英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

レイのルール

2009-07-11 | イギリス

グレアム・スウィフト「最後の注文」

バーモンジーで肉屋を営むジャックが死んだ。昔からの友人である元保険屋のレイと、葬儀屋のヴィック、元ボクサーで八百屋のレニーは故人の最後の願いをかなえるため、ジャックの義理の息子で中古車屋のヴィンスとともにベンツで出発する。ジャックの願いとは、マーゲートの海に自分の灰を撒いてほしいというもの・・・。ジャックの妻エイミーは同行を見合わせる。
それぞれの回想により明らかになる彼らの人間関係。自分の気持ちを上手に表現することが出来ない不器用な老人たちであるが、お互いは複雑で密度の高い時を過ごしている。骨壷に入ったジャックを手に彼ら一人ひとりのラストオーダーが語られていきます。
片道わずか2時間の道中のはずが、寄り道ばかりでなかなか目的地に到着しない・・・。夕闇迫る突堤の先で4人は何を感じたのでしょうか。

それにしても出てくるみなさん、パブに通いなれたロンドンの下町っ子だけあって、ビールの飲み方が半端じゃないですね。当然トイレ休憩も必要になってくる。


競馬に類まれな才能を発揮するレイの「ルール」が気に入りました。
一つの章として物語の中に挿入されています。

1, 問題はどれだけを取ったかではない。どれだけで取ったかだ。
2, 肝心なのは賭けることではない。いつ賭けないかを知ることだ。
3, 相手は馬たちではない。賭けているほかの人間たちだ。
4, 老馬も老犬と同じ。新しい芸はしない。
5, つねに耳を見ること。そして自分の耳はぴくぴくさせておくこと。
6, オッズ三倍未満の馬には賭けないこと。
7, 賭ける額は資金の5%を超えないこと。ただし一生に五回くらいはこのかぎりではない。
8, ラッキーでありさえすれば、以上のルールをすべて忘れてかまわない。

うーん、ビジネスにも当てはまる金言です。


バーモンジーはテムズ南岸ロンドン橋から少し南にいった所、タワーブリッジからの通りとの合流するあたり。
マーゲートはテムズを下り海に出て到達する東の突端。ドーバーの北に位置します。昔から保養、観光の名所となっていて大きな遊園地「ドリームランド」があります。(現在はリニューアル中なのかグーグルの航空写真では空き地になっています)


グレアム・スウィフトはこの作品でブッカー賞を受賞。