仕事がひと段落したので、「ルドルフ」について忘れないうちに書いておきます。
亜門版の場合、マリーは野心家のお嬢さんで、ルドルフに出会って真の愛に目覚める、みたいな「ロマンス」が前面に押し出されたお話になっていました。
ルドルフも、父親に理解されない寂しさから反発している駄々っ子みたいで、マリーに出会って心が癒される、みたいな描かれ方だったと思います。
父との確執を際だたせていたのが、今回出てこなかった御者のブラット・フィッシュで、彼は、ルドルフの精神的な父親のような役どころでした。
今回はそんな「ロマンス」や「父子の確執」的なものより、「社会」とか「時代」とかが強烈に意識されていたように思います。
まず、幕が開いてすぐに拳銃自殺のシーンです。
これはちょっと衝撃的です。
また、歌の題名や歌詞を見ても、「愛してる それだけ」(Only Love)が「二人を信じて」になっていて、「愛してるそれだけ 恐れるものは何もない」だったのが、「今日から二人 強くなるのよ 闘うの」です。
なんか、二人は革命の同志ですか?
ラストの「ただ君のために」(I was born to love you)も、「もう二度と離れない もう迷わない たとえば今世界が消えても いつまでも二人の愛は輝く」と高らかに「愛」を歌っていたのですが、「世界を手にして」では、「愛」という言葉は使われていません。
同じ部分は「この命が終わろうと 燃え尽きようと 恐れない お互いがいれば そして見つけた今 永遠のすべて」です。
「君=世界=永遠」だから、要するに「愛している」ということなのですが、二人の関係を安易に「愛」という言葉で語りたくなかったのかもしれません。
二人が出会ってすぐに歌う「それ以上の」(Someting more)というデュエットがあります。
その中でも「ただのロマンスじゃない あなたはそれ以上」という歌詞があって(この歌はあまり変わってなかったと思う)、二人の関係は「ロマンス」なんて言葉では言い尽くせないい特別なものだという意味で、だから、あなたが「世界」なのでしょう。
でも、それだと、マリーを停車場に迎えに行く時の「ただのロマンスでいいんだ」ってルドルフのセリフと矛盾しませんか?
私は、そこがちょっとひっかかってしまいました。
くだらないことかもしれませんが。
「明日への階段」(The steps of Tommorrow)は「明日への道」になっていて、内容的にも、ルドルフと群衆の関係がちょっと違ってきている気がします。
「階段」では「ルドルフについていきます」だった群衆が、「道」だと主体的に「社会を変えていく」って宣言しているんだよね。
それって、ちょっと怖い。
ルドルフはあくまで皇太子だから、「自由」や「理想の世界」を目指していても、彼は帝国を潰すつもりなんか毛頭ないんだけど、民衆の求めている自由とか進歩とかが目指すものは、最終的には「革命」(変革)に向かうもの。
しかも、多民族を受け容れる自由主義から、偏狭なドイツ民族主義に向かっていくのが群衆の意思。
ルドルフがめざしたものも、「ハンガリー独立運動」ではなく「反プロイセン」的な「パン・ヨーロッパ運動」になっていましたね。
つまり、歴史的な問題意識がより強く前面に現れているのが今回の「ルドルフ」だと思いました。
ただ、亜門版にも「よりよい世界」といった印象的なナンバーがあって、「ドイツ民族主義者」と「民主的主義者」が意見を戦わせる場面がありました。
浦井君が煽っていくみたいな感じで、当時のウイーンの世相を描いたシーンでした。
亜門版ではなんとなく唐突に感じたのですが、でも印象深いシーンでした。
今回、なぜか、そこはカットされていました。
ちょっと残念です。
全体的に、亜門版はとても情緒的だったと思います。
それに比べると、今回の「ルドルフ」はやや硬質で、理屈っぽくて、説明的で、ちょっとつまんないかも。
ダメじゃないんだけど、なんとなく。
配役も、ラリッシュは香寿さんがぴったりはまっていたので、一路さんが悪いわけじゃないんだけど、なんとなく違和感。
ターフェも岡さんかなあ。
坂本君だと、爽やかすぎて悪役にならないんです。
声質が陽性で、それが魅力だから、今回の役はちょっと違う。
あと、背が…。
でも、一幕で「栄光への道」という「明日への道」の別バージョンを歌うのですが、このシーンは好きです。
マリーとステファニーは、今回の方が断然いいです。
吉沢さんのステファニーは、落ち着きがあって皇太子妃っぽい貫禄がありました。
「それは私だけ!」がヒステリックに聞こえないのがいいです。
和音さんのマリーも、とにかく歌がうまい。
特に、デュエットがすごくいい。
頑張りすぎないで、ちゃんと相手の声を聞いて合わせているのは、さすが宝塚の娘役!です。
井上君は安定しています。
ロック調の「ハムレット」より、いかにもミュージカルっぽい「ルドルフ」の歌の方がやっぱりいいですね。
まだ公演は始まったばかりだから、これからこなれていく部分もあると思いますが、とりあえず思ったことを正直に。
亜門版の場合、マリーは野心家のお嬢さんで、ルドルフに出会って真の愛に目覚める、みたいな「ロマンス」が前面に押し出されたお話になっていました。
ルドルフも、父親に理解されない寂しさから反発している駄々っ子みたいで、マリーに出会って心が癒される、みたいな描かれ方だったと思います。
父との確執を際だたせていたのが、今回出てこなかった御者のブラット・フィッシュで、彼は、ルドルフの精神的な父親のような役どころでした。
今回はそんな「ロマンス」や「父子の確執」的なものより、「社会」とか「時代」とかが強烈に意識されていたように思います。
まず、幕が開いてすぐに拳銃自殺のシーンです。
これはちょっと衝撃的です。
また、歌の題名や歌詞を見ても、「愛してる それだけ」(Only Love)が「二人を信じて」になっていて、「愛してるそれだけ 恐れるものは何もない」だったのが、「今日から二人 強くなるのよ 闘うの」です。
なんか、二人は革命の同志ですか?
ラストの「ただ君のために」(I was born to love you)も、「もう二度と離れない もう迷わない たとえば今世界が消えても いつまでも二人の愛は輝く」と高らかに「愛」を歌っていたのですが、「世界を手にして」では、「愛」という言葉は使われていません。
同じ部分は「この命が終わろうと 燃え尽きようと 恐れない お互いがいれば そして見つけた今 永遠のすべて」です。
「君=世界=永遠」だから、要するに「愛している」ということなのですが、二人の関係を安易に「愛」という言葉で語りたくなかったのかもしれません。
二人が出会ってすぐに歌う「それ以上の」(Someting more)というデュエットがあります。
その中でも「ただのロマンスじゃない あなたはそれ以上」という歌詞があって(この歌はあまり変わってなかったと思う)、二人の関係は「ロマンス」なんて言葉では言い尽くせないい特別なものだという意味で、だから、あなたが「世界」なのでしょう。
でも、それだと、マリーを停車場に迎えに行く時の「ただのロマンスでいいんだ」ってルドルフのセリフと矛盾しませんか?
私は、そこがちょっとひっかかってしまいました。
くだらないことかもしれませんが。
「明日への階段」(The steps of Tommorrow)は「明日への道」になっていて、内容的にも、ルドルフと群衆の関係がちょっと違ってきている気がします。
「階段」では「ルドルフについていきます」だった群衆が、「道」だと主体的に「社会を変えていく」って宣言しているんだよね。
それって、ちょっと怖い。
ルドルフはあくまで皇太子だから、「自由」や「理想の世界」を目指していても、彼は帝国を潰すつもりなんか毛頭ないんだけど、民衆の求めている自由とか進歩とかが目指すものは、最終的には「革命」(変革)に向かうもの。
しかも、多民族を受け容れる自由主義から、偏狭なドイツ民族主義に向かっていくのが群衆の意思。
ルドルフがめざしたものも、「ハンガリー独立運動」ではなく「反プロイセン」的な「パン・ヨーロッパ運動」になっていましたね。
つまり、歴史的な問題意識がより強く前面に現れているのが今回の「ルドルフ」だと思いました。
ただ、亜門版にも「よりよい世界」といった印象的なナンバーがあって、「ドイツ民族主義者」と「民主的主義者」が意見を戦わせる場面がありました。
浦井君が煽っていくみたいな感じで、当時のウイーンの世相を描いたシーンでした。
亜門版ではなんとなく唐突に感じたのですが、でも印象深いシーンでした。
今回、なぜか、そこはカットされていました。
ちょっと残念です。
全体的に、亜門版はとても情緒的だったと思います。
それに比べると、今回の「ルドルフ」はやや硬質で、理屈っぽくて、説明的で、ちょっとつまんないかも。
ダメじゃないんだけど、なんとなく。
配役も、ラリッシュは香寿さんがぴったりはまっていたので、一路さんが悪いわけじゃないんだけど、なんとなく違和感。
ターフェも岡さんかなあ。
坂本君だと、爽やかすぎて悪役にならないんです。
声質が陽性で、それが魅力だから、今回の役はちょっと違う。
あと、背が…。
でも、一幕で「栄光への道」という「明日への道」の別バージョンを歌うのですが、このシーンは好きです。
マリーとステファニーは、今回の方が断然いいです。
吉沢さんのステファニーは、落ち着きがあって皇太子妃っぽい貫禄がありました。
「それは私だけ!」がヒステリックに聞こえないのがいいです。
和音さんのマリーも、とにかく歌がうまい。
特に、デュエットがすごくいい。
頑張りすぎないで、ちゃんと相手の声を聞いて合わせているのは、さすが宝塚の娘役!です。
井上君は安定しています。
ロック調の「ハムレット」より、いかにもミュージカルっぽい「ルドルフ」の歌の方がやっぱりいいですね。
まだ公演は始まったばかりだから、これからこなれていく部分もあると思いますが、とりあえず思ったことを正直に。