マスミンのピアノの小部屋

ピアニスト兼ピアノ指導者松尾益民が、ピアノや教育、世の中の出来事など日々感じることを、徒然なるままに綴ります。

ショパンの夜想曲(ノクターン)作品9−2について

2023-07-08 13:34:16 | ラ・プロムナード・ミュジカル
明日のプロムナード・コンサートの後半で演奏する曲は、ショパンです。
前回演奏したピアノ・ソナタ第3番の1楽章につづいて、今回は残りの2、3、4楽章です。
2楽章はテンポの速いスケルツォなのですが、いきなり弾くのも…という自分の都合で、ノクターンを入れました。
よく知られた曲ということもありますが、変ホ長調で、スケルツォもちょうど変ホ長調なので、まぁその繋がりもあります。

さて、ノクターンというのは、19世紀ロマン派の時代に急速に増えた性格的小品と言われる曲の一つです。
この時代、ピアノの性能が向上したこともあり、ピアノの小品がたくさん書かれました。
シューベルトの即興曲もその一つ。
ノクターンという曲名は、イギリスの作曲家ジョン・フィールドによって初めて使われた名前と言われています。
左手の伴奏の上に右手が叙情的なメロディを奏でるという形でした。
ショパンは、このフィールドのスタイルを受け継ぎ、さらにそれを発展させるようにして、21曲のノクターンを作曲しました。
作品9はその最初のノクターンで、フィールドのスタイルそのままに、左手が伴奏、右手が美しいメロディという形でしたが、フィールドに比べると表現がより多面的で豊かなもの…のようです。
ノクターンは数曲ずつまとめて出版され、作品9も3曲あります。
1930〜31年ごろの作で、マリー・プレイエルに献呈されています。
第2曲変ホ長調は、ノクターンの中でも最も知られて曲ですが、甘美なメロディが少しずつ変奏されて繰り返されるだけで、特に優れているというわけではありませんが、思わずうっとりとして心に残るこの曲は、ショパンならではと言えるでしょう。
形式はロンド形式で、ABABAコーダとなっています。


第65回プロムナード・コンサートの演奏曲について2

2023-07-06 22:55:14 | ラ・プロムナード・ミュジカル
3曲目は、ラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲作品43より、第18変奏です。
今年は、ラフマニノフの生誕150年で没後80年という記念イヤー。
ですが、ロシアの作曲家ということで、あまり大々的に記念する…というのもいかがなものかとは思いますが、過去の作曲家に罪はない…と思うのですけどね。
いい作品はいい作品です。
記念イヤーということで、ラフマニノフの曲をプログラムに入れてみました。
これは3年前にも弾いてますけど。
曲については、その時に記載したのをリンクしておきます。

前半で弾く最後の曲は、シューベルト(1797~1828)の即興曲作品90の2です。
シューベルトはオーストリアの作曲家で、歌曲の王と言われるくらいたくさんの歌曲を作りました。
歌曲の方に名曲が多いため、ピアノ曲としてはとかくおろそかにされがちですが、特に性格的小品とされる即興曲や楽興の時などは、親しみやすく演奏機会も多くなっています。
ソナタなどの、形式のはっきりした曲は苦手だったようですが、ピアノ・ソナタにもいい曲はありますね。
シューベルトの即興曲は、作品90の4曲と作品142の4曲と、合計8曲あります。
単独で演奏されることが多く、即興的な要素もありますが即興で作られたものではなく、自由な発想に基づく楽想をまとめたものです。
タイトルは、作品90を出版する時、出版社のハスリンガーに提案され、シューベルトも気に入ってそう名付けたようです。
第2曲変ホ長調は、第4曲と共にもっともよく演奏される曲です。
ABAコーダという形式で、流れ落ちるような細かい音の動きで構成されているAの部分、舞曲的なロ短調のBの部分から成り、最後はBの部分のモティーフによるコーダで締めくくります。

子供のころにピアノを専門にしている先生に習っていたわけではなく、学校の音楽の先生とかの個人レッスンで、この曲は高校生になってやっと弾きました。
当時は軽やかな指を持っていなかったので、いかに速く軽く弾くかということにかなり苦労した覚えがあります。
高校1年…だったと思う…の時、県内の高校生のピアノコンクールで弾くためでした。
今は昔…の話です。



第65回プロムナード・コンサートの演奏曲について1

2023-07-06 00:48:35 | ラ・プロムナード・ミュジカル
9日のプロムナード・コンサートで演奏する曲についてです。
まずは、オー・シャンゼリゼ。
これは、以前、6手連弾で演奏したことがあります。
元々はソロ用に編曲したもので、それを6手連弾にしたわけです。
なので、オリジナルはソロ。
7月は14日がフランスの革命記念日で、シャンゼリゼ通りで行進やらイベントやらが行われるようです。
ということで、シャンゼリゼにちなむ曲でも演奏しようか…と。
ただ、この曲はもともとはシャンゼリゼ通りを想定して作られた曲ではないのですけどね。

以前書いた記事を一部修正して掲載します。
「オー・シャンゼリゼ」というのは、日本語に訳した時に乗りがいいため「オ~・シャンゼリゼ~」という風に訳されたのですが、実は「オ・シャンゼリゼ」で、「シャンゼリゼ通りで」という意味なのです。
原曲は、1960年代のイギリスポップス「ウォータールー・ロード」で、作曲はM.ウィルシュとM.ディーガン。
これにフランスの人気作詞家ピエール・ドラノエがフランス語の詞をつけ、内容をパリのシャンゼリゼ通りに差し換え、当時の人気歌手ジョー・ダッサンがシャンソンにして、1969年に自らのアルバムで発表したものです。
日本ではダニエル・ビダルの歌でよく知られています。

シャンゼリゼ通りは、パリのコンコルド広場から凱旋門までの幅70m、長さ約3kmの大通りです。
おしゃれなお店がたくさんあって、いつも人であふれています。
最新のシャンゼリゼ通りの写真。
三男が先日フランスとイタリア旅行に行ったとのことで、その時の写真を送ってくれました。
凱旋門の上からの写真…でしょう。

2番目に弾く曲は、今年亡くなった坂本龍一氏のエナジー・フロウ。
1999年3月から三共「リゲインEB錠」のCMに使われ、元々はCMに使われた30秒だけが作曲されたらしいのですが、評判が上がり、CD発売となったようです。
たぶん、その流行っていた時期に、エレクトーンとのアンサンブルで演奏したような…記憶がありますけど。
坂本氏の曲で好きなのは、戦場のメリークリスマスですが、今は時期ではないので…。
いずれ機会があれば…。



第65回プロムナード・コンサートのお知らせ

2023-06-19 00:13:53 | ラ・プロムナード・ミュジカル
姫路のプロムナード・コンサートは3か月ごとの開催なので、あっという間に次がやってきます。
第65回は、7月9日(日)10時です。
会場は、このところ順調にアクリエひめじの小ホールが取れているので、そこ。
7月はいつもなぜか出演が2人だけになって、曲数が多くなってちょっと大変ではありますが…。
4月に弾いた、ショパンのピアノ・ソナタ第3番の残りの、2、3、4楽章を弾きます。
他は、耳なじみのある曲です。
坂本龍一氏の「エナジー・フロウ」も弾いてみようと思ってます。
第65回プロムナード・コンサート
7月9日(日)10:00~11:30
姫路市文化コンベンションセンター アクリエひめじ 小ホール
入場料無料




第64回プロムナード・コンサートは終わりました

2023-04-24 01:49:22 | ラ・プロムナード・ミュジカル
朝から若干低めの気温でしたが、天気は良く、午前中に第64回プロムナード・コンサートは無事終了しました。
ご来場くださった方々、ありがとうございました。
アクリエひめじは、外では子供向きのイベントをしているし、ホールは大ホールでバレエの発表会があったようで、あちこちに行列ができていました。
いつもわりと閑散としたなかでのコンサート開催だったので、コロナの規制がなくなったんだなぁ…というのを実感です。

本日の演奏については、まぁ追々検証してみますが、やはり耳なじみの曲はお客様の反応が若干良さそうでした。
今回で言えば、めぐり逢い…かな。

さて、ドレスです。
初めの青木さんの歌の「春が来た」伴奏では、もう何度も着ていますが、桜柄の黒のドレスを。
毎回思うのは、この生地は、フランスで買ったものだということです。
和風なのに…。
前半のソロでは、ゴールドのドレスをリメイク…と思っていましたが、時間がなく断念。
以前来たピンクのドレスを。
こうしてみるとやはり黒っぽい色の方が、締まって見えるなぁ…と。
後半のショパンの時は、今回製作したドレスです。
間に合わないかなぁと思ったのですが、金曜日に何とかほぼ完成し、昨日手縫いの部分で仕上げました。
母のコレクションに未使用の着物の生地がいくつかあって、その中でも少しキレイ目ので作ってみました。
濃い紫の柄物ですが若干地味なので、スカート部分をたっぷりとって上身頃はサテンを使ってメリハリをつけて…と。
着物の帯をイメージして、ゴールドのリボンにしてみました。
アクリエのこのホールでは、薄い色は映えるようです。
この着物の生地は、まだかなり残っているので、今度は上身頃にこれを使って、スカートを別布で…とかするといいかも。


ショパンのマズルカ作品33

2023-04-22 22:09:25 | ラ・プロムナード・ミュジカル
明日の第64回プロムナード・コンサートの後半で演奏するのは、ショパンのマズルカ作品33とソナタ第3番の1楽章です。

マズルカについて、ショパンは、生涯に渡り58曲のマズルカを作曲しました。
マズルカとはと説明しようとすると、かなりの量になりますので、簡単に、ポーランドの典型的な民族舞踊の一つだと言っておきましょう。
歴史は古く、元々は農民の踊りだったものが、やがて騎士階級や貴族階級に伝わり、18世紀の半ばごろには各地に広がっていったと考えられています。
ショパンは、この形式を利用して独特の創意に満ちた曲に発展させるとともに、偉大な芸術としました。
マズルカは、ワルツと同様に3拍子が基本です。
いくつかの種類があるのですが、それぞれリズムに独特の特徴があります。

4曲から成る作品33は、1837〜38年に作曲され、1838年に出版されました。ローザ・モストウスカ伯爵令嬢に献呈されました。
第1曲 嬰ト短調
抒情的な曲。
マズルカの特徴のの一つである、「タッカタンタン」というリズムが使われています。
第2曲 ニ長調
自筆譜および初版出版譜では、第2曲は、第3曲のハ長調の方でしたが、その後誰かによって第2曲をニ長調として出版され、それが一般的になっているため、今回はこの順番で演奏します。
ワルツのような華やかさや明るさが魅力的な曲です。
バレエ曲としても編曲されています。
第3曲 ハ長調
非常に短い曲ですが、大変美しく細やかな情感のある曲です。
第4曲 ロ短調
スラブ的な憂愁に満ちていますが、第3曲とは違った美しさのある曲です。
マズルカとしては規模の大きい曲です。

この作品33のマズルカを、ソナタ第3番と一緒に弾こうと思ったのは、ソナタ第3番がロ短調で、この作品33は、ハ長調以外がロ短調の関係調で作られているので、まとまりがあるかな…ということで決めました。
ただ、何でハ長調を入れたのかなぁ…という思いはありますけど、まぁこれはこれでまとまってるかも…です。

ピアノ・ソナタ第3番については以前書いた記事があるので、そのリンクを貼っておきます。




ハチャトゥリアンのトッカータ

2023-04-22 12:40:03 | ラ・プロムナード・ミュジカル
ハチャトゥリアン(1903〜1978)は、ロシア帝国支配下にあったグルジア(現ジョージア)で、アルメニア人の家庭に生まれました。
バレエ、交響曲、協奏曲などの分野に傑作を残していて、ピアノ曲はあまり多くはありません。
ハチャトゥリアンの曲としては、フィギュアスケートで浅田真央さんが使った「仮面舞踏会」と言えば、あぁそうか、と思われる方が多いのではと思います。

トッカータですが、まず、トッカータというのは、バロック時代に多く作られましたが、鍵盤楽器で駆け抜けるような速い音型や細かな音型を使った、即興的な雰囲気を持った曲のことで、イタリア語のtoccare(触れる)という言葉に由来しています。
J.S.バッハのトッカータとフーガニ短調がよく知られています。
ハチャトゥリアンのトッカータは、1932年の作曲で、若さに溢れている‥と言えるでしょう。
民族楽器をイメージした打楽器的な音型と曲調で、独特な雰囲気を持っています。
中間部は、アルメリア民謡のような抒情的な旋律が歌われます。

私がプログラムを組むと、どうしても好きな作曲家、ショパン、リスト、ドビュッシー、プーランクに偏ってしまうため、たまには違った作品も…と思って選曲しましたが…。



ドビュッシーの後期のピアノ小品について

2023-04-21 00:49:14 | ラ・プロムナード・ミュジカル
ドビュッシー(1862~1918)の曲は、全曲演奏しようと思っているので、ここ最近は小品に取り組んでいます。
小品の中でも比較的演奏される曲はあるのですが、晩年の作品はホントに小品で、演奏される機会も少ないですね。

1曲目は、演奏会用小品です。
タイトルとしては、フランス語では「Morceau de concours」なので、「コンクールの小品」とする方が正しいように思いますけど。
この曲は、後期ではなく、1904年の作曲で、雑誌「ムジカ」1905年1月号に掲載された、作曲者当てコンクールのために書かれたものです。
雑誌の読者が、無記名の6曲の小品の作曲家を、18名の作曲家リストから当てる…というコンクールでした。
1ページに収まる、ホントに小品です。
ドビュッシーらしさ…う~ん、あるかなぁ…。

2曲目は、英雄の子守歌-ベルギー国王アルベール1世とその兵士達をたたえて です。
1914年に勃発した第一次世界大戦中の1914年11月に作曲されました。
ドイツ軍に抵抗したベルギー国王アルベール一世と、兵士たちの勇気をたたえて、イギリスの文筆家ホール・ケインが「アルバート王の書」を編集しましたが、その際、作曲を依頼されて書かれたのが、この曲です。
重々しく暗い色調ですが、途中にハ長調でベルギー国家が引用されています。
作曲者自身により、管弦楽編曲もされています。 
   
3曲目はアルバムのページ(負傷者の服のための小品)です。
第一次世界大戦は、ドビュッシーを精神的にも経済的にも苦しめました。
1915年に負傷者の服のための小品」というタイトルで作曲され、1933年に出版されたときは「アルバムのページ」とされたようです。
戦争中ではなかったからタイトルを変えたのでしょうか。
第一次大戦で被害にあった人々を救うための団体「負傷者の衣服 Vêtement du blessé」のための作品です。
この慈善団体には妻エンマが参加していて、楽譜の最後に「愛する妻の『負傷兵の衣』のために クロード1915年6月」と書かれています。
ドビュッシーもこの作品を献呈したほか、コンサートを開催するなど、意欲を持って団体のために活動をしていました。
わずか38小節の、メランコリックなワルツです。




第64回プロムナード・コンサートの演奏曲について

2023-04-20 23:54:42 | ラ・プロムナード・ミュジカル
23日の第64回プロムナード・コンサートで演奏する曲について、書いてみたいと思います。
あまり考えていなかったのですが、前半で弾く曲は全部、コンサートで取り上げたことのない曲でした。
つまり、ちゃんと弾くのは初めてということでもあります。
ということは、解説も全部…。

1曲目は、湯山昭(1932~)氏のピアノ曲集「お菓子の世界」から、第2曲バウムクーヘンです。
この曲は、非常に演奏効果のある曲なので、ちょっと弾けるようになった生徒たちが、発表会で好んで演奏します。
私も、何度も発表会で取り上げてきました。
プロムナード・コンサートでは、知ってる曲を弾いてほしいというご希望をよく聞きますので、いろいろ考えるうちに、子供の曲集からでもいいか…と。
湯山昭氏は、童謡や合唱曲、ピアノ曲など、たくさん作曲されていて、音使いが非常におしゃれですね。

ピアノ曲集「お菓子の世界」は、序曲と21のタイトル付きの曲と終曲で構成されています。
曲集「まえがき」によると、1972年に全音楽譜出版社から依頼で作曲、1973年1月~12月まで「ゼンオン・ニュース」という小冊子に連載されたもので、子供のための曲集というより、大人も子供も弾いて楽しめ、聴いて楽しめるピアノ曲という欲張った考えで作曲されたそうです。
「お菓子の世界」というタイトルは、全音の企画者の方のアイデアで、各タイトルに合わせて様々な作曲手法がとられていて、演奏効果の上がる曲集となっています。
さて、バウムクーヘンはどんな手法がとられているか…ですが、バウムクーヘンの年輪の層のように、4小節ずつ音楽が盛り上がっていく…というように作られているそうです。
最後は非常に華やかな和音で高らかに歌った後、静かに曲を終えます。

2曲目は、これもよく聴かれる曲ですが、アンドレ・ギャニオン(1936~2020)のめぐり逢いです。
クラシックというわけではないのですが、昨年、カナダ出身で、2015年のショパンコンクール2位のピアニスト、シャルル・リシャール=アムランのリサイタルを聴きに行ったとき、アンコールで演奏されたので、あぁこんなのもいいかな…と。
好きな曲なので。
アンドレ・ギャニオンは、カナダケベック州の出身で、アムランと同郷なので、アンコールに選んだのかな…と。
めぐり逢いは、テレビドラマで使われたようですね。
私は知らなかったけど…。
今回は、ちょっとだけ華やかになるよう、アレンジしました。