4人が亡くなった長崎市の認知症高齢者グループホーム「ベルハウス東山手」の火災で、死亡した1人は、ホームの施設部分とは違う3階の部屋で生活し、ホームの運営会社「アイ・エル・エス」の訪問介護サービスを受けていたことがわかった。ホームの定員は9人だが、事実上定員を超える10人の高齢者を入所させていた可能性がある。
実質的な入所者が10人だとすると、スプリンクラー設置や職員の増員を迫られる可能性もあり、市や県警が運営実態を調べている。
火災が起きた建物は4階建て。市によると、ホームは1階と2階部分だけで、3、4階は倉庫や事務所などとして届けられていた。だが、8日の火災で亡くなった4人のうち、3階で見つかった中島千代子さん(82)は、ホームとして届けられていない3階に自室があった。
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長崎市東山手町のグループホーム「ベルハウス東山手」で8日夜発生した火災は、女性入所者ら4人が死亡し、6人が負傷し入院治療を受けた。うち2人は重体。他に2人が軽傷を負った。
長崎県警と長崎市消防局などは9日、現場検証を実施。2階北側から3番目の男性の居室が激しく燃えており、県警などはこの居室が火元とみて詳しい原因を調べている。
長崎市によると、10年4月の調査で建築基準法で定められた防火扉が1〜3階になく、同法違反と施設側に指摘していた。また、4階は木造を建て増ししており、長崎市は違法建築と判断した。
県警や長崎市によると、1〜3階は鉄骨造りで、大家が住んでいた4階が木造。火災では延べ床面積約530平方メートルのうち、2階部分の約50平方メートルを焼いた。
長崎市などによると、グループホームは1、2階部分で、定員いっぱいの9人が入所していた。9人は認知症だったという。1階に居室3室と食堂があり、2階に居室6室があった。火元とみられる男性の居室にストーブはなかったという。一つの居室の広さは1階が8.5〜9.2平方メートル、2階がそれぞれ10平方メートル。玄関は2階だった。
3階で死亡した中島千代子さん(82)は10年12月までグループホームに入所していたが、その後、大家と賃貸契約で3階に入居し、別の訪問介護サービスを受けていたという。
長崎市によると、10年4月の調査で、2階に防火扉がなく、1、3階は扉があったもの自動で閉まる扉ではなく、防火扉とは認定できなかったという。10年9月時の調査でも改善されていなかったため、運営会社「アイ・エル・エス」(長崎市)に指導した。改善した場合は報告することになっているが、報告はないという。
建築基準法は3階建て以上の建物をコンクリートなど耐火構造物と定めており、長崎市は4階の木造部分を違法建築としている。
県警は「アイ・エル・エス」から施設の経営に関する書類の任意提出を受けた。社長は「館内は全面禁煙で、火の扱いには注意していた」と話しているという。
長崎市などによると、建物は1965年の建築。「アイ・エル・エス」が03年8月に認知症対応型共同生活介護施設のグループホームとして開設した。
県警大浦署は当初、ホームを「地下1階、地上3階建て」と発表したが、「地上4階建て」と訂正した。【樋口岳大、梅田啓祐、下原知広】