ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

小倉清『こころのせかい「私」はだれ?』1984・彩古書房-「熱い」子どもの精神科医との出会いを思い出す

2024年09月16日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2011年ころのブログです

     *   

 小倉清さんの『こころのせかい「私」はだれ?』(1984・彩古書房)をかなり久しぶりに読みました。

 3回目くらいで、10年ぶりくらいではないでしょうか。

 1984年の本ですが、その少し前頃、家裁調査官の東京での研修で、たまたま小倉さんの講義をきく機会がありました。

 それで、感激をして、小倉さんの本をあちこちの本屋さんで探して、ようやく手に入れた記憶があります。

 小倉さんのことはその当時、じーじはまったく知らなくて(小倉さん、ごめんなさい)、しかも、小倉さんの働く関東中央病院という先進的な精神科病院のこともじーじはまったく知りませんでした。

 そんな本当に白紙の状態でお話をお聞きしたのですが、その「熱さ」と学問的な裏付けに、思わずうなってしまった記憶があります。

 また、当時はまだじーじは精神分析の勉強もあまりしておらず、今考えると、とてももったいないことをしてしまったな、と思います。

 しかし、こういう機会がのちの精神分析学会への入会に導いてくれたのかもしれません。

 さて、久しぶりに読んでみた本書、やはりいい本でした。

 特に、解説のわかりやすさと症例のすごさはびっくりです。

 例えば、わかりやすさということでは、こころの健康について、不安のコントロールや怒りのコントロール、変化への対応などの大切さを述べていて、とてもわかりやすいです。 

 症例では、現場での豊富なご経験から、こんなケースもあるのか、と驚くような症例とそれへのていねいな対応が見事です。

 今後もさらに深く学んでいきたいと思いました。              (2011?記)

     *

 2019年12月の追記です  

 先日、放送大学の番組を見ていたら、小倉さんが子どもの治療について述べている番組の再放送がありました。

 とてもわかりやすく、しかも、内容が深く、勉強になりました。

 やっぱりすごい先生です。      (2019.12 記)

 

コメント

瀬尾まいこ『傑作はまだ』2022・文春文庫-50歳のややひきこもりの作家と初めて会う息子との物語

2024年09月16日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

     *

 瀬尾まいこさんの『傑作はまだ』(2022・文春文庫)を読む。

 夏休みに読もうと楽しみにしていた小説。

 旅先の旭川の本屋さんで購入。 

 ゆっくり読もうと思っていたが、なかなか面白くて、1日で読んでしまう。もったいない。

 本の帯には、50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた、とある。

 若気の至りで生まれた息子に20年間、写真と引きかえに養育費だけを送っていた父子関係が突然変わる。

 びっくりする物語の始まりだ。

 現代っ子の息子と世間知らずの父、二人の織りなす物語が楽しい。

 少しのユーモアと少しの真実が色を添える。

 一見、悩みのなさそうな息子だが、しかしなにやら、少しだけ影を引きずっている風でもあり、気にかかる。

 息子のおせっかいで町内会に入ることになってしまった作家は、おっかなびっくりながらも新しい人間関係を少しずつ築く。

 同じように少しひきこもりの傾向のあるじーじは、人間とはなんとやっかいなものかと思う。

 しかし、そのわずらわしさが同時に喜びでもあるわけだろう。

 子どもを産んだら、子どもだけしか見えなくなった、という息子の母親の言葉も逞しく、重い。

 そして、それが驚くようなラストに続く。

 小説だなあ、と思うが、いい小説だ。

 そして、希望を持てる物語だと思う。      (2022.7 記)

 

コメント