いだ。
▼ 買取制度の賦課金は2014年度に6500億円へ
日本では欧州の先進国から10年以上も遅れて固定価格買取制度がスタートした。開始から1年半で100万件を超える発電設備が認定を受けて、約7000万kWの規模に達している(図5)。制度を開始する前の時点では約2000万kWにとどまっていたことから、すべての発電設備が運転を開始すれば一気に4倍以上の規模に拡大する。
ただし他の先進国と比べると、太陽光発電に偏り過ぎている。全体の95%以上を太陽光発電が占めていて、海外で多い風力発電は2%にも満たない。風力や地熱発電は設備の運転を開始するまでの開発期間が長くかかることも理由の1つだが、最大の要因は買取価格の格差にある。
太陽光発電の買取価格は出力が10kW以上の非住宅用では電力1kWhあたり40円(税抜き)に設定された。その後は年に4円ずつ減額してきたものの、2014年度でも風力や地熱、中小水力などと比較して高めだ。それぞれの再生可能エネルギーで出力が大きい設備の買取価格を比較すると、太陽光は32円、風力は22円、地熱は26円、中小水力は24円である(図6)。
今後さらに太陽光発電の買取価格は下がって、他の再生可能エネルギーと同等の20円台半ばになる可能性が大きい。一方で2014年度から洋上風力発電の買取価格が35円に設定されたことにより、全国の近海で開発プロジェクトが活発になってきた。すでに欧州の先進国では洋上風力による発電設備が広がっている。周囲を海に囲まれている日本でも将来の再生可能エネルギーとして期待がかかる。
固定価格買取制度の対象になる発電設備が拡大するのに伴って、電力の買取金額も大幅に増えてきた。電力会社などが買い取った金額のうち、通常の火力などで発電した場合の平均的なコストを差し引いた分は「賦課金」として電気料金に上乗せする仕組みになっている。
2014年度の賦課金は総額で約6500億円にのぼる(図7)。2013年度と比べて、ほぼ倍増だ。標準的な家庭で年間に約2700円、月間に225円程度の負担が増える。今後も買取の対象になる発電設備が拡大して、賦課金は確実に増えていく。この負担額を過大と見るか、妥当と見るかで、今後の日本のエネルギー政策は変わってくる。
水力を含めて再生可能エネルギーはCO2を排出することなく、原子力のように放射能を放出する危険もない。固定価格買取制度の賦課金は、地球温暖化と放射能汚染の双方を防止するためのコストと考えるべきである。どのくらいの負担額までを許容するのか、国民の見識が問われるところだ。
『Finance GreenWatch』(August 19th, 2014)
http://financegreenwatch.org/jp/?p=46153
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