ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

福島の原発事故による帰還困難地域を自分の眼で見て考えたこと-じーじの2016東北の旅

2025年03月14日 | ひとり旅で考える

 2016年5月のブログです

       *

 5月の連休、少し考えるところがあって、東北3県の沿岸部を車で旅してきました。

 まずは新潟から国道49号で福島のいわきに、そこから国道6号で北上しました。

 有名なJビレッジを過ぎてしばらくすると、帰還困難地域の表示。大熊町から双葉町にかけてのおおよそ30キロ弱ほどの地域がそうでした。

 テレビの報道でだいたいのことはわかったつもりになっていましたが、現地を自分の眼で見ると、その悲惨さは想像を絶していました。 

 国道の両側の商業地域や住宅地域はすべての建物が封鎖をされ、入り口はフェンスで閉鎖されています。もちろん無人で、犬や猫の姿も見当たりません。以前、ここに住んでいた人たちや仕事をしていた人たちの無念さを考えました。 

 また、国道の交差道路には、白い放射能の防護服を着た警備員が通行止めの警戒をしています。

 そんな中で盗難防止のためか、福島県警のパトカーが頻繁に行き来をしています。

 まるで映画に出てくるゴーストタウンを見ているようでしたが、これが「フクシマ」の現実なのでしょう。もっとも、私は国道6号の沿線しか見ていませんので、国道6号の西側を中心に大きく広がっている帰還困難地域では、もっともっと大変な状況が広がっているのではないかと想像をします。

 「フクシマ」で、自分の眼で現実を見ることは、こんなにもこころを揺さぶり、考えさせられるものなのか、と改めて再認識をさせられました。

 その後、さらに岩手県北部まで北上をして、道中の各地で津波の被害地を見ました。どこの湾も例外なく大きな被害を受け、復興工事の最中でした。生活をしている人の姿はまだ少なかったのですが、人々が働いている状況は「フクシマ」より安心できるものがありました。

 賛否両論のある巨大な防潮堤も見ました。安全のためには必要かという思いと、風景を圧倒し、威圧感さえ感じさせるほどのものが本当に必要なのかという思いとで、こころが揺れ動きました。中央や土建屋さんの考えだけでなく、一番に必要としている現地の人たちとの丁寧な話し合いを大切にしていただきたいな、と思いました。

 じーじが家裁の調査官の仕事をしていた時に、先輩から、できるだけ家庭訪問をして、現場の雰囲気を感じることが大切だ、と教えられ、実践をしてきました。たしか、精神科医の中井久夫さんも同じようなことを書いておられましたが、本当にそうだな、とつくづく感じます。

 今回の旅で、テレビの映像などでは納得をせずに、それをとっかかりにして、できるだけ自分で現地に行き、現場の雰囲気を感じることが、自分の考えを深め、こころに響くものを大切にすることだと感じましたし、本当に重要なんだな、とあらためて深く思いました。

 心情的にはつらかったけれども、いろいろな意味で有意義な旅でした。            (2016.5 記)

      *

 2017年4月の追記です

 村上春樹さんも2015年の秋に行かれたらしいです。

 今回の新作『騎士団長殺し』に東北沿岸の風景描写が出てきます。             (2017.4 記)

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土居健郎『臨床精神医学の方法』2009・岩崎学術出版社-冷静な「熱さ」に深い理解の原点を見る

2025年03月13日 | 精神療法に学ぶ

 2018年のブログです

     * 

 精神科医で精神分析家の土居健郎さんの『臨床精神医学の方法』(2009・岩崎学術出版社)を再読しました。

 精神科デイケアのボランティアの合間に読んでいたら、面白くてやめられなくなり、メンバーさんそっちのけで(?)読んでしまいました(メンバーさん、ごめんなさい)。

 久しぶりの再読で、あいかわらず、中身は覚えておらず、新鮮な気持ちで読んでしまいましたが、土居さんの晩年の論文と講演録からなっています。

 特に、2007年の講演は、土居さんが講演としてはめずらしく症例とその治療体験をいくつもご紹介され、そのいずれもがとても感動的です。

 指定討論者の藤山直樹さんが、土居先生は(面接の場で)ものすごく生きている、と感想を述べられていますが、その感想がすごく印象的です。

 土居さんの嘘のない、正直な生き方のそのすごさが患者さんに伝わり、治療になるのだろうと思いました。

 心理臨床の技術を学ぶことももちろん大切なのですが、患者さんに臨む決意とか思いとか、そういった治療者の姿勢がやはり大切なのだろうと、再認識させられました。

 今回、もう一つ、気がついたのが、エヴィデンスに触れた箇所。

 土居さんは、感じたことこそがエヴィデンス、と述べ、治療関係とそこで起こる変化の中にこそエヴィデンスはある、と言い切っておられます。

 エヴィデンスでおろおろしているじーじなどには、気持ちのいいくらいの覚悟だと思いました。

 転移や逆転移の中にこそひとつの真実があることを肝に銘記して、今後の臨床に臨みたいと、こころを新たに思いました。           (2018 記)

     *

 2020年冬の追記です  

 じーじにしては早めの再読となりました。

 今回は、土居さんの正直さということが印象に残りました。

 失敗した症例もきちんと提示し、冷静に検討されます。

 大家はみなさんそうですが、正直さということが大切なんだなと痛感します。

 いい経験をさせていただきました。            (2020.1 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com  

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池澤夏樹『終わりと始まり』2015・朝日文庫-時代を深く読み、ていねいに考える

2025年03月13日 | 随筆を読む

 2019年のブログです

     *

 池澤夏樹さんの『終わりと始まり』(2015・朝日文庫)を読みました。

 この本も旭川の本屋さんで見つけました。

 2015年の本ですから、4年遅れでの読書です。

 もともとは「朝日新聞」夕刊に2009年から2013年にかけて連載されたエッセイです。

 ということは、2011年3月11日の東日本大震災をはさんでの激動の4年間です。

 しかし、文章は少しも古びていません。むしろ、新しさを増している印象を受けます。

 本の中で、当初は、普天間基地の問題やアメリカの問題、さらに、水俣病の問題などを論じますが、3・11のあとは当然、原発の問題が中心となります。

 そして、その後は、次第に原発事故を反省しない政治家や大企業の問題に論点が移り、さらには、そういう政治家を支持する国民のことを考えます。

 池澤さんの明快な意見に比して、社会の動きのにぶさや利害関係の複雑さにうんざりしてしまいますが、人間とはそういう存在でもあるのでしょう。

 しかし、哀しいですし、もどかしいです。

 自分のことはともかく、子どもや孫のことを考えると、心配がつのります。

 なお、解説は田中優子さん。

 池澤さんより、少し過激に、しかし、冷静沈着に社会と本書の関係や意義について教えてくれます。         (2019.8 記) 

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池澤夏樹『春を恨んだりはしない-震災をめぐって考えたこと』2016・中公文庫-時間の大切さに想う

2025年03月13日 | 随筆を読む

 2019年のブログです

     *

 池澤夏樹さんの『春を恨んだりはしない-震災をめぐって考えたこと』(2016・中公文庫)を読みました。

 これも旭川の本屋さんで見つけました。

 3年遅れの読書。

 やはりボーッと過ごしていたなと反省です。

 2011年9月11日発行の同名の単行本と「東北の土地の精霊」という「考える人」2012年春号(新潮社)に掲載されたエッセイからなります。

 単行本は震災後6か月での発行で、それまでの短い間の池澤さんの三陸各地の取材とボランティアの経験をもとに、鋭い観点から震災の被害を述べます。

 当初は情報がわからずに漠然とした不安の中にいた原発事故、その深刻さの判明とともに、将来への不安と、事故を全く反省しない政府と大企業への絶望感がつのります。

 そして、それ以上に池澤さんの大きな課題が、震災の死者とどのように向き合うかという問題、その真摯な思索が胸をうちます。

 おそらく、そのために書かれたのが、「東北の土地の精錬」、本書では、「東北再訪」と改題されて、掲載されます。

 これはすごく深いエッセイです。そして、いい文章です。

 やはり、深い思索のためには、時間が必要なのだろうと思います。

 池澤さんは、東北の歴史をいにしえの時からていねいにたどり、東北人の精神史に想いをはせます。

 勝手な想像ですが、池澤さんが北海道生まれのどさんこという存在とも関係があるのかもしれません。

 辺境にある者の想い、決して中央にあこがれず、辺境のよさをその身で生きていく生き方。

 そんなところから、深い思索と勁いエネルギーが湧いてくるのかもしれません。

 じーじ自身の生きざまも反省させられる、とてもいい本でした。                 (2019.8 記)

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グッゲンビュール・クレイグ(長井真理訳)『魂の荒野』1989・創元社

2025年03月12日 | ユング心理学に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 本棚を眺めていたら、ユング派のグッゲンビュール・クレイグさんの『魂の荒野』(長井真理訳・1989・創元社)が目に入りましたので、すごく久しぶりに再読をしました。

 ひょっとすると、30年ぶりくらいかもしれません(グッゲンビュール・クレイグさん、ごめんなさい)。

 本書はいわゆる精神病質の人についての本。

 精神病質とは犯罪者や独裁者などに多い性格というか精神的な病気で、現在の分類では反社会性パーソナリティ障害に近いと思いますが、じーじは裁判所でもお会いして苦労した経験があります。

 対応がなかなか難しいですし、治療は相当に困難なようです。

 しかし、本書はその特徴をよく考察していて、参考になります。

 訳は精神科医の長井真理さん。

 木村敏さんのお弟子さんで、明確な翻訳で読みやすい日本語です。

 そして、解説が、じーじはすっかり忘れていたのですが、なんと山中康裕さん(山中さん、ごめんなさい)。

 いつもの歯切れのよい文章で、わかりやすく説明をしてくださっています。

 とてもいい本なのに、久しぶりすぎます。

 今度は、さらに経験を積んで、数年以内にまた再読をしたいと思いました。                       (2019. 11 記)

     *

 同日の追記

 その後、いろいろ考えていたら、なぜかばいきんまんの顔が心に浮かんできました。

 ばいきんまんは、ひょっとすると、マイルドな、あるいは、愛嬌のある、反社会性パーソナリティ障害(?)かもしれません。

 ちなみに、じーじはうちの奥さんから、ばいきんまん、と呼ばれています(?)。

 あんなにかわいい顔ではないのですが…(?)。

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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土居健郎『漱石文学における「甘え」の研究』1972・角川文庫-漱石文学を精神分析する

2025年03月11日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 土居健郎さんの『漱石文学における「甘え」の研究』(1972・角川文庫)を再読しました。

 この本もかなり久しぶり。

 土居さんの『漱石の心的世界』(1969・至文堂)という本が文庫本になったもので、当時の定価が180円(!)という小さな本。

 じーじはだいぶ前にこの本を知り、どうしても読みたくて、古本屋さんでやっと見つけて読んだのですが、今読んでもやはり読みごたえのあるいい本です。

 『坊ちゃん』や『三四郎』などの漱石さんの小説を精神分析の理解を参考にして解読していきます。

 例えば、『坊ちゃん』では、主人公と清が互いに「甘え」ている様子が指摘され、『明暗』でも、津田とお延が互いに「甘え」ている心理が指摘されます。すごいです。

 また、『坑夫』では主人公のアンビバレントな心理が、『行人』では精神病の心理が、『こころ』では過ちの心理などが解読されます。

 漱石さんの小説を物語として味わうだけでなく、その心的世界を理解できるという贅沢ができるいい本だと思います。

 さらに、『彼岸過迄』では、真実とは人間を自由にする、という指摘がなされ、『道草』では、世の中に片付くものなんて殆どありゃしない、というセリフが引かれるなど、土居さんは、漱石さんが小説の中で自己分析をしていた、という主張をします。

 土居さんによれば、フロイトさんとほぼ同時期に、フロイトさんのことを知らずに、漱石さんは深い自己洞察の作業をしていた、と指摘されます。

 漱石さんの小説をさらに深く味わい、理解する手助けになるいい本だと思います。         (2019. 7 記)

     *

 2022年夏の追記です

 今ごろ気がついたのですが、『道草』の、世の中に片付くものなんて殆どありゃしない、というセリフは、わからないことに耐えること、に関係がありそうですね。         (2019 記) 

     *

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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2018年3月のTBS「報道特集」震災7年後に初めて泣いた少女、を見て-じーじのじいじ日記・セレクト

2025年03月11日 | じいじ日記を書く

 2018年3月の日記です

     * 

 今、今日のTBSの「報道特集」震災7年後に初めて泣いた少女、を見終えてこれを書いています。

 震災当日、8歳で父、母、姉を亡くした少女。

 肉親の死を目のあたりにしても泣けない状態で7年が経過しました。

 精神分析では悲しみを何らかの理由で十分に悲しめないと躁的防衛になるといわれていますが、まさにそのケースで、やや不自然に明るい状態が続きます。

 その少女が7年目になって、ようやくお父さんとお母さんに感謝の気持ちを語りかける唄をうたえるようになったところがテレビに映りました。

 きっかけは夏休みのカナダへの2週間のホームスティ。

 そこで、自分の家族が震災で亡くなったことを淡々と話した時に、ホストファミリーの人たちがずっと泣き崩れて、彼女もつられて泣いた、と自らいいます。

 彼女はどうも、家族は自分を探すために死んでしまった、と思っていたらしく、そのために感情が凍りついたような状態になっていたようです。

 しかし、ホストファミリーの人たちが十分に泣いてくれたおかげで、自分も泣いていいんだ、とこころから思えたようです。

 そういう彼女は普通に明るい少女の顔になっていました。

 悲しみをこころから悲しむことの大切さを改めて教えられました。 

 もちろん、この7年間、彼女の面倒を見てくれているおじいちゃん、おばあちゃん、おじさんなどの親族や、たまたまの出会いですが、支援の人たちやホストファミリーの協力や守りがあってこそですが、それにしてもすばらしいです。

 いい番組を見せてもらえたことに感謝したいと思います。          (2018.3 記)

     *

 2024年3月の追記です

 昨日のTBS報道特集を見ていると、以前、能登半島の珠洲市にも原発建設の話があったようで、反対派と賛成派に分かれて大変だったようです。

 結局は電力会社があきらめたのですが、反対派は無言電話などの嫌がらせを受けたり、子どもたちが先生から嫌味を言われたりと、ひどい扱いを受けたようです。

 しかし、もし、この時、珠洲に原発ができていたら、今回は?と思うと、背筋が寒くなります。

 地震大国日本ではやはり原発は無理なのかもしれません。            (2024.3 記)

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きたやまおさむ『コブのない駱駝-きたやまおさむ「心」の軌跡』(2024・岩波現代文庫)

2025年03月10日 | 精神分析に学ぶ

 2025年3月のブログです

     *

 精神科医で精神分析家のきたやまおさむさんの『コブのない駱駝-きたやまおさむ「心」の軌跡』(2024・岩波現代文庫)を読む。

 サブタイトルにあるように、きたやまさんの精神的な自伝。

 とても興味深く、面白い。

 精神科医で精神分析家の北山修さん、かつ、音楽家でもあるきたやまおさむさんの誕生の経緯がよく理解できる。

 単行本は2016年の本。

 読むまでに9年もかかってしまった(反省)。

 しかし、読めて幸せ。

 きたやまさんのこころの軌跡がとても細やかに書かれていて、参考になるし、面白い。

 きたやまさんでも、こんなに苦労をしているんだ、と思ってしまう。

 精神分析家の誕生の物語としても読めて、とても参考になる。

 いずれまた、再読をしたい本である。         (2025.3 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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山秋真『原発をつくらせない人びと-祝島から未来へ』2012・岩波新書-30年間、非暴力で闘う姿に学ぶ

2025年03月10日 | 随筆を読む

 2017年のブログです

     *  

 山秋真さんの『原発をつくらせない人びと-祝島から未来へ』(2012・岩波新書)を読みました。

 すごい本です。

 2012年に出ていたこの本を今まで知らなかったのが恥ずかしいです。

 この本も旅先の旭川の本屋さんで見かけて買いました。

 旭川と原発、あまり関係はないようですが、なぜか、岩波新書のところにこの本が平積みになっていて、本の帯の「30年以上、<非暴力>であらがいつづけて」という文章にひかれて購入しました。

 同じく、本の帯には「うちら、海を汚さないように、ずっとお願いをしているですよ」とありますが、この本のテーマは、端的に言えば、お金をもらうか、自然を守るか、という問題につきます。

 山口県上関町の原発計画地域の漁民たちが、原発による海の汚染を心配して反対をし、そこに国や県や電力会社などが地域振興を理由に賛成に回り、反対派は厳しい状況になります。

 さまざまかけひきややりとりがあり、しかし、漁民たちは、原発で自然を破壊したら元には戻せない、ということを理由に団結し、国や電力会社と闘います。

 裁判所や海上保安庁も漁民の立場に立ってくれることはなく、厳しい闘いが1982年からずっと続きます。

 そうして、2011年3月11日、福島の事故があり、県の姿勢が変わり、なんとか一息をついたところで、本書は終わります。

 しかし、まだまだ、おそらく、安心はできません。

 国の姿勢は変わっていませんし、福島のあとの原発再稼働の動きも強いですし、裁判所の判断はまだまだ甘いです。

 また、じーじはこの本を読んで、辺野古の人たちに頑張ってほしい、とさらに強く思いました。

 非暴力で、手作りの反対運動、という点で、両者は非常に似ています。

 辺野古の人たちも、根本のところは、自然を守ってほしい、ということにつきると思います。

 地元の人たちが守りたい豊かな自然を守らずに、日本を守ることはできないでしょう。

 住民を犠牲にしてはいけません。

 住民を守るためにも、自然を守るべきではないのでしょうか。         (2017.8 記) 

     *

 2022年11月の追記です

 またまた原発60年説が出てきて、危ない動きですね。

 ウクライナでは停電で苦しんでいるのに、日本の夜は昼間のようです。          (2022.11 記)

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添田孝史『原発と大津波-警告を葬った人々』2014・岩波新書-政府や企業、学者の責任を考える

2025年03月09日 | 随筆を読む

 2019年のブログです

     *

 本棚を眺めていたら、添田孝史さんの『原発と大津波-警告を葬った人々』(2014・岩波新書)が目に入りました。

 先日、東京電力の幹部3人の無罪判決が出たばかりでしたので、興味を持って改めて読んでみました。

 添田さんは大阪大学の大学院工学研究科を出て、朝日新聞の科学部記者をされていた人。

 その添田さんが、阪神・淡路大震災の経験から、専門家の話を頭から信用するのは危ないと感じていたところで、東日本大震災の福島第一原発の事故を目の当たりにして、その原因を探ったのが本書です。

 政府の情報公開の制限に悩みながらも、資料をていねいに検討して、企業や専門家の話を冷静に検証していく姿はすごいです。

 福島第一原発の爆発事故に対して、豊北電力女川原発は無事でしたが、そこには1611年の三陸沖地震の教訓や869年の貞観地震の研究の成果などが反映されていたことがわかります。

 もちろん、東京電力もそのことはわかっていたのですが、企業利益が優先され、地震や津波の研究については、その確実性を疑問視して、対策が遅れます。

 さらに、インドでの津波による原発事故やフランスでの高潮による原発事故という教訓も生かすことができず、東日本大震災の事故では、東電幹部が「想定外の事故」と叫ぶのですが、実は想定外ではなかったことが判明します。

 これらの経緯を読んでいると、人はその立場を守るためには、本当に都合のいい話だけに耳を傾け、他の意見には耳を傾けないものだな、ということをつくづく考えさせられます。

 心理療法の世界では、人は聞きたいことだけを聞く、といわれますが、本当のようです。

 一時、すべてが停止した原発は、また再稼働が始まっています。

 活断層の研究など、新しい知見が得られていますが、現場では原発側の抵抗が目につきます。

 そこには政府や企業の都合があり、それに同調する御用学者がいます。

 裁判所もあまり頼りになりません。

 しかし、原発の場合、企業利益より、住民の安全が当然の責務だと思います。

 そして、原発事故は取り返しがつきません。

 住民のための電力会社であってほしいな、とつくづく思います。               (2019. 10 記)

     *

 2024年3月の追記です

 昨日のTBS「報道特集」を見ていると、以前、能登半島の珠洲市にも原発建設の話があったようで、反対派と賛成派に分かれて大変だったようです。

 結局は電力会社があきらめたのですが、反対派は無言電話などの嫌がらせを受けたり、子どもたちが先生から嫌味を言われたりと、ひどい扱いを受けたようです。

 しかし、もし、この時、珠洲に原発ができていたら、今回は?と思うと、背筋が寒くなります。

 地震大国日本ではやはり原発は無理なのかもしれません。            (2024.3 記)  

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水芭蕉を眺めながらの里山カウンセリングは、こころも清らかみずみずしくなります

2025年03月09日 | カウンセリングをする

 こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で,じーじ臨床心理士が里山カウンセリングや公園カウンセリング,海岸カウンセリングと訪問カウンセリングを新潟市で時々やっています。また,メールカウンセリングや面会交流の相談・援助もたまにやっています。

 里山カウンセリングや公園カウンセリング,海岸カウンセリングは,屋外で行なう個人カウンセリングや親子・夫婦の家族カウンセリング,子どもさんの遊戯療法などで,お近くの公園や自然の中で,ゆっくりとご自分やご家族のことなどを考えてみます。

 料金・時間は1回,50分,3,000円で,隔週1回,あるいは,月1回などで行ないます。

 訪問カウンセリングは,屋内で行なう個人カウンセリングや家族カウンセリング,子どもさんの遊戯療法などで,ご自宅やお近くの屋内施設で,じっくりとご自分やご家族のことなどを考えてみます。料金・時間・間隔は,里山カウンセリングや公園カウンセリングと同じです。

 メールカウンセリングは,メールによるカウンセリングや心理相談で2週間に1往信で行ない,1往信700円です。

 面会交流の相談・援助は,相談はご自宅などで行ない,1回,50分,3,000円,援助はお近くの公園や遊戯施設,あるいはご自宅などで行ない,1回,60分,6,000円です。

 カウンセリング,相談・援助とも土日祝日をのぞく平日の午前10時~午後3時に行なっています(すみません、年寄りなもので、夕方や週末のお仕事が難しくなってきました)。

 じーじのカウンセリングは,赤ちゃんや子どもさんがご一緒でもだいじょうぶなカウンセリングですので,お気軽にご利用ください。

 そういう意味では,深くはないけれども,現実の生活を大切にしたカウンセリングになるのではないかと考えています。

 なお,里山カウンセリングや公園カウンセリングなどというと,面接構造があいまいな印象を受けられるかもしれませんが,面接室外で二人が横並びになって行なう面接を勧められている精神科医もおられ,有効な形の一つではないかと考えています。

 料金は低めに設定させていただいていますが,月収15万円未満のかたや特別なご事情のあるかたは,さらに相談をさせていただきますので,ご遠慮なくお問い合せください。

 ちなみに,消費税には反対なのと,計算がややこしいので,いただきません。

 お問い合わせ,ご予約は,メール yuwa0421family@gmail.com までご連絡ください。

     *

 駅の近くに部屋を借りるなどして,本格的にカウンセリングルームを運営するような臨床心理士さんとは違って、じーじは貧乏なので,近くの公園や広場,河川敷,海岸,里山などの自然の中やさらには,ご自宅や近くの児童公園,屋内施設,遊戯施設などでカウンセリングをしています。 

 子どもさんや赤ちゃんを遊ばせながら、ちょっとだけ悩みごとを聞いてもらえればいいんですー、というお母さんや悩み多き若者(?)などがじーじのクライエントさんには多いです(じいじいやばあばあのみなさんもお断りはしませんが(?)、尊敬すべき先輩たちのみなさんですから、できるだけご自分で解決しましょうね)。

 そういうことですので、お気軽にご利用ください。

 どちらかというと,こころのストレッチ(!)をするような感じではないかな、と思ったりしています。

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 水芭蕉を眺めながらの里山カウンセリングは、こころも清らかみずみずしくなりますよ。

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com  

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メルツァーさん・キーツさん・シェイクスピアさん-じーじのカウンセリング日記

2025年03月08日 | 心理臨床を考える

 2019年の日記です

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 去年12月から読んでいたイギリスの精神分析家のD・メルツァーさんの『精神分析と美』(2010・みすず書房)をようやく読み終える。

 何度読んでも難しい。

 付箋やアンダーラインは増えてきたが、今回も何割、理解できたかやや疑問。

 ブログにリポートを書こうと思ってパソコンの前に座るが、言葉が出てこず、しばらく頑張るが、断念。次回のお楽しみとなる。

 しかし、今回初めて気づいたが(今ごろ気づくのも、我ながらどうかと思うが…)、メルツァーさんのこの本にイギリスの詩人のキーツさんやシェイクスピアさんなどが出てくる。

 ようやく精神分析の本の中に2人を見つけてうれしくなる。

 キーツさんは昨年秋、岩波文庫の『キーツ書簡集』(1952)を古本屋から購入して読んでみたが、こちらもリポートができるのはまだ先になりそう。

 キーツさんのいうあいまいさに耐える能力を、この本では、「消極能力」と訳しているし、キーツさんの本でも「消極的能力」と訳していて、「負の能力」よりいいような気もするが、あくまで素人の感想である。

 また、メルツァーさんが詩や戯曲を分析しているのを読んで、やはり精神分析家のオグデンさんが同じように詩や小説を分析しているのを思い出した。

 文学はやはりかなり精神分析に近い存在なのだろうな、と改めて思う。

 もっともっと勉強が必要だ。         (2019.1 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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青木省三『思春期こころのいる場所』2016・日本評論社、『ぼくらの中の発達障害』2012・ちくまプリマー新書

2025年03月08日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2016年のブログです

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 青木省三さんの『思春期こころのいる場所』(2016・日本評論社)と『ぼくらの中の発達障害』(2012・ちくまプリマー新書)を読みました。

 青木さんのお名前は以前から存じ上げていたのですが、なかなか読む機会がありませんでした(青木さん、ごめんなさい)。

 しかし、先日、このブログでもご紹介をさせていただいた雑誌「こころの科学」の中井久夫さんの特集号で、青木さんの中井さんとの感動的な思い出のお話を読んで、今回、一気に2冊の本を読んでしまいました。

 いずれの本も、ていねいで細やかな、優しい、心配りのいきとどいた診察風景が印象的です。

 青木さんの診察は、発達障碍や統合失調症などといった病名にとらわれずに、患者さんの困っていることや悩んでいることにとことん寄り添い、そこに付き合って、少しずつ、少しずつ、改善に向けていく姿勢が特徴的です。

 同じ病名でも、病状がまったく同じ人はいない、ひとりひとりの病状にていねいに付き合う、という中井さんと同じ発想がそこには見えます。

 そして、スマートな切れ味の鋭さなどといったものとはまったく無縁の、悪く言えば、泥臭く、しかし、なんとなく温かみのある、人間くさい、なんだかホッとするような診察空間が感じられます。

 ここが青木さんの誠実さと実直さの真骨頂ではないでしょうか。

 いい精神科医がいるな、と安心できます。

 もっとも、じーじの舌足らずな解説を読むよりも、青木さんの温かく、しっかりとした文章をぜひ読んでみてください。

 得るところの多い、いい本だと思います。        (2016 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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原田マハ『丘の上の賢人-旅屋おかえり』2021・集英社文庫-ちからのあるいい小説です

2025年03月08日 | 小説を読む

 2022年3月のブログです

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 原田マハさんの『丘の上の賢人-旅屋おかえり』(2021・集英社文庫)を読む。

 小説、作り話とわかっていて読むが、いい物語で、いつの間にか涙がじわーんとなってしまう。

 じーじはいいかげん枯れはてた年寄りなので、もう水分なんてなくなってしまったかな(?)と思っていたが、不覚にもじわーんと涙が出てきてびっくりする(読んだあと、水分補給をしなければと(?)、あわててビールをたくさん呑んでしまった)。

 冗談はさておき、いい小説である。

 例によって、あらすじはあえて書かないが、依頼者にかわって旅をする主人公がすがすがしい。

 素直で、体当たりの行動が、周りの人々の感情を解きほぐしていく様子がすがすがしい。

 これは小説だ、こんな都合よくいかないだろう、こんなこと実際には起こるわけないだろう、と思いつつも、こころの深いところが温められるというか、癒されるというか…。

 やっぱり、いい小説だ、としかいいようがない。

 ここのところ、いろいろ嫌なことが重なって、こころが少しふさいでいたが、本書を読んで、こころが軽くなった。

 いい小説のちからはやはりすごいな、と再確認をする。

 ちからのある小説に出会えて、幸せだと思う。          (2022.3 記)

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下坂幸三・飯田眞編『家族療法ケース研究5・うつ病』1993・金剛出版-ていねいな家族療法に学ぶ

2025年03月07日 | 心理療法に学ぶ

 2020年3月のブログです

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 下坂幸三さんと飯田眞さん編集の『家族療法ケース研究5・うつ病』(1993・金剛出版)を久しぶりに読みました。 

 家族療法学会にはしばらく顔を出していませんので、なんとなく疎遠になった感じですが、しかし、実はじーじの面接は、50歳前後のしばらくの間、家族療法の勉強の中で鍛えられた感じがします。

 面接の逐語録をそのまま報告書に書いて、調停委員さんには評判が良かったのですが、裁判官からは、もう少し短く書いてくださいね、と注文をつけられたりしました(裁判官さん、ごめんなさい)。

 その後は、精神分析的な面接が中心になっていますが、母子面接などの家族面接も大切だと考えていて、その重要さは変わりません。

 今回、うつ病の家族療法を再読して、懐かしさとともに、新たに考えるところが多々ありました。

 例によって、印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、後藤雅博さんの、うつ病患者さんの家族合同面接。

 後藤さんは新潟の家族療法の第一人者で、裁判所の研修にもたびたび講師で来ていただいて、勉強させていただきました。

 この論文では、うつ病の夫と妻の合同面接を逐語録も提示されてていねいに検討されていて、とても参考になります。

 特に、リフレーミング(再枠づけ)がうまいなあ、と感心させられました。

 二つめは、すっかり忘れていたのですが、大平健さんの「妄想を伴ったうつ病患者の一例」という論文。

 大平さんといえば、『診察室に来た赤ずきんちゃん』『やさしさの精神病理』などで有名ですが、家族療法の論文も書かれているのは意外な感じでした(一度読んでいるはずなのに、意外、もなにもないのですが…。大平さん、ごめんなさい)。

 例によって、大平さんのドラマのような症例報告で、堪能させられました。やはりすごいです。

 昔の本を、新刊本のように(?)新鮮な気持ちで読むことができて、とても贅沢な1週間でした。         (2020.3 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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