▼ 原発は違憲
憲法は、少数の人権を守るため、多数に基づく民主的政治に時として縛りをかけるものです。
今回の震災では二万人近い人が亡くなり、帰宅できない人は三十四万人を超える。大変な被害ですが全人口からすれば少数です。厳しい言い方をすれば、ほとんどの国民にとっては「人ごと」。この事実をまず直視しなければいけない。
被害者が多数なら、多数で物事を決める民主主義のルートで支援策を決めればいいのですが、今こそ少数者の権利を守る憲法が必要です。
幸福追求に対する権利を保障する13条、健康で文化的な最低限度の生活を保障する25条の訴えは切実です。
被災して人間らしい生活と程遠い生活を強いられている人たちは「すばらしい憲法があるのになぜ私たちは…」と歯がゆく思っているでしよう。
憲法は、一人一人が自分の権利を主張するのを認めている。被災者がそれぞれ違う権利を主張するのは、わがままではない。みんなと違うことを言うと申し訳ないと感じるのは、間違いです。
▼ 心穏やかに生きる権利守れ
憲法前文では「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とあります。
「平和」とは単に戦争のない状態ではなく病気や飢餓、貧困や人権侵害、災害を含め、生活を脅かす脅威から免れて心穏やかに生きることができる、ということ。13条はさらに生命の脅威を排除することも人権として保障しています。
その観点からみると原発は憲法違反だと考えます。
放射能の危険にさらされないで生きたいという人権を、憲法は保障しています。
憲法の平和主義の根幹は攻撃されない国をつくること。テロの標的になり得て、攻撃されれば原爆と同じようになるものを持つべきではない。
核と原子力。英語ではどちらも「nuclear」なのに日本では使い分けてきたのです。
震災では、憲法が国民の血肉になっていないことが分かりました。
「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」。前文の理想を具体化しなければなりません。憲法は、政治家に守らせる法。守らせるだめには、国民も憲法の内容を知らなければなりません。
※法律家・行政官を育成 伊藤真(いとう・まこと)さん
1958年生まれ、東京都出身。東大法学部卒、資格試験の受験指導校「伊藤塾」を主宰。憲法の理念を広げる活動にも取り組む。近著「憲法が教えてくれたこと」は女子高校生が主人公の小説仕立てで、中高生向けに憲法の価値を説いている。
憲法13条 【個人の尊重・幸福追求権】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法25条 【生存権】
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
『東京新聞』(2012/5/3【一面】)
伊藤 真(弁護士・伊藤塾塾長)
憲法は、少数の人権を守るため、多数に基づく民主的政治に時として縛りをかけるものです。
今回の震災では二万人近い人が亡くなり、帰宅できない人は三十四万人を超える。大変な被害ですが全人口からすれば少数です。厳しい言い方をすれば、ほとんどの国民にとっては「人ごと」。この事実をまず直視しなければいけない。
被害者が多数なら、多数で物事を決める民主主義のルートで支援策を決めればいいのですが、今こそ少数者の権利を守る憲法が必要です。
幸福追求に対する権利を保障する13条、健康で文化的な最低限度の生活を保障する25条の訴えは切実です。
被災して人間らしい生活と程遠い生活を強いられている人たちは「すばらしい憲法があるのになぜ私たちは…」と歯がゆく思っているでしよう。
憲法は、一人一人が自分の権利を主張するのを認めている。被災者がそれぞれ違う権利を主張するのは、わがままではない。みんなと違うことを言うと申し訳ないと感じるのは、間違いです。
▼ 心穏やかに生きる権利守れ
憲法前文では「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とあります。
「平和」とは単に戦争のない状態ではなく病気や飢餓、貧困や人権侵害、災害を含め、生活を脅かす脅威から免れて心穏やかに生きることができる、ということ。13条はさらに生命の脅威を排除することも人権として保障しています。
その観点からみると原発は憲法違反だと考えます。
放射能の危険にさらされないで生きたいという人権を、憲法は保障しています。
憲法の平和主義の根幹は攻撃されない国をつくること。テロの標的になり得て、攻撃されれば原爆と同じようになるものを持つべきではない。
核と原子力。英語ではどちらも「nuclear」なのに日本では使い分けてきたのです。
震災では、憲法が国民の血肉になっていないことが分かりました。
「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」。前文の理想を具体化しなければなりません。憲法は、政治家に守らせる法。守らせるだめには、国民も憲法の内容を知らなければなりません。
※法律家・行政官を育成 伊藤真(いとう・まこと)さん
1958年生まれ、東京都出身。東大法学部卒、資格試験の受験指導校「伊藤塾」を主宰。憲法の理念を広げる活動にも取り組む。近著「憲法が教えてくれたこと」は女子高校生が主人公の小説仕立てで、中高生向けに憲法の価値を説いている。
憲法13条 【個人の尊重・幸福追求権】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法25条 【生存権】
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
『東京新聞』(2012/5/3【一面】)
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