英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

電話会社のデザイン戦略

2008-06-06 | イギリス
テレビをつけると、相変わらず携帯電話のCFが溢れています。犬にシャベルにサルに・・・、この春シンボルロゴマークを一新し、新たなブランディングで反攻に転じるドコモの戦略が注目ですね。でも今までのところ、やっぱり吹っ切り度合いが中途半端で面白くないってところが正直な感想・・・ですかね。

菅 靖子「モダニズムとデザイン戦略 イギリスの広報政策」

この本は、両大戦間のイギリスで、郵便事業、電報・電話事業を一手に握っていた逓信省での様々なデザイン戦略を、当時のモダニズムの流れと共に解説したものです。今でこそ、CI、VI、ブランディングは当たり前のように行われていますが、この時代に、ここまで国家が人と資金をつぎ込んでいたというのは驚きでした。それとこの時代のポスターなどをヴィクトリア&アルバート美術館などが、きちんと保管をおこなっているというのもどこかの国とは違いますね。
次第に弱まる帝国としてのプレゼンスの一方で行われた、「威信」広報活動は、現代でいう企業広告、CSR広告にも通ずるものを感じます。郵便局の店内が一時期色々な広告ポスターの掲示場所として媒体扱いされていたのも面白い。デザイン・コンペを行う際に、きちんと提案費用を各デザイナーに支払い、採用されれば予め決めた制作費用を支払うというやり方も、あまりにも当たり前なだけに、現代のズブズブなクライアント~代理店~クリエイターの関係に浸かっているとちょっと耳が痛かったりして・・・・。

1. 広告、広報、プロパガンダとデザイン
2. 逓信省の美化?—「外観改善キャンペーン」
3. 逓信省の「投影」—視覚広報の発展
4. 視覚文化のパトロネージ—CI、ポスター、ドキュメンタリー映画
5. 「威信」広報のモダニズム
6. 「拡販」広報のモダン・デザイン
7. コマーシャル・モダニズムという選択—1937年の再編
8. 第二次世界大戦とイギリス政府のプロパガンダ

ロンドンに行くと、必ず利用する地下鉄。ジョンストン書体でデザインされた各サイン関係は、近代システムとデザインが上手く融合した一つの事例だと思います。そう言えば、ロンドンには赤い2階建てバス、タクシー、衛兵、女王、タワーブリッジ・・・・とシンボルがいっぱいあります。パリにももちろんいっぱいありますが、比べて東京にはどれだけあるのでしょうか?おやおや日本人が考えてもあまり出てきませんね。じゃあ、広島には・・・・・・、ありますよ。原爆ドームに、宮島に、お好み焼きに、牡蠣にカープに仁義なき戦い。