夫と二人で新宿紀伊国屋サザンシアターに、劇団民藝の
「蝋燭の灯り、太陽の光」を観にいきました。
久々に、とてもいい演劇を観ることができたなぁ、と二人で大満足でした。
劇作家のテネシー・ウィリアムズの作品は「欲望という名の列車」や、以前観た
「ガラスの動物園」など、有名な作品があるわけですが、この「蝋燭の・・」は、ウィリアムズの初期の作品で、あまり知られていません。たぶん日本では初演なのではないでしょうか?
なんか、不思議なタイトルだなぁと思っていたのですが、終わってから本当に納得しました。
舞台は1930年の初めころ、アメリカ南部アラバマ、貧しい炭鉱の町。
貧しく穴ぐらのような暗い家、蝋燭の灯りだけを頼りに暮らす一家。
夫を炭鉱事故で亡くし、一人息子には炭鉱にもぐる仕事、いくら働いても報われることのないこの仕事に就くことだけはさせたくない、こんな貧乏生活から解放させなくてはいけないという一心で、母はコツコツと息子の教育のためのお金を貯めるのだけれど、ある日炭鉱でストライキが起きるのです。
息子もその中に加わり、母の虎の子の貯金をその活動をしている間の人々の食糧費として、飢えた子どもたちを救うためにも、なんとか貸してくれと頼むのです。
母は頑なに断ります・・・。
「ぜったいにだめ、教育のために貯めたのだから!!」
ストライキのリーダーや息子たち、義理の妹との会話の中で激しく葛藤する母親。
しかし・・・いきなり母親はそのお金を「いいよ!!」と渡すことを宣言するのです。
一人息子のために貯めたお金を、人々のために使うという心の逆転、その道筋の中で、母親は見出したのでした。
小さな蝋燭だけを見つめていた生活。自分の息子だけを見ていた生活。
しかし太陽の光を見ようとひとたび決心をするその瞬間!!
一瞬だけれども、まぶしさのあまり目が見えなくなってしまう時がある。
でも、その一瞬を過ぎたとき、人は太陽の光の中で生きることができるのです。
日色ともゑ初めとして、劇団民藝のひとりひとりの演技の上手さに、もうただただ言葉を失って劇場を後にしました。