ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

藤山直樹『精神分析という語らい』2011・岩崎学術出版社-夢を見ることと精神分析

2024年09月03日 | 精神分析に学ぶ

 2011年のブログです

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 藤山直樹さんの『精神分析という語らい』(2011・岩崎学術出版社)を読みました。

 少し難しかったけれど(何割くらい理解できているのかなあ)、哲学的な部分に触れる箇所もあって、じーじにとってはかなり刺激的でした。

 じーじが一番おもしろく読んだのは「夢みることと精神分析」の章。

 人は人間的であるとき、眠っているときも覚醒しているときも夢をみている、というところや、夢みることは創造的に遊ぶことに結びついている、というところ、あるいは、人はひとりで夢みているようにみえてそうではない、より哲学的な物言いをすれば、そこには自分のなかの他者が関与している場所である、といった箇所でした。

 何かちょっと村上春樹さんと共通点があるような感じがしましたが、そう思うのはじーじだけでしょうか?

 まだまだじっくりと読み込んで理解を深める必要があると思いますが、今後も大切に読み込んでいきたい一冊だと思いました。         (2011 記 )

     *  

 2018年秋の追記です

 久しぶりに再読をしました。

 2011年に読んで、その間にもう一回読んでいるようで、2種類の付箋とアンダーラインで、本のページはかなり賑やかです。

 今回も夢のところは印象的で、前回の文章を再確認しました。

 加えて、夢を見れないことや妄想との関係についても教えられました。

 今回、もう一つ印象的だったのは、土居さんの甘え理論と対象関係論についてのところ。

 土居さんがフロイトさんと格闘して甘え理論に達していた頃、英国の対象関係論もビオンさんなどが同じような発見をしていたという考察はすごいと思います。

 土居さんの甘え理論についてはずいぶん本を読んでいたつもりですが、今回は目からうろこ、という感じで、腑に落ちました。

 本を読み重ねていくとこういういいこともあるんだな、と今回、つくづく思いました。

 いい本を読んで、いい経験ができたなあ、と思います。       (2018.11 記)

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 2019年11月の追記です   

 じーじにしてはめずらしく、1年ぶりで再読をしました。今年10月の札幌での精神分析学会で、藤山さんのお話を聞けた影響が大きいです。

 今回も印象に残ったのは、土居健郎さんの「甘え」論文について考察をされている論文。

 土居さんへの敬意と、あくまでもそれを乗り越えていこう、あるいは、現代に展開していこうとする藤山さんの熱意に感動します。

 地に着いた考察、借り物でない、自分の言葉での論考は本当にすごいと思います。 

 さらに勉強をしていこうと思いました。       (2019.11 記)

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 2022年夏の追記です

 3年ぶりに再読をしました。

 なかなか難しい本ですが、やはり刺激的です。

 夢と精神分析の関係や「甘え」と対象関係論の関係など、考えさせられるところが多々あります。

 そして、すごいのは、藤山さんがこれらについて考察する時に、ご自身のケースを取り上げて検討をされていること。すごいなあ、と思います。

 やはり、本物の理論は、ケースに始まり、ケースに終わり、深まるものなんだなあ、と考えさせられました。      (2022.7 記)

 

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荻原浩『海の見える理髪店』2019・集英社文庫-家族を見つめる小説たち

2024年09月03日 | 小説を読む

 2019年のブログです

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 荻原浩さんの『海の見える理髪店』(2019・集英社文庫)を読みました。

 この本も旭川の本屋さんで見つけました。買ってから、直木賞受賞作と知りました(荻原さん、ごめんなさい)。

 荻原さんの小説は結構好きで、『オロロ畑でつかまえて』とか『なかよし小鳩組』『さよならバースディ』などなど、いくつか読んでいますが、なかなかいいです。

 いい本で、読ませる本が多いのですが、ユーモアも効いていて、プッ!と笑ってしまうことも多く、電車の中で読むのはやや危険です。

 さて、本書、家族を見つめる短編小説6作からなります。

 父子関係、母子関係、親子関係、夫婦関係、などなど、さまざまな家族関係の綾が描かれます。

 じーじは、亡くなった娘の代わりに父母が成人式に出席をする「成人式」と虐待を扱った「空は今日もスカイ」が気に入りました。

 「成人式」は笑いの中に夫婦の成熟が描かれて、切ないですが、明るくなれる小説。

 一方、「空は今日もスカイ」は、虐待や差別の中でなんとか生き延びる子どもたちと、それを見守る少数のおとなと理解のない多数のおとなが描かれます。

 辛い場面もありますが、元気がもらえる小説です。

 やはり、ユーモアは力になりますし、哀しいことや苦しいことが多い人生の中でも、人はなんとか生き延びることができそうです。

 良質のユーモアはこころの栄養ですし、こころのビタミンなのでしょう。

 できれば、このブログでもそういう文章を書けたらいいな、と思います。      (2019.8 記)

 

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