ブータンに来るに際して、荷物の重量が20kgに制限されていたので必要最小限のものしか持ってきていません。まあ、大抵のものはこちらで購入すれば済む話なので大して不便はありませんが日本語の本だけは入手出来なくて困ります。教科関連を除けば数冊しか持ってきていない本の一つが中国唐代の詩人・李白の本です。
李白は漢人ではなく胡人だったらしく、生涯を旅に過ごしています。一時は玄宗皇帝に取立てられ、宮廷で楊貴妃の美しさを詠う漢詩などを残していますが、その後失意のうちに王宮を去り放浪の生活に戻っています。
李白の詩は生活苦を多く詠った杜甫と違い、稀有壮大にして仙境に遊ぶが如く、の晴れ晴れとした詩が多いのが特徴です。しかし、静夜思のような詩もあり、夜中に一人でこれを読んでいる我が身を振り返り、心に沁みるようなしみじみとした気持ちになります。
静夜思
牀前看月光
疑是地上霜
擧頭望山月
低頭思故郷
牀前月光を看る
疑うらくは是地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低(た)れて故郷を思う