英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

大悪臭はどこから来たのか?

2008-12-22 | イギリス

ウィリアム・ギブソン&ブルース・スターリング
「ディファレンス・エンジン」

「スチーム・パンク」の代表作ということですが・・・。コアなSFマニアでは全然ないので、どういうジャンル分けでも・・・・・。
話の筋としては、19世紀初頭に実際に作られかけた機械式コンピュータ?「階差機関(ディファレンス・エンジン)」が完成し、進化を遂げ、蒸気機関を動力としてイギリス国家全体を制御している。その前提のもとでの、ビクトリア中期に起きた陰謀と騒乱を描いた物語(?)
明らかに有り得ない改変物語ですが、実際に活躍した歴史上の人物が、その性格・素性はそのままに違う行動を取り、この新しい物語に積極的に係わりあうところが面白いところ。我らが日本からは、森有礼(一橋大学の前身を作った方)、福沢諭吉などが登場し凶悪なロンドンの悪人どもを・・・・なんて場面も。
そして当時の実際のロンドンの風俗やラッダイト運動の拡大、急進派の台頭等歴史のエッセンスが巧みに盛り込まれています。現在博物館が多く建つサウスケンジントン界隈からイーストエンドのホワイトチャペルまでの通りの様子、ギャンブル好きなイギリス人の様子なども。世界最初のプログラマーと言われる「レディ・エイダ」の存在、高度に情報管理社会となったロンドンの姿は、この作品が発表された90年代頭よりも、誰でもがネット社会を享受できる現代のほうがよりメッセージを与えてくれるのかもしれません。

巻末にはこの物語を十分に楽しむための「事典」も付録としてつけられています。





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