米国など世界の航空会社で、空飛ぶホテルとも呼ばれる「ファーストクラス」が急速に姿を消しつつある。欧州債務危機など世界的不況で企業の経費節減の対象になっており、航空各社がリストラを余儀なくされている。
「ファーストクラスの死」。そうショッキングな見出しを掲げた特集記事を先月掲載したのは米紙ウォールストリート・ジャーナルだ。同紙によると、米航空会社が欧州やアジア、南米に就航している航空機約500機のうちファーストクラスを提供しているのは3割未満にとどまる。
アメリカン航空は今年5月、国際線ファーストクラスの座席数を約9割も減らす計画を発表。ユナイテッド航空も約3分の1削減する見通しだ。米航空会社だけでなく、オーストラリアのカンタス航空も一部の長距離路線を除いてファーストクラスを廃止し、ドイツのルフトハンザ航空も座席数を縮小している。
フルフラットシートや個室など豪華なサービスのファーストクラスは正規料金が往復1万5千ドル(約120万円)を超す便もある。以前から「料金とサービスが見合わない」との声はあったが、欧州債務危機や米景気の減速で、富裕層は財布のひもを締め、法人客も出張予算が削られる中、利用者が減少。利用する人もマイルをためてアップグレードする人が多く、正規料金を支払うのは国際線で25%にとどまるという。
航空会社としては、利用客が減ればコストの高いファーストクラスを維持するのは困難。一方で窮屈なエコノミークラスへの不満は根強く、エコノミークラスに追加料金を払えば若干広めの座席に座れるサービスやビジネスクラスを拡充する動きが広がっている。
欧米の航空会社各社は燃料費の高止まりや、格安航空会社(LCC)の相次ぐ参入などによる競争激化で収益が悪化しており、今後もファーストクラスの減少は続きそうだ。
日本の航空会社のファーストクラスは、「増えも減りもしていない」(日本航空)状況。「米国の航空会社は供給過剰だった」(航空アナリスト)という指摘もあり、事情が異なる。
ただ、日航、全日本空輸とも、国際線を大幅に拡充する計画の中、ファーストクラスの増強には及び腰。全日空は、ゆったりと座れる「プレミアムエコノミー」を欧米路線に導入する。(ワシントン・柿内公輔)
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