ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

大平健『診療室にきた赤ずきん-物語療法の世界』1994・早川書房-童話と物語のちからに学ぶ

2024年07月05日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

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 大平健さんの『診療室にきた赤ずきん-物語療法の世界』(1994・早川書房)を再読しました。

 この本も久しぶり、本棚の隅に隠れていたのを見つけてしまいました。 

 何種類かの付箋とアンダーラインがあって、少しだけ内容にも記憶がありましたが、今回もなぜか(?)新鮮な気持ちで読めました。

 今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、ねむり姫の童話。

 不登校になった真面目な女の子に、大平さんさんはねむり姫の童話をお話します。

 いろいろあって、女の子はしばらく休学し、その後、登校を再開します。

 大平さんは、親にできることの限界を指摘し、子どもは親から自立する時、外からやってくる他人の助けが必要になることを説明します。

 二つめは、三年ねたろうの童話。

 ひきこもりになってしまった青年に、大平さんは三年ねたろうの童話をお話します。

 人が新しい人生を生きるためには、時に内省の時期が必要と説明します。

 こんな調子で、いろいろな童話がお話しされます。

 加えて、大切だと思われたことは、患者さんが安心できる物語を提示することの大切さ。

 適切な物語を、少しのユーモアを交えて提示できる時に、患者さんは物語を納得して、新しい生きる力を獲得できるようです。

 そして、安心できる物語、それは患者さんだけでなく、周囲の者や治療者までにも力を与えてくれるようです。     (2019.5 記)

 

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宮本常一『民俗学の旅』1993・講談社学術文庫-良心的な学者の姿勢に学ぶ

2024年07月05日 | 北海道を読む

 2019年のブログです

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 天陽くんこと神田日勝さんも出てくる石井次雄さんの『拓北農兵隊』を読んでいたら、宮本常一さんの名著『民俗学の旅』(1993・講談社学術文庫)が引用されていた。

 宮本さんの民俗学は、庶民の立場から、庶民の目線で、庶民の生活がとらえられていて、親しみのある学問である。

 その宮本さんが、拓北農兵隊に関係していて、びっくりだった。

 敗戦直前、宮本さんは大阪府のお役人さんで、拓北農兵隊(宮本さんは、帰農隊、と書いている)の大阪隊を引率したという。

 そして、敗戦後の秋にも、帰農隊を北海道まで引率したが、最終地までは同行できずに、そのことを反省している。

 その帰り道、夏に引率をした拓北農兵隊の開拓地を訪れ、その悲惨な状況を見て、反省を深めるという記述がなされる。

 良心的な学者だけに、ご自分の関係された事業の失敗に心が痛んだ様子がひしひしと伝わってくる。

 もっとも、それを、きちんと報告し、書き残したのは、やはり一流の民俗学者の仕事であろうと思う。

 先達の苦悩と哀しみを無駄にしないよう生きていきたいと思う。      (2019.9 記)

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 2021年11月の追記です

 宮本さんの反省と学者としての良心には本当に感心させられる。

 一方で、国や企業のためにだけ都合のいいことをいう御用学者もいつの世にもいる。

 歴史による判断がその正否を明らかにするのは間違いないが、その前に自ら襟を正すことを願う。      (2021.11 記)

 

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