東京ディズニーランド(TDL)は15日に開園30周年を迎える。東京ディズニシー(TDS)と合わせた入園者数は年間2700万人超。人気を支えるキャスト(スタッフ)は、どうして明るく礼儀正しい応対を継続できるのか。どこの会社や職場でも活用できるディズニー哲学のヒミツを探った。
オリエンタルランド(千葉)によると、2012年度のTDL、TDSの入園者数は前年度比8・5%増の2750万2000人。1983年4月の開園以来、過去最多となった。
開園から年月を経ても飽きられることなく、なぜリピーターが増え続けるのか。新たなイベントやアトラクションの開設も一因だが、さらに大きな理由がありそうだ。
人材教育を担当していた元同社の教育部マネージャー、徳源秀(とく・げんしゅう)氏は、揺るがぬ哲学の存在を指摘する。
「ディズニー精神の柱は『すべてのゲストにハピネス(幸福感)を届ける』。そのハピネスを生み出す魔法が『リコグニッション』で、短く表現すると、相手を認めて受け入れること。私は『心のハグ』と考えている」
来場者に幸せを届けるには、まず迎える側が幸せになること。徳氏は良好な職場環境の構築で、特に上司から部下へのリコグニッションの実践について必要な5つの要点を挙げた。
「特に『ときには』という姿勢が大切。常に笑ったり、素の自分をさらけ出す必要はない。ミスがあっても『あなたは大切な人』との思いを込めて叱る。こうして働く人の意欲は高まる。これらはディズニーだけでなく、どの職場でも活用できる普遍的なことだろう」
徳氏は1955年、沖縄県出身。武蔵大卒業後、輸出入代理店勤務を経て82年、オリエンタルランドに入社。翌83年の東京ディズニーランド開園から24年間、人材育成と人材教育を主に担当した。現在は独立し、育成のプロとしてビジネスマンの教育プログラム開発などに取り組んでいる。
セミナーや講演を通じて徳氏が気になったのは、日本では多くの会社や組織が「問題点の改善」に時間を費やしていること。TDL、TDSには自分たちのよいところを語り合う場があったという。
「例えば定例会議やミーティングで部署やチームの『いいところを出し合ってみよう』というのも、ときには効果的ではないか。よい面を新たにみつけると、組織や自分がやっていることに誇りが持てる。これは会社や部活動、家族、仲間、コミュニティーでも共通に当てはまる」
充実感があるから他者への接し方も明るくなる。30年の歴史を重ねた日本のディズニーに学ぶことは多い。