ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

小此木啓吾『対象喪失-悲しむということ』1979・中公新書-悲しみをこころから悲しむことの大切さ

2024年09月10日 | 精神分析に学ぶ

 2015年のブログです

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 小此木さんの『対象喪失』を久しぶりに読みました。

 たぶん10年ぶりくらいだと思うのですが…。

 なかなか勉強になりました。

 最近,「うらみ」やその解消などについて考えていて,ふと「対象喪失」や「喪」の作業との関係に思い当たって読んでみたのですが,当たり!でした。

 「対象」を喪失するのは人生では当然のことですが,その時に「断念」や「諦め」,「喪」の作業が十分でないと辛いことになりそうです。

 逆説的ですが,「対象喪失」を時間をかけて十分に「悲しむ」ことが大切になります。

 きちんと悲しめないと,うらんだり,すねたり,ねたんだりすることになるようです。

 また,今回,小此木さんが,対象喪失とウィニコットの移行対象との関連を指摘していることに今さらながら初めて気づきました。

 言われてみればもっともなのですが,さらに勉強が必要だと思いました。

 頑張りたいと思います。      (2015.6 記)

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 2022年6月の追記です

 移行対象というのは、ご存じのかたもいらっしゃると思いますが、幼児がいつも大切にしている古い毛布やぬいぐるみのことで、これは心理学的には母親がわりの存在です。

 幼児はさまざまな対象喪失の時に、移行対象の助けを得て、対象喪失の苦痛を乗り越える、と小此木さんは述べています。      (2022.6 記)

 

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堀江敏幸『いつか王子駅で』2006・新潮文庫-ゆったりと時が流れる懐かしさを感じる物語

2024年09月10日 | 小説を読む

 2019年のブログです

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 またまた堀江敏幸さんの小説を読んでしまいました。

 ゆったりと時が流れるさまが心地よくて、旅先でのんびりしているせいもあってか、すっかりはまってしまいました。

 今回は『いつか王子駅で』(2006・新潮文庫)。

 こちらもなんだか懐かしい感じのするいい小説です。

 あらすじはあえて書きませんし、たいして大きな事件が起こるわけでもないのですが、日常のささいなできごとをていねいに描きます。

 少しだけユーモラスな感じも…。

 文章がいいです。

 ほっこりします。

 あえていうと、長嶋有さんの小説をセピア色にしたような感じ。

 それで伝わるでしょうか?(長嶋有さんの小説を知らない人には、なんのこっちゃ?と思われるでしょうが…)。

 何かを読みとる小説というよりは、何かを感じる小説。

 読み終えると、何かが少しだけ変わっているような、変わっていないような、そんな感じ。

 そんな中で主人公が家庭教師として教えている女子中学生の輝きがいいです。

 自分にもこんな時代があったかな?と反省させられます。

 そして、孫娘たちにはぜひこんな中学時代を送ってほしいな、と思います。

 輝きと落ちつき。

 ゆったりとした時の中で、確かなものが続いていく物語です。       (2019.8 記)

 

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