ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

大平健『やさしさの精神病理』1995・岩波新書-ていねいな精神科臨床の面接風景に学ぶ

2024年07月02日 | 精神療法に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

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 久しぶりに精神科医の大平健さんの『やさしさの精神病理』(1995・岩波新書)を読んでみました(岩波新書ですよ!)。

 たぶん10何年ぶりです(大平さん、ごめんなさい)。

 40歳を過ぎたころ、なんとなく臨床に行き詰った感じで悩んでいて、家族療法学会などに入って勉強を始めたりしていたのですが、そんな時に大平さんの『豊かさの精神病理』(1990・岩波新書)を読んで、その症例の書き方に感心をしました。

 先輩から、報告書の事例は、ドラマを見ているように書きなさい、と言われていたのですが、それを実践している例をそこに見つけてびっくりしました。

 本書はその姉妹編ですが、やはり症例の紹介の仕方が秀逸です。

 もちろん、面接がうまくできていないと、わかりやすい報告はできないのですが、それにしてもうまいです。

 目の前で大平さんと患者さんのやり取りが展開しているかのような感じです。

 面接もお上手ですし、その描写もお見事です。

 以来、じーじも、少しでも大平さんのような文章を書きたいと努力してきました。

 ちょうどその頃、家族療法学会で、面接の逐語録をていねいに検討する研究が流行っていたこともあって、丁寧な事例報告を書くことに熱中して頑張った記憶があります。

 あまりに細かい報告書を書いて裁判官に嫌がられたこともありました(裁判官さん、ごめんなさい)。

 しかし、そのおかげで(?)、少しはましな臨床家になってきたのかもしれません。

 若気の至りでしたが、多少の回り道は人生の常です。

 いずれにせよ、なつかしい、いい本を、久しぶりに読めました。     (2014?)

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 2020年11月の追記です

 まだ調査官をやっている時に書いたブログで、報告書のことが話題になっています。

 その後、臨床心理士になって、より面接が重要になっていて、いま、ここで、の双方の感情の動きを大切にしているような気がします。   (2020. 11 記)

 

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開高健『ロビンソンの末裔』1973・新潮文庫-政府に翻弄された北海道開拓民の苦闘を描く

2024年07月02日 | 北海道を読む

 2019年のブログです

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 開高健さんの『ロビンソンの末裔』(1973・新潮文庫)を再読しました。

 「なつぞら」の天陽くん一家の苦難が、やはり敗戦前後の政府のいいかげんな北海道開拓計画に翻弄されたものであることがわかって、それと同じような苦労をされた人々のお話をきちんと読もうと思いました。

 拓北農兵隊、という名称の開拓団ですが、全くの素人集団による北海道の開拓計画でした。

 主人公たちが開拓に入ったのは、旭川からかなり山のほうに入った大雪山のふもとの「上開地区」。

 拓いた農地は自分のものになる、家も用意してある、農機具も貸与する、などなど、いいことづくめの勧誘でしたが、実際には、嘘もあったりして、その苦労は明治時代の屯田兵より過酷だったといえそうです。

 土地は農作物ができないようなやせた土地で、地元の人たちも手をつけないような不毛の地。そんなところで開拓に従事させられます。

 何年も客土をしても農地になるかどうかわからないような土地、その客土も風雨によって簡単に流されてしまいます。

 話は開拓の途中、仲間がほとんど逃げ出してしまうところで終わります。

 北海道を車で旅行すると、カーナビの案内ですごい山の中を走らされることがありますが、そんな時でも、こんな山の中でも田んぼや畑があるんだ、と感心させられることがあります。

 おそらくは、戦後、開拓の苦労が実って、農地が拓かれたのだろうと思います。

 本当にたいへんだったのだろうな、と思います。

 今後は、できることなら、現場を大切に、住民の目線で、丁寧な政治が行われることを祈りたいと思います。     (2019.9 記)

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 2020年12月の追記です

 政府のいうことをどれだけ信用するかということは、なかなか難しいことですね。

 圧倒的に情報量が違う中で、いかに信用できる人を探して、それをも吟味つつ、周囲に流されることなく、主体的に行動できるか。

 ふだんからのものの見方と冷静な行動が試されそうな気がします。     (2020. 12 記)

 

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