P.D.ジェイムズ「高慢と偏見、そして殺人」
この日本版タイトルでお分かりでしょうが、あの「高慢と偏見(自負と偏見)」の続編なのですが、ただの後日談にとどまらず、推理小説となっています。そして作者は大御所、P.D.ジェイムズ。原題は「DEATH COMES TO PEMBERLEY」。
オースティンのオリジナルのラストから6年後のお話ですが、冒頭、ちゃんとオリジナルの振り返りがありますので、未読の方もご安心を。でも。やっぱり読んでおけば更なるお楽しみが約束されるわけで・・・。
プライドと偏見を乗り越えて、めでたく結ばれたダーシーとエリザベスではあったが、心配事が無いわけではなかった。婚期を迎えたダーシーの妹ジョージアナのお相手問題もそうだが、何より遠くから聞こえてくるウィッカム、リディア夫妻のよからぬ噂話が。そしてこのウィッカム夫妻が伝統的な舞踏会の前夜、よもや出入り禁止となっているペンバリー館に事件を持ち込んで来るとは・・・。そしてその事件が殺人事件だったとは・・・。
ダーシーは自問します。エリザベスと結婚したことで、ウィッカムは自分にとって義兄弟となってしまった。結婚ははたして正しい選択・・・・・。ウィッカムは相変わらずハンサム男として登場しますが、その性格は更にだらしなく鼻つまみ者として描かれます。リディアにいたってはかなりヒステリックで下品な女として・・・。総じてエリザベス含めて登場人物の味付けはオリジナルよりも濃い目の設定のような・・・。
オリジナルでは描かれることがまずなかった使用人や村人の様子や会話も楽しめますし、ナポレオン戦争への言及も見られます。後半は法廷小説としても読み応えがたっぷり。
オリジナルではあまり好意的に描かれていなかったベネット氏が、パンバリー館では意外と好印象を与えるくだりにちょっとにんまり。他のオースティン作品の登場人物が突然現れたりと、読者サービスももれなく付いています。